loading...

すべてはPRから始まる。ファミマの“40のいいこと!?” からひもとく、「ニュースなCX」のつくり方No.2

ファミマのPR戦略から学ぶ、話題を生み続けるために必要なこと

2022/04/12

広告を大量出稿するのではなく、お客さまが喜ぶニュース(施策)をつくり、それをPRとソーシャルメディアを中心にして話題化した、「ファミリーマートの40周年プロジェクト」。

本プロジェクトをリードしたファミリーマートCMOの足立光氏と、電通のPRプランナー・加藤倫子氏が、「PR起点のCX(顧客体験)デザイン」というテーマで対談。その後編にあたる本稿では、ニュースとなるファクトづくりのポイントや、1年間で100ものニュース(施策)を発信するために大事にしたことを伺います。

前編:ファミマ40周年企画に学ぶ、「PR起点のCXデザイン」とは?

足立氏と加藤氏

ファミリーマート40周年プロジェクトとは……
2021年3月から2022年2月までの1年間、「ファミマる。(さまざまなきっかけでファミリーマート店舗に足を運んでもらう)」を合言葉に実施。五つのキーワード(①もっと美味しく、②たのしいおトク、③「あなた」のうれしい、④食の安全・安心、地球にもやさしい、⑤わくわく働けるお店)を軸に、各キーワードに基づき、“40のいいこと!?”と題した数々の施策(施策の数は最終的に100)を実行。大きな反響があり、2021年度は、ほぼすべての月で売り上げの前年比が100%を超えた他、「顧客体験価値ランキング2021」では、コンビニ業界でトップを獲得した。
40のいいこと

5つのキーワード

ニュースとなるファクトづくりのポイントとは?

──ファミマの40周年プロジェクトでは、お客さまに喜んでいただける100のファクトをつくり、それらがニュースとなってさまざまなメディアにも取り上げられました。まず、ニュースになるファクトづくりのポイントについて聞かせてください。

足立:ニュースになってメディアに取り上げられたり、ソーシャルメディアで話題になるファクトづくりのポイントは、電通PRコンサルティングが提唱している「PR IMPAKT® 」に集約されていると思います。

PR IMPAKT

加藤:私は、日々いろんな情報に触れながら、世の中の人々の気分みたいなものを捉えることが大事だと考えています。最近話題になった事例に触れたり、あとは雑談も大切ですね!

足立:もう一つ付け加えるなら、私たちの多くは東京で仕事をしていますが、東京中心の視点で考えないということです。ファミリーマートは全国に店舗があります。東京から離れた地域に住んでいるお客さまがどのような生活をしているのかを考え、それならどんなことが響くのかを常に考えています。表現も地方に住む方々の言葉にちゃんとなっているか、知っている内容になっているか、興味を持っていただけるかなど、さまざまなことを考えています。

──ニュースがより拡散されるように意識されたことを教えてください。

加藤:リリースの「タイトル・リード文・トップの画像」をとにかく大事に考えています。WEB記事を情報源としている人はとても多いと思うのですが、自分が記事を探すときもタイトルとサムネイル画像でほぼ判断しているので、その入り口であるリード文と画像でどれだけ伝えられるか意識します。

例えば、「プライドウィーク」に合わせて、「ファミチキ」の袋を、性の多様性やLGBTQ支援を意味するレインボーカラーに変更した施策では、袋がレインボーに変わることがパッと見てわかることが強いと思い、それをシンプルに伝えました。

レインボーカラー

足立:ニュースを発信するときには、文字だけよりもビジュアルがあった方が話題になりやすく、取り上げていただきやすいですね。画像がキーとなって話題が拡散されていくというのは常に意識していました。

リードタイムを長く取って、リリースで社内のコンセンサスを取る

──1年間で100のニュース(施策)を出すのはかなりのスピードだったのではないかと思いますが?

足立:まず、施策を実施するためにリードタイムをかなり長く取りました。リードタイムが短いと、ひたすら目の前の仕事に取り組まなければならず、自転車操業から抜け出せない。流通業でなにか施策を打つ場合、3、4カ月前から走りだすのが普通ですが、われわれは少なくとも半年前、場合によってはもっと前から企画したものもあります。

加藤:リードタイムの必要性について、本件に関わって認識が変わりました。リードタイムを長く取ると、提案したものが旬のタイミングで本当に話題になるのか不安なこともあるのですが……、一方で、リードタイムが短いとバタバタになりタイムオーバーになることもあります。本件に携わって、時間があるからこそできる仕掛けがあると実感しました。

足立:そうですね。それに、早くどんどん決めていかないと、オプションがどんどん増えるなど、エージェンシーの仕事が増えると僕は思っています。僕たちクライアント側の仕事は、エージェンシーが考えるオプションをできるだけ減らしてあげること。そうすることによって、エージェンシー側はより効率的に仕事ができるし、コスト的にもベストな方法を選択することができます。

──社内ではどのようにコンセンサスを取りましたか?

加藤:キーアイテムは「リリース」です。一般的にリリースは施策の内容が決まった後に書くことが多いですが、40周年の場合、最初に「リリース」がありました。そうすることで、決まっていること・そうでないことが明確になりますし、会議に出ていない方にも事実共有がしやすいです。リリースがぶれていなければ、ちょっとした問題が起こってもリカバリーしやすかったりもします。

足立:おっしゃるように、リリースは非常に有効でしたね。ヘッドラインだけでも内容が把握できるので。リリースを最初のほうで合意することで、われわれとしてこういうお客さまにこういうことを訴求したいという方針が明確に社内外で握れていたので、あまりぶれることなく進められたと思います。

競合より広告宣伝費は少ない。新しい提案をして決断する勇気が必要

──ファミリーマートの40周年プロジェクトでは、1年間継続して100ものニュース(施策)を打ち出しました。成功の裏には、苦労されたところもあるのではないでしょうか?

加藤:施策の数が多いというのは、それだけいろいろな人が関わるということです。とにかく施策内容が五つのメッセージからぶれないようにすることを軸に、コロナ禍でリアルに会うことが限られる中で、携わるたくさんの人々の温度感やスピード感をコントロールすることも大切でした。

足立:私たちとしては、これまでにない企画が多かったんですよ。「夏のカレー祭り」や「ファミマのお芋掘り」もそうですし、「クリスピーチキン」も新製品でした。新しいことをやることに対して社内で合意を取っていくことが一番大変だったかもしれません。

夏のカレー祭り
黄色看板
チキン クリスマス

合意をどう取ったのかとよく聞かれるんですが、笑ってごまかすということに尽きます(笑)。「新しいことってやってみないとわからないから、一回やってみよう」と。過去に事例があることは新しくないし、新しく見えないとお客さまやメディアは反応してくれない。いかに社内を巻き込んで「一回やってみよう」と説得することが一番大変だったかもしれません。

例えば、人気商品を40%増量する施策は、「こんなことが本当にお客さまに受けるのか」と社内で疑問視する声もありました。でも、実際に売れると、それが社内の信頼につながっていく。新しい施策が少しずつヒットしていくと、どんどん新しいことがやりやすくなるというサイクルに入れました。提案して、決断する。勇気が必要ですね。

加藤:足立さんは本当に、勇気と決断力がすごいです。

足立:もう1点付け加えると、ファミリーマートは競合他社と比べて広告宣伝費が少ないんです。なので、同じようなことを同じようにやっていては永遠に追い越すこともできないし、より目立つこともできないわけです。広告宣伝費が少ないわれわれがやることは、お客さまにより話題になるものでないといけません。より強いことや新しいことをやっていかないと、競合の圧倒的な資金力においついていけない。ですから、勇気をもって新しいことや話題になることをやりきった、というのがこの1年でした。

──最後に今後の展望について聞かせてください。

足立:40周年で打ち出した五つのメッセージを訴求し続けることで、ファミリーマートのイメージは、少しだけ改善したと思っています。ただ、それがファミリーマートの特徴として認識されるまでにはまだ全く至っていません。人のイメージは一朝一夕には変わらないので、同じことを継続的にちゃんと訴求していきたいですね。五つのメッセージはそのままに、施策に関してはより強く、大きくやっていきたい。そのためのアイデアを加藤さんはじめ、皆さんにお願いしています。

加藤:おっしゃる通りですね。これまでやってきたことを強化してニュースとしてのバリューを高めていくことはもちろん、新しいことにもチャレンジしていきたいです。ある意味、40周年は終わっていない、to be continuedという感じです。

twitter