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商機を捉えるビッグデータ活用法No.1

「売れどき」を外さない!シーズンインとピークをビッグデータで予測せよ

2024/02/29

「商品が売れ始める時期や、売り上げがピークとなる時期をあらかじめ把握できれば、広告キャンペーンの効果を最大化できるのに!」

と思ったことはありませんか?

制汗剤や日焼け止めなど、年間の購入回数が比較的少ない「季節性商材」は、需要が集中する特定のシーズンがあります。しかし、その年ごと、あるいはエリアごとの気候等の条件によって、そのシーズンインやピークの時期は変動します。

そこで、季節性商材の広告キャンペーン時期を設計するにあたり、いわゆる「ビッグデータ」を活用するケースが増えてきています。さまざまなビッグデータを活用し、その年のエリアごとのシーズンインやピーク時期を予測することで、商品が売れる時期を外さずに広告キャンペーンを展開できます。

本稿では、需要予測を活用したコンサルティングサービス「ミチシロウ」のチームメンバーである電通クロスブレインの伊藤達朗から、ビッグデータを用いた「売れどき」の予測をご紹介します。

広報リリース:需要予測を活用したコンサルティングサービス「ミチシロウ」提供開始

 

<目次>
季節性商材のシーズンイン・ピークを外してしまうとチャンスロスになる

「売れどき」を予測するための3つのポイントとは?

花粉飛散データから予測した「売れどき」を広告キャンペーン設計に活用!

季節商材に限らない!ビッグデータを活用し商機を捉える

季節性商材のシーズンイン・ピークを外してしまうとチャンスロスになる

販促のための広告キャンペーンは、「需要」の高まりにあわせて展開することが理想です。

「一般的に商品が売れ始め、売上が増加する期間」にタイミングよくキャンペーンを展開できれば、もっとも「売れる」ときにマインドシェアを高められます。売り場の展開も相まって、狙い通りの購買行動を形成できるでしょう。

逆に、「需要」の高まりと重ならない時期に広告キャンペーンを展開してしまうと、狙い通りの購買行動を形成できず、チャンスロスとなります。

例えばキャンペーンの展開が早すぎれば、需要が顕在化していない状態での広告接触が多くなり、広告がスルーされやすくなります。逆にキャンペーンの展開が遅すぎれば、広告による需要の刈り取りが手遅れとなる可能性が高くなります。

そして、商品が売れる期間に他社による広告キャンペーンを展開されてしまうと、競合商品に購買を奪われ、そのシーズンでの自社商品の購入は起こりにくくなります。

売れどき測

特に、花粉症の市販薬や制汗剤・日焼け止めなどの季節性商材は、一人あたりの年間購入回数が比較的少ないがゆえに、当該シーズンのシーズンインやピーク(=売れどき)を狙った広告キャンペーンを展開する必要があります。

そこで重要になるのが、いわゆるビッグデータの活用です。

ミチシロウでは、購買、広告出稿、テレビ番組、SNS、その他のユニークな時系列データといったバリエーション豊かなデータを駆使して、シーズンインやピークを予測しています。特に、季節性商材の「売れどき」を正確に予測するためには、「気象データ」が役立ちます。

「売れどき」を予測するための3つのポイントとは?

季節性商材の需要が高まる期間を予測するには、「予測対象」となる商品の売上データと、売上に影響を与えていると考えられる「予測因子」の関係性を分析し、要因から売上を予測する関係式を構築するという方法があります。

この関係式を構築することを、「予測モデル化」といいます。

電通では2018年から日本気象協会と連携し、マーケティングにおける意思決定への気象データの利活用を目指して、さまざまな研究開発を行っています。

日本気象協会が保有する気象データからは、天気・気温・湿度・降水量・降雪量・風向風速などのさまざまな要素を1km単位からエリア単位まで、時間粒度は1時間単位から週単位まで取得可能です。

その膨大な気象データをモデリングに活用することで、マーケティングにおける精度の高い意思決定のための予測モデルを実現できます。

そうした取り組みの中で、3つの工夫・ノウハウが実用的になりつつあります。

●ポイント① マーケットインパクト(市場規模)の反映

ある5つのエリア(地区)における商品の売上を気象データから予測したい場合について考えてみましょう。

「エリア内の1地点を代表地点とした気象データ」や、「5エリアを単純平均した気象データ」を用いて需要予測を行うと、それぞれの地区の“市場規模”を考慮していないため、要因と結果の関係性に誤差が生じやすくなります。

そこで、需要の大きさを正確に把握するため、予測対象となるエリア内の市場規模を考慮した「人口重み付け気象データ」を活用しています。これは、「5エリアを都市人口によって重み付けして、平均した気象データ」です。

「人口重み付け気象データ」は、代表地点データや単純平均データよりも売上との相関が高く、予測対象(どの程度の売上が期待できるのか)と、予測因子(気象データ)の関係性をより明確にできます。

このように、マーケットインパクトを加味した気象データを用いて需要の大きさを把握することで、「売れどき」をより正確に察知、予測できます。


●ポイント② 予測エリアの粒度

「売れどき」をより正確に予測するためには、「どの程度のエリア単位で需要予測を行うか」という粒度設定も重要です。

一般的には、予測エリアを細分化するほど、施策の効果向上が期待できますが、細分化に対応した十分なデータが必要になります。

そこで、日本気象協会が提供する全国約1800に及ぶ予測地点の気象情報と関連する気象データを用いて、目的にあわせてより細分化したエリア単位での予測を行なっています。

予測エリアを細分化することで、エリアごとのシーズンインとピークの差を施策に反映し、広告キャンペーンの展開時期を決めることができます。

たとえば、テレビCMの実施期間を決める場合、各放送局のエリア単位で「売れどき」を予測し、それぞれのエリアの「売れどき」にあわせてテレビCMを展開します。

●ポイント③ 予測を行うタイミング

テレビCMを実施したい場合、実施期間の数カ月前をめどに枠の発注を行います。そのため、「売れどき」にあわせてテレビCMを展開するには、発注時点での「数ヶ月先の売れどき」を予測する必要があります。

電通では日本気象協会からの週次気象予報データを活用し、最長15週先までの予測を週単位ですることにより、エリアごとに当該シーズンの需要傾向を捉え、「売れどき」を外さない広告キャンペーン展開の実現を支援しています。

予測した「売れどき」からテレビCMの実施期間を設定し、期間内での実際の気象変化に応じて放送局と連携をはかり、出稿素材の入れ替えや出稿量を調整するなど、オペレーションの側面からも、より正解に近づくための支援を提供しています。


花粉飛散データから予測した「売れどき」を広告キャンペーン設計に活用!

私たちが、実際に気象データを活用してエリアごとの「売れどき」を予測し、「売れどき」にあわせて広告キャンペーンを展開した花粉症関連商材の事例をご紹介します。

この商材では、もともと「過去の花粉飛散の傾向値」を用いて(全国共通を前提とした)キャンペーン期間を設計していました。しかしその後の分析で、エリアごとに異なる花粉の飛散状況が、売上に大きな影響を与えていることが判明しました。

そこで、花粉の飛散状況に合わせて、各エリアの生活者が商品を購入したくなる時期に広告キャンペーンを展開するため、日本気象協会と連携して、「売れどき」となるタイミングと飛散量をエリアごとに予測するモデルを作成しました。

そしてこの予測モデルに最新の気象予報データを入力することで、エリアごとの週次の花粉飛散量を予測。広告キャンペーンの期間と出稿量の設計を行いました。

また、通常、テレビ広告の場合は出稿期間の数カ月前の発注になるため、発注時に日次予測をすることは精度の観点から実用的でないという問題があります。そこで、予測を日次ではなく週次にすることで予測精度を実用的なレベルにまで向上させ、広告キャンペーンの実施期間を実際の「売れどき」に近づけることで、売上増につなげました。

花粉飛散データから予測した「売れどき」


季節商材に限らない!ビッグデータを活用し商機を捉える

このように商品の「売れどき」を予測できると、需要の高まりにあわせたテレビCM・販促キャンペーンの展開につなげられるだけでなく、生産計画や人員計画といった広告キャンペーン以外の事業領域への応用も考えられます。

また、季節性商材に限らず、通年商材においても、「広告キャンペーンにより販売貢献度が高まる特定の気象条件」に広告投下を集中させるケースも増えつつあります。

予測モデルを用いた取り組みの効果を高める上で重要なのは、目的にあわせて使用するデータの量、種類・粒度を丁寧に設計していくことです。

「売れどき」を100%の正解率で予測することはまだまだ難しいですが、逃す可能性のあった購買機会を獲得するために、データに基づいて正解に近づくことに意味があると考えます。

膨大なデータから意味のあるデータを見い出し、商機を捉える(=外さない)ことが、今後、競争優位性の源泉の一つとなるでしょう。

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