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トレジャーデータと電通が駆動させる、DXのエンジンNo.10

LINE、トレジャーデータ、電通が語るデータクリーンルームの役割

2022/05/31

「Cookieフリー時代」に企業はこれからどう対峙していくのか、マーケティングやデジタル広告はどう変わっていくのか。

企業にCDP(カスタマーデータプラットフォーム)を提供するトレジャーデータと電通グループが、企業のDXについて情報発信する本連載。

今回のテーマはプライバシー保護とマーケティング課題の解決を両立すべく生まれたソリューション、「データクリーンルーム」です。

データクリーンルーム(Data Clean Room)とは?


LINEのデータソリューション室の徳重航氏をゲストに招き、トレジャーデータ執行役員の山森康平氏と、電通データ・テクノロジーセンターの前川駿氏が、データクリーンルームの現在地を深掘りしていきます。


“人単位”のアプローチを進化させる「データクリーンルーム」

──前回は、前川さんに“Cookieフリー時代”の到来と、それに対するデータクリーンルームのメリットや活用法を解説していただきました。今回は、LINEの提供するデータクリーンルームを例に、データクリーンルーム活用の実践についてお三方にお話を伺います。

さて、前回は前川さんから、デジタル販促の「効果」をデータクリーンルームで分析・検証しているというお話がありましたが、山森さん、徳重さんはどう思われますか?

山森:データクリーンルームで分析することで、施策の「答え合わせ」ができるということですね。前川さんの取り組みを伺って、これは明確にクライアントにとってメリットがあるソリューションだと認識できました。

ただ、マーケティング施策の初期の設計段階からデータクリーンルームをフル活用することを前提にしないと、使いこなせないイメージもあります。例えば、成果改善のための分析には、必要なデータをあらかじめ仮説を持って準備しないと、良い結果が出ない、言い換えると「たまたま手元にあるデータ」を使った部分的な分析や検証では、成果を出しにくいのかなと思います。実際にデータクリーンルームを提供する側である徳重さんはどう思われますか?

徳重:現時点で、初期の設計段階からデータクリーンルームをフルで使おうという企業、もしくは使えるという企業が多いかというと、必ずしもそうではありませんが、「部分的な活用」でも成果は出せると考えています。

例えばLINEでは、トークリストの最上部に表示されるバナー、「Talk Head View」の効果検証でLINEのデータクリーンルームが活用されています。Talk Head Viewは1日に何百万人ものユーザーにリーチできるメディアです。例えばテレビCMと掛け合わせて広告を掲出したあと、「Talk Head Viewの広告がどれだけ購買に寄与したか」を分析される際に、代理店様にLINEのデータクリーンルームをご活用いただいています。調査結果をもとに次回のキャンペーン企画に反映させるなど、提案内容の裏付けに使われているようですね。

山森:ありがとうございます。次に前川さんに伺いますが、今のデータクリーンルームの課題はどんなものがありますか?例えば、サードパーティクッキーがなくなった場合、LINEを含めたいくつものプラットフォームごとに、個別にデータ連携の仕組み等を開発する必要が生じて、かなり手間がかかるのではないかと懸念しています。

前川:確かに、全てに対応するのは大変ですね。私の現状の課題認識は、「各プラットフォームが持つポイント等を中心としたIDの経済圏は、そもそもプラットフォームごとに分断しているため、経済圏同士のデータは許諾がない限りはつながらない」「相互に乗り入れはできない」ということです。

こうした中では、クライアント企業は、どの経済圏を中心に注力するかを見定め、経済圏ごとに“最適化”を行っていくことになります。ユーザーは経済圏をまたいで行動する可能性もある中で、最適化の仕方についてはまだ検証・研究が必要という認識です。

ただ、ひとつの商品や商品のカテゴリー単位であれば、主要な経済圏を決めれば顧客の8~9割には到達できるということも分かってきています。また、実はユーザーはそれほど経済圏をまたいでいないことも分かってきています。例えば、「ビールはこのスーパーで」「家電はこのECサイトで」というように、ある商品を買うのはこの場所・このチャネルと決めているケースが多いということです。実際、ある飲料では「人単位で見れば、約70%の人は同じひとつの店舗で商品を買う習慣になっている」という調査結果もあります。

もちろん、ひとつの経済圏だけを見ていても、顧客全体を捉えることはできません。ですから、「顧客全体を捉える市場構造の把握」においては、従来のように調査会社のパネルデータを活用することが引き続き有効だと考えています。経済圏同士の相互乗り入れができない状況では、市場全体を俯瞰(ふかん)したり、経済圏ごとの結果を補正したりするデータが必要ですが、そこを補うのに役に立つのがパネルデータです。

ある食品メーカーは四半期に1回、パネルデータを用いて、コロナ禍で外出機会が減り離脱したユーザーや、コロナ禍でも購買を継続しているユーザーを可視化し、それらユーザーの特徴をまず分析しました。その後、検証の結果、広告においては離脱した層でなく、継続した層により集中して投資したほうが効率的だと分かりました。そこで、LINEのデータクリーンルーム上で「Ponta会員」のID内に同じクラスタを再現させ、「購買継続層」をセグメントしてLINEで拡張を含めて広告配信を行った結果、第三者の調査では配信数に対する「購買継続層」の含有率を1.7倍ほどまで高めた例もあります。

図:パネルデータと実購買データの連携例
図:パネルデータと実購買データの連携例
 

──そのようにデータ活用が進化する中で、クライアントから求められる支援のレベルは戦略面、技術面ともに高まりますね。

山森:トレジャーデータはソリューションを提供する立場ですので技術的な支援を果たすべきなのではと考えています。ファーストパーティデータと各種プラットフォームのデータの接続など、テクニカルな側面で「クライアントの負担を減らす」サービスが必要なのではないかと考えていますが、前川さんはどう思われますか?

前川:ご指摘の通り、クライアント企業とプラットフォーム間でのデータ連携は、企画書上では簡単に書けますが、いざ実行となると非常に手間はかかります。

データのプライバシー保護が適切にできているか、自社の保有データを安全にデータクリーンルームに転送できるのか、転送したあとの分析のクエリをどう自動化するかなど、検討すべき項目が数多くあります。

LINEを例に取ると、クライアントが「自社のLINE公式アカウントから得た情報」を保有している一方、性年代・購買などのデータはLINE側にあります。それらを相互につなげるまでの道のりには、データのポリシー面、システム面、ビジネス面での調整からスタートします。

まさにトレジャーデータのようなテックパートナーとの協業で電通が推進したいのは、この「データ連携」を簡単に、安全にするところですね。

──最後に、プラットフォームを中心とした経済圏マーケティングにおいて重要になる「ソーシャルログイン」について伺わせてください。プラットフォームのアカウントでログインすることで、さまざまな企業のサービスを受けられるというものですね。

山森:私たちとしても、ソーシャルログインは非常に重要だと考えています。昨今注目されている「コンセントマネジメント」(同意管理)にも関連しますが、クッキーにひもづいた同意やメールの送付、LINEの送付などの同意管理を、ソーシャルログインでより簡便に実装できるのではないでしょうか。

いわゆるコンセントマネジメントツールと呼ばれるものと、LINEログインは本質的に非常に近しいように思えます。それの普及が将来的にマーケティングの自由度を高めることができるとも考えられます。

徳重:同感です。ただ、課題として、ソーシャルログイン自体が日本人にまだあまり根付いていないという点があります。ソーシャルログインの普及率が低いという調査もあります。理由としては、利用するメリットが啓発されていないことや、「自分のIDにどんな個人情報が含まれているのか、またその個人情報を企業にどう使われるのかが分からない」という不安があるようです。

一方で、「ユーザーに対するメリット」をどう提供するかが大きなカギになります。プラットフォームのアカウントを、ユーザーにソーシャルログイン用に使っていただくには、プロフィールの入力などが必要ですが、そのインセンティブをどう提供するか。

個人的には、今企業に選ばれやすいのはAmazonアカウントによるソーシャルログインだと思っています。なぜならAmazonはECサイトのため、アカウントに住所情報が正しくひもづいているからです。

将来的には、ユーザーにソーシャルログインのメリットをご理解いただいた上で、同意を得て取得したデータ、つまり「正しく取得したデータ」を、広告配信の最適化に使っていける世界観を構築したいです。

なお、LINEのユーザーは日本国内でおよそ9000万人(2021年12月時点)にのぼり、その点においても各企業にLINEアカウントをソーシャルログインに使ってもらうメリットは大きいと考えます。

前川:ソーシャルログインは、プラットフォームが提供するコンテンツやサービスをパーソナライズしたり、ポイントを還元するなど「ユーザーへのメリット還元」が、比較的分かりやすいとは思っています。例えばLINEの公式アカウントを通じてブランドの販促キャンペーンに参加して、LINEポイントが付与されるような一連のユーザメリットがデータを預ける必然性につながっています。

今回の対談では、ポストCookieと呼ばれる新しい時代における、データ活用の現在と未来についてお話ししました。今後、さまざまな企業が、データクリーンルームやCDPといったデータ環境を両立し、顧客体験に資する人基点のマーケティングを追求していくことになるでしょう。そのための情報や知見、技術的なサポートができるパートナーとして、LINE、トレジャーデータ、そして電通がクライアント企業から選ばれる存在でありたいと思っています。
 


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