ドコモのデータ基盤「docomo data square」が実現する次世代マーケティングNo.1
データクリーンルームは「Cookieフリー時代」のマーケティングを変える
2021/10/13
※データクリーンルーム(Data Clean Room)とは?
個人情報保護の潮流を受けて、グーグルによるサードパーティークッキー(※1)の廃止や、アップルによるIDFA(※2)取得のオプトイン必須化など、いわゆる「Cookieフリー時代」が到来しようとしています。
そんな中、「プライバシー保護」と「企業のマーケティングニーズ」を両立させ、マーケティングの継続的なPDCAを実現させるデータ基盤が「データクリーンルーム」です。
本連載では、新時代のマーケティングに欠かせないデータクリーンルームの可能性と魅力を、ドコモの「docomo data square」を例に紹介していきます。
今回は、電通データ・テクノロジーセンターでデータクリーンルームの開発に携わる古池茜が、身近な事例を交えながらCookieフリー時代とデータクリーンルームの基本的な考え方を解説します。
※1 サードパーティークッキー
クッキーとは、ユーザーが閲覧したウェブサイトのサーバーから発行され、そのユーザーのウェブブラウザに保存される閲覧情報。現在閲覧しているサイトのクッキーをファーストパーティークッキー、他サイトから発行され保存されたクッキーをサードパーティークッキーと呼ぶ。
※2 IDFA
Identifier for Advertisers(広告識別子)の略で、iPhoneやiPadなどのアップル製デバイスに割り当てられるID。
<目次>
▼「良い顧客体験の創出」と「ユーザープライバシーの配慮」の両立が最大のテーマになる
▼Cookieフリー時代に「データクリーンルーム」が注目される理由
▼巨大な“ドコモ経済圏”のデータ連携!「docomo data square」三つの強み
「良い顧客体験の創出」と「ユーザープライバシーの配慮」の両立が最大のテーマになる
先日、出前アプリで夜食を頼んだらこんなことがありました。
届いた袋に「3回目(^^)」というメッセージが書かれ、おまけにドリンクがついていたのです!
深夜にジャンクフードを頼んだので若干恥ずかしかったのですが、疲れた体に、このちょっとした気遣いが染み入って、まんまと、また次もこのお店で頼もうと思ってしまいました(笑)。
さて、このエピソード。お店が私のIDにひもづく「注文履歴」というデータを活用したからこそ、お店は適切なメッセージと特典を提供でき、私はそこに魅力を感じてお店のリピーターになりました。
この話を読んで、皆さんはどのように感じましたか?もしかしたら
「頼んだ回数まで把握されているのはちょっと気持ち悪い、嫌だな」
と感じた方もいるかもしれません。そのような生活者には、「店側に自分のデータを提供しない」という選択肢があるべきです。
一方で、今回の私のように
「良いサービスが受けられるのであれば構わない、データを提供してもよい」
という選択肢もあるべきです。
総務省の調査では、商用目的でのデータ提供に対してポジティブ56.2%(赤合計)、ネガティブ43.8%(青合計)と意見が割れていますが、「条件によっては提供してもよい」という回答が最も多くを占めています。
つまり、大事なのは生活者自身が、
「自分のデータがどこでどう収集されて、誰が何のために使っているのか」
「それによって自分にどんなメリットがあるのか」
という情報が把握でき、そして自分のデータの扱いを自分の意思で選択できることです。
そのために必要なのが「オプトイン」「オプトアウト」という仕組みです。
ユーザーが自らに関するデータを利用される際に、企業に対して許諾の意思を示すことをオプトインといいます。もちろん、ユーザーには後からその許諾を「取り消す」、つまりオプトアウトの権利もあります。
アップルはiOS14以降から、アプリがモバイルID(スマートフォンやタブレットのアプリで利用される、広告用の端末識別ID)を取得する際には、事前にユーザーの意思を選択させるオプトインの提示を「必須」としています。
下のような画像は、見覚えがある方も多いかと思います。
この「あなたのアクティビティを追跡する~」という文言に何やら不安を感じたらしい母からこんなメッセージが届き、私はこの後質問攻めに遭いました(笑)。
もちろん企業側も、利用者を不安にさせないように、「ユーザーデータの広告利用」について分かりやすい説明を表示し、その後にオプトインのポップアップを表示するなど、工夫を凝らすところも増えています。
「ユーザーに適切なタイミングでオファーを出したい、そのためにデータを活用したい」という企業のニーズ。
「とはいえ、むやみやたらにデータを活用されるのは不安」というユーザープライバシーへの配慮。
これからのデジタルマーケティングは、この二つの要素の「両立」がテーマになっていきます。
Cookieフリー時代に「データクリーンルーム」が注目される理由
良い顧客体験とユーザープライバシー保護を両立するため、新しいソリューションがいくつも登場しています。その中から、今回ご紹介する「データクリーンルーム」の特徴をご説明します。
データクリーンルーム(Data Clean Room)とは、生活者個人を特定することなく、企業のデータサイエンティストがデータの統合や分析のためにアクセスできる“環境”のことです。多数のユーザーを持つ、いわゆる“プラットフォーマー”と呼ばれる企業によって提供され始めています。
個人が特定されない安全な環境だからこそ、プラットフォーム内外の膨大なデータを統合することができ、企業はデータクリーンルームを介して、生活者ひとりひとりにパーソナライズしたプランニングや広告・販促施策が可能となります。
- クライアントデータ(広告主企業保有のユーザーデータ)
- 広告会社保有のデータ
- プラットフォーマー保有のデータ
データクリーンルームとは、これらのデータを個人を特定しない形でつなぎ合わせることで、「良い顧客体験の提供」と「プライバシー保護」を両立したデジタルマーケティングを可能にするデータ基盤です。
特に大きなポイントは、データクリーンルームという環境を介することで「個人を特定しない」にもかかわらず、従来と同等、あるいはそれ以上に「生活者の気分やニーズであるモーメントを捉えた広告配信や効果測定」ができる点です。
特に「ポイント事業」や「決済」など、生活者にメリットを還元できるサービスを提供しているプラットフォーマーは、生活者のオプトイン同意を取りやすく、既に許諾済みのIDを数千万規模で保有しています。
「メディア接触」から「購買」までを、生活者の許諾に応じて“人基点”でひもづけ、生活者と継続的につながることができるからこそ、データクリーンルームは「ブランドのファンを作っていける基盤」となります。
まとめると、個人を特定せずにさまざまなデータ活用が可能なデータクリーンルームによって、
- 「プラットフォーマーの持つ巨大な経済圏」を生かしたマーケティングができる
- モーメントを捉えたより良い顧客体験を創出し、ブランドのファンを増やせる
- 生活者のプライバシーは守られる
巨大な“ドコモ経済圏”のデータ連携!「docomo data square」三つの強み
ドコモと電通は、 Cookieフリー時代においても不変の「dアカウント」をキーに、ドコモが保有する「位置情報データ」や「dポイント会員データ」と、電通が保有する「メディア接触データ」を統合し、分析できるデータクリーンルーム、「docomo data square」を提供しています。
「docomo data square」ニュースリリース
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2020/0804-010117.html
データクリーンルームはさまざまなプラットフォーマーから提供されていますが、docomo data squareを用いた広告配信では、
- テレビCM
- ウェブ広告
- デジタルOOH
への生活者の「メディア接触」から、実際の「購買行動」までを人起点で効果計測できるのが非常にユニークなポイントです。
「dポイント会員」という巨大な経済圏には、「アプリ利用」「位置情報」「加盟店での購買」など、多彩なサービスのデータがひもづいています。
携帯キャリアならではのアプリ利用データ、位置データに加え、「ドコモの携帯利用者以外」にまで範囲を広げたdポイント会員拡充戦略が、会員数約8200万人というドコモデータの強みとなっています。
今回お話ししてきたように、Cookieフリーやユーザープライバシー保護など、デジタル広告やデータマーケティングが大きな過渡期を迎えています。
そんな中、データクリーンルームの提供を開始したドコモは、巨大プラットフォーマーの視点から、現状の課題や今後の打ち手をどのように捉えているのでしょうか。
次回は「docomo data square」について、ドコモのご担当者にお話を伺います。