コロナ禍でママたちはどう変わった?~新しいママインサイトの兆し~No.2
前例のない時代、子どもの学びについて模索するママたちの声
2022/05/31
コロナ禍によるママたちの意識や行動の変化をお伝えする本連載。
電通ママラボは、全国のママたちに支持されているアプリ「ママリ」(※)の声をまとめた「家族ノート」のデータをコネヒトと共同で分析。さらにママラボで独自調査も実施して、ママたちに芽生えた新しい価値観を探りました。
※ママリ
コネヒト株式会社が運営する「ママの一歩を支える」をテーマにした、妊活・妊娠・出産・子育ての疑問や悩みを解決する情報サイト。ママの不安や悩みを解決する情報を毎日発信している。
今回は、コロナ禍がママたちの習い事やオンライン学習への意識にどんな影響を与えたのかについてお伝えします。
【ママラボ】
ママと子どもの本心と真摯(しんし)に向き合い、課題解決策を提案するワークタンク。「母親の視点にこだわって、次世代家族マーケットを活性化したい」という考えのもと、2008年に設立。ママ・子ども・家族の向かう先を予測し、多くの企業や団体に事業課題や社会課題を解決するためのリアルなインサイトとソリューションを提供している。
「子どもの運動機会減少」を補うために、習い事に対するママたちの意識が変化
コロナ禍により、子どもたちの体力が低下しています。グラフ1は、スポーツ庁が令和3年の4~7月に全国の小学校5年生と中学2年生を対象とした体力測定の結果を集計したものです。この結果をみると、コロナ禍前の令和元年調査結果に比べて、明らかに小中学生男女ともに体力合計点が下がっていることが分かります。
スポーツ庁は、この体力低下の原因として、コロナの影響が拍車をかけていると発表しました。特に、コロナ感染拡大を防ぐために、学校での体育授業や部活・運動会の活動も制限がかかったことで、子どもたちの体力向上の取り組みが減少したことが背景にあるとしています。
このように保育園や学校で、体力育成をする機会が減少し、子どもたちの体力が低下していることに、ママたちも強い危機感を抱いているようです。
実際、ママラボの独自調査「コロナ禍に立ち向かうママたちの調査」で「コロナ発生後の子どもの心身への変化」について聞いたところ(グラフ2)、「運動不足だと思う」との回答が、全体の72%にも上っています。また子どもが「最近疲れやすくなってきている」という回答も60%以上でした。
また、グラフ3を見ると文化祭や運動会などのイベントが中止になることで「子どもがさまざまな体験ができる場の喪失が心配だ」と答えているママたちは、80%以上に上ります。
ママリアプリ内のデータにも、ママたちの心配する気持ちが表れています。2021年になってからは、コロナ禍にもかかわらず習い事に関する検索が盛んになってきました。
また、グラフ4はママリのコミュニティ内で、「習い事」を含む質問に関する分析で、「習い事」を含む投稿の月ごとの頻出度を表にしたものです。
図1は、コロナ禍になる前と、コロナ禍の最中で習い事にまつわる発言の中で、「体操」「スイミング」「英語」の頻出度をくらべたものですが、これをみるとコロナ禍前は、「英語」の頻出度が高かったですが、2021年になると「スイミング」や、「体操」など運動系の出現率が上がってきています。ここでも、体を使う機会を増やすために運動系の習い事をさせたいという気運が高まっていることが分かります。
ママラボの独自調査「コロナ禍に立ち向かうママたちの調査」でも、「あえて体験させるためにやらせたいこと(1回限りでも)」を聞いていますが、スポーツや運動系の体験をさせたいと回答したママは全体で24%以上、特に4~6歳の子どもを持つママたちは35%と最も高い数値になりました。
以上のようにコロナ禍では、体力が落ちた子どもたちのために、習い事をさせるならまずは運動系のものを考えるようにママたちの意識が変化していたことが分かりました。
コロナ禍であっても、子どもたちが体力を維持できるような環境をいかにつくってあげられるのか、子どもの成長段階に合った運動機会や新しい体験の場をコロナの状況に合わせて臨機応変に整えることがwithコロナの社会には求められるのかもしれません。
コロナ禍で生まれた新しい習い事のカタチとママたちの葛藤
コロナ禍により、デジタル環境が整ったことで、子どもたちの習い事周辺でも、パソコンやタブレットなどを利用したものが増加しました。
近年はEducation(教育)とTechnology(技術)を掛け合わせた造語「EdTech(エドテック)」の導入が日本でも本格的に進んでおり、今後の教育環境を大きく変えていく源泉になりつつあります。しかし、子どもの教育のデジタル化については、賛否両論あります。ママたちの間でも、闊達に意見交換されていますが、ママラボの調査によると一方的なオンライン学習について、ママたちはまだ手放しで歓迎しているわけではなさそうです。
「コロナ禍に立ち向かうママたちの調査」でママたちにきいたところ、「オンライン学習はもっと普及すべき」との回答は45.2%(そう思う、ややそう思うの計、以下同様)。約半数は、普及に肯定的です。ただ、「従来の学習方法(紙や教科書を使用したもの)をメインとしてオンライン学習はサブ的に行ってほしい」と、62.3%が回答。すべての学習プロセスがオンラインになることには、まだ多くのママは抵抗があることが分かります。
なぜそう思うのでしょうか。「オンライン学習で学習の習熟度に差ができないか心配だ」(69%)、「学校や指導側の違いで、オンライン学習の環境に差ができないか心配だ」(68.2%)と、実に約7割のママが習熟度や学習環境に不安を感じています。一人一人の習熟度に合わせたフォローアップや、学習環境の公平化などについての対応が今後のオンラインを使った学習の発展には重要な要素となりそうです。
一方で、オンラインで行える学習や習い事について、メリットを感じているママたちも出てきているのも事実です。
オンラインで子どもに学習やレッスンを受けさせているママたちにヒアリングをしてみた結果、以下のような意見がありました。
上記のママたちの意見以外にもオンラインレッスンでは、居住地などの制限がなく、柔軟性が高いことに加え、子どもも自分も時間を有効活用できる点にメリットを感じていることがうかがえました。ステイホームでテレビ視聴時間が長くなるよりも、オンラインレッスンを受けさせるほうが、おうち時間の質向上になるという点もありそうです。
オンラインレッスンはまだ普及し始めたばかりですが、レッスン時間の自由度、柔軟性の高いレッスン内容、親子で参加できる点など、従来の習い事の慣例を覆すところに注目が集まっています。
以上のように、まだ発展途上にあるオンライン学習や習い事について、ママたちは模索中の様子です。リアルな交流がある習い事に通わせたいと思うママたちのインサイトとしては、ゴールに向かって仲間と切磋琢磨する環境に身を置いて対人スキルを学んでほしいという思いがあるようです。
今後は、そういったママたちのニーズを満たすために、オンラインレッスンのプログラムやサービス、システムについてどういった工夫を施すのかなど、考えていく必要がありそうです。
ママラボでは、ママたちのインサイトに注視しつつ、引き続き子どもたちにとって、本当に良い学びにつながるにはどうすればいいのか、を考えていきたいと思います。