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キャッシュレス・ジャパン・サーベイ2021:キャッシュレスが牽引するDXNo.2

コロナ対策にも有効!?日本の「非接触決済」のポテンシャル

2022/06/29

電通キャッシュレス・プロジェクトが実施した、第2回「キャッシュレスに関する意識調査」(調査概要はこちら)。本調査の目的は、新型コロナウイルスによりライフスタイルが大きく変化する中、生活者の決済手段がどのように変化し、今後どのような決済手段が主流になっていくかを明らかにすることです。そして本連載では、調査結果をベースに、日本のキャッシュレス利用者増加の現状と、それでもなお推進を阻む障壁について解き明かしていきます。

今回は、日本における「非接触決済」利用のポテンシャルについてお伝えします。

キャッシュレス連載#2_画像00

<目次>
世界に後れを取る日本の非接触決済利用

日本人が耐えられるレジ待ちの限界点〜レジ待ち解消のカギは非接触にあり

利用頻度の高さでクレジットカードを上回った非接触決済

店頭とオンラインのボーダーをかき消したモバイル決済

世界に後れを取る日本の非接触決済利用

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出典:電通キャッシュレス・プロジェクト「コロナ禍における生活者のキャッシュレス意識調査 2021年12月」
【SA サンプル数:500】。

決済手段の中で衛生的安全性が高いのは、非接触決済だといわれています。理由は、現金での支払いの時のように現金や相手の手に触れるやり取りがないからです。

磁気カードの多くは、レジ係に手渡し、スワイプしてもらわなければなりません。暗証番号入力式のIC カードは、多くの人が触っている端末機にカードを挿入し、PINコードを入力する必要があります。これらはいずれも、人の手や決済端末に触れるリスクがあります。

一方、非接触決済は、文字どおり人や端末に触れないので安全です。非接触決済ツールには、モバイル非接触決済(NFCタイプ※)、モバイルQR コード決済、そしてカード非接触決済の3種類があります。

※ = モバイル非接触決済(NFCタイプ)  
非接触型のICチップを搭載したスマートフォンを決済端末にかざして支払いする方法。「NFC」は「Near Field Communication」の略で、近距離無線通信を指す。

 

直近3カ月で、どの非接触決済方法を使う頻度が増えたかを聞いてみました。その結果、「とても増えている」という回答が最も多かったのは、モバイルQR コード決済(11.8%)でした。NFCタイプのモバイル非接触決済(7.5%)やカード非接触(4.8%)より高い回答となっています。「やや増えている」を加えた数値でも、モバイルQR コード決済が35.9%と、トップでした。とはいえ、世界がコロナパンデミックで一気に非接触決済に向かう中、他の国の状況を見てみると、日本はいまだ低い水準であることがうかがえます。

例えば、英国では、カード取扱件数に占める非接触決済の比率が高まりつつあります。2021年9月単月の実績では、デビットカードの69%、クレジットカードの53%が非接触決済でした。前年同月比30.5%増、2019年同月比では70.3%も伸びています。金額では150億ポンド(約2.25兆円)で、前年同月比30.1%増、2019年同月比では114.6%増と飛躍しています。(出典:Barclaycard 調べ)

日本人が耐えられるレジ待ちの限界点〜レジ待ち解消のカギは非接触にあり

キャッシュレス連載#2_図版02
出典:電通キャッシュレス・プロジェクト「コロナ禍における生活者のキャッシュレス意識調査 2021年12月」
【SA サンプル数:500】

レジでの支払いをキャッシュレスにすれば、レジ処理のスピードは上がります。ある大手流通チェーンストアでは、キャッシュレスレーンを設けたところ、処理スピードが1.5倍になったそうです。では、非接触決済の利用がまだまだ浸透していない、日本人のレジ待ちにおける忍耐力はどれだけあるのでしょうか。

今回の調査では、スーパーやコンビニエンスストアのレジで、何人並んでいれば離脱するかについて聞いてみました。

一番多かったのが、「待ち人数が3人までなら並んで待つ」という人たちで、40.1%でした。次いで「待ち人数が5人までなら並んで待つ」が30.1%となりました。「10人までなら待つ」は6.4%、「11人以上でも並んで待つ」という忍耐強い人は13.8%まで減少します。

今回の調査結果を見ると、5人以下の回答をした人が全体の79.8%を占めています。待ち人数はおおよそ5人までというのが多くの人の認識ということになりそうです。中には、「待ち人数が1人でもいたら、買うのをやめる」というせっかちな人も1.1%いました。

コロンビア大学の調査によると、レジ列が10人から15人になると、購買率で30%から、多い場合には70%も減少するという結果が出ています。スーパーやコンビニはほぼすべてのショップでキャッシュレス決済を受け付けています。支払いをキャッシュレスにすることによって、そんなレジ待ちのストレスをなくすことができるのです。

利用頻度の高さでクレジットカードを上回った非接触決済

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出典:電通キャッシュレス・プロジェクト「コロナ禍における生活者のキャッシュレス意識調査 2021年12月」
【MA サンプル数(キャッシュレス利用者):467】

「どのキャッシュレス手段を利用しているか」という質問をすれば、大概クレジットカードがトップにくる、というのが、これまでの常識でした。
今回の調査でも、クレジットカードが81.9%と、最も多い結果となりました。次いでモバイルQR決済が63.7%でした。以下、カード型一般電子マネー(39.3%)、カード型交通系電子マネー(39.1%)、モバイル非接触決済(24.4%)と続きます。

しかし、質問の仕方を「利用頻度」に変えると、違う側面がみえてきました。週2回から3回以上使う決済手段のトップは、モバイルQR 決済で57.8%。次いでモバイル非接触決済が44.6%、カード型一般電子マネーが42.7%。クレジットカードは4位で41.8%という結果になりました。

さらに、毎日1回以上に絞ると、トップはモバイル非接触決済(19.6%)となります。2位はモバイルQR 決済(17.7%)、3位はデビットカード(14.8%)です。クレジットカードはここでも4位(12.4%)という結果です。

カード対モバイル決済というカテゴリーでみると、利用頻度が高いのはモバイル決済です。モバイル決済の利便性が、カード決済より高いということでしょう。たしかに、モバイル決済であれば、ポイントサービスなどを他のアプリと連携させて使うことができ  、オンラインとオフラインの両方で簡単に使えます。カードは自宅に忘れても、モバイル(携帯)は忘れずに常に生活者の行動に寄り添っていることの表れかもしれません。

店頭とオンラインのボーダーをかき消したモバイル決済

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出典:電通キャッシュレス・プロジェクト「コロナ禍における生活者のキャッシュレス意識調査 2021年12月」
【MA サンプル数:500】

コロナパンデミックによって、世界では事前注文決済(Order & Pay)、あるいは店頭・オンライン連動決済という購買スタイルが伸びています。日本での利用実態はどうなのでしょうか。現在利用している人の比率を割り出してみました。

コーヒーショップやレストランなどの飲食店で、事前オーダーして支払いも済ませ、店頭でピックアップする、という人は23.4%でした。レジに並ばなくてもよく、決済も事前に済ませているので、支払いの時間もかかりません。

自分でピックアップするのではなく、コーヒーショップやレストランで事前に注文してデリバリーしてもらっている人は18.1%でした。いつ届くか分からない状態で待つよりも、自分でピックアップしたほうがストレスが少ないということでしょうか。

スーパーやデパートで事前注文してピックアップするという人は11.1%でした。まだ少数派ですが、事前注文をしておけば、例えば、売り切れる前に事前購入したいというニーズも満たしてくれます。

店頭・オンライン連動決済が最も多かったのは、美術館や動物園、映画館などのエンターテイメント施設での利用。オンラインで事前にチケットを購入する人が31.5%もいます。感染予防のために、予約制にしている施設が多いことも影響しています。

「モバイル」で「事前」に決済する利便性。これは、今後の日本のキャッシュレス 促進のキー・ドライバーの1つになるかもしれません。
次回は、店舗側(中小店舗)の視点から、キャッシュレス決済の推進を阻む本当の理由をひもとき、企業側の今後の対応のポイントも含めて解説していきたいと思います。

【調査概要】
タイトル :第2回「コロナ禍における生活者のキャッシュレス意識調査」
調査手法 :インターネット調査
調査時期 :2021年12月16日~17日
調査エリア:全国
調査対象 :20~69歳男女500名(人口構成に基づきウェイトバック集計を実施)
調査主体 :株式会社電通 電通キャッシュレス・プロジェクト
調査会社 :株式会社電通マクロミルインサイト

 

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