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未来の難題を、こう解いていく by Future Creative CenterNo.17

コメ兵は「好奇心製造業」へ。自社の価値を深さのある「最大公約数」で再規定する。

2022/09/21

電通のクリエイティブ横串組織「Future Creative Center(FCC)」は、広告の枠を超えて、未来づくりの領域をクリエイティビティでサポートする70人強による集団。この連載では、「Future×クリエイティビティ」をテーマに、センター員がこれからの取り組みについて語ります。

リユース・中古品の買取販売を行う「KOMEHYO(以下、コメ兵)」は、創業75周年を迎える今年、自社の事業価値を再規定しました。その狙いは、世の中に対して自社の魅力を明確にし、また、この会社が目指す未来をはっきりさせることでした。そしてそれは、社員のやりがいにもつながると考えたのです。

このプロジェクトには、FCCのメンバーが参加。そこで本記事では、株式会社コメ兵代表取締役社長 石原 卓児氏、広報部 吉田 浩之氏、クリエイティブディレクターを務めた電通FCCの樋口 裕二氏が、一連の取り組みを振り返ります。

スリーショット

プロジェクトの背景にあった「自社の価値が伝わっていない」という課題

石原:私たちコメ兵は、75年前に古着販売から始まり、以来、リユース事業を行ってきました。今ではリユースという言葉が定着していますが、私たちは1995年から「リレーユース」という言葉を掲げ、単に再使用する行為だけではなく、伝承(リレー)され、有効活用(ユース)されるという思想を大切にしてきました。

その中で、今回の「事業価値を再規定する」という取り組みを行ったのですが、実はその背景に、企業として感じていた二つの課題がありました。

一つは、近年リユースが一般化する半面で、どの会社も横並びに見られているのではないか、という懸念です。つまり、コメ兵の価値や長所がどこにあるのか、世の中に伝わっていない。そして社員も、自社の価値や長所をはっきりと自覚していないのではないか、と感じていました。

そして二つ目の課題は、コロナ禍もあり、日々の数字や目先のゴールに目線が行き過ぎていたことです。もう少し目線を上げて、未来を語る機会が必要ではないかと考えていました。

吉田:そういった課題がある中で、昨年11月にイベントで樋口さんと出会いました。これらの課題を共有した後、いくつかご提案いただいた中に「事業価値の再規定」がありました。

樋口:二つの課題に対し、コメ兵の事業が持つ価値を再規定することで、社員の方の意識が変わり、また外部からのコメ兵の見られ方も変えられればと思いました。

クリエイティブは広告だけでなく、今回のような企業戦略にも活用できます。また、電通の強みは事業価値を再規定するだけで終わらず、それを一言化と一目化し世の中に届けるところまでできる点です。そこで、事業価値の再規定から、それを表すステートメントやキービジュアルの制作までを含めて、一つのプロジェクトにしました。

吉田:2022年2月からプロジェクトがスタートし、5月に行われるコメ兵の経営計画発表会で発表する運びとなりましたね。

「社内からにじみ出た言葉を」。議論のスタイルを選んだ理由

樋口:そこからは、コメ兵の事業価値を明確にするため、社員インタビューと社員ワークショップを行いました。ワークショップは、東名阪の3カ所で実施。また、各部署からメンバーを集めてプロジェクトチームも結成し、議論を重ねていきました。その体制の中で、皆さんの仕事内容や「こういう未来にしたい」というお話を聞きながら、コメ兵の事業価値を探っていきました。

社員の方と議論していく方法を取った理由として大きかったのは、石原社長に初めてお会いしたときにかけられた言葉です。石原社長は「流行の表現などを使ったきれいな言葉でまとめたくない。あくまでコメ兵みんなの思いを形にしたいし、みんなが納得できるものにしたい」と、はっきりおっしゃいました。だからこそ、社員の皆さんと議論を重ねながら進めていこうと考えました。

石原:トレンドの言葉や、あるいは誰か1人の考えを表した言葉にはしたくありませんでした。そうではなく、社内からにじみ出てきた言葉、社員全員の思いが表れ、ずっと大事にする言葉を見つけたかったんです。

吉田:みんなが納得した言葉でないと、その言葉が日々のアクションに落ちないという思いもありました。このプロジェクトは事業価値の再規定がゴールではありません。それは“フェーズ1”であり、その後、浸透させる“フェーズ2”も大切です。そこまで想定しながらプロジェクトを進めていきました。

再規定された事業価値。社内外に伝わる「最大公約数」の言葉

樋口:こういった過程を経て、最終的にはコメ兵の事業価値を「好奇心製造業」と再規定しました。中古品を扱う時に、環境への貢献や経済的という理由だけではなく、その根本にある“何かをほしいと思うことの価値”をコメ兵の視点で再定義できないかと考えて“好奇心”というキーワードが出てきました。さらに、この価値観を社内外に伝えるため、企業広告も制作しました。

中日新聞に出稿した企業広告
中日新聞に出稿した企業広告
ボディーコピー
ボディーコピー

吉田:「好奇心製造業」という言葉が出る前の段階で、考えている方向性をお聞きしたときに、「欲望編集業」という案がありました。私はこの「欲望」という言葉が、弊社のビジネスを的確に、きれいごとでなく表していると思ったのです。私たちが預かっているのはブランド品が中心で、この商品を欲しい、身につけたいという欲望は少なからずあるはずです。

ただ、世の中に出す表現として「欲望」はダイレクトすぎます。そこでブラッシュアップするうちに「好奇心」という言葉になりました。コメ兵の事業とは何か、それが社員にもお客さまにも伝わる言葉だと思いましたね。

石原:個人的には、社内のみんなが思っていることがにじみ出た言葉だと思います。広告のボディーコピーにある通り、うちには工場も製造ラインもありません。ただ、コメ兵の目利きやメンテナンス、リメイクによって中古品に信用が生まれます。だとすると、私たちが商品に信用を乗せることで、人々の「あれが欲しい」という好奇心を生み出しているのだと。

日々の業務の中でみんながやっているけれど、言われなければ気づかないインサイトといえるでしょう。それを事業価値としてはっきりできたのはよかったですね。

樋口:僕たちがゼロから新しい言葉をつくるのではなく、もともとコメ兵にあった価値、でも気付きにくかったものを見つけて言葉にするのが電通の役割だと思っていたので、今のお話はうれしいですね。

また、もともと社員の方を意識して始まったプロジェクトですが、世の中に発信されるものでもあったので、社内と社外の両方に伝わるバランスが必要です。一人の社員のN=1を大切にしつつ、深さのある最大公約数となる表現ができたと思います。

石原:もう一つ今回のプロジェクトで良かったのは、社員と「将来どうなりたいか」というテーマについて、年代やエリアを超えて議論できたことです。その場にいられて良かったと思いますし、なんというか、久々に楽しい仕事でした(笑)。

これからは「浸透」のフェーズ。「好奇心」と「コメ兵」がつながるように

吉田:当初の予定通り、5月の経営計画発表会でこのステートメントを発表しました。その後、打ち合わせなどでも「好奇心」という言葉を社員がよく使ってくれていると感じています。今後は、本当の意味で社員一人一人がこの言葉を理解し、行動を起こすようにしていきたいですね。そして、外からも「好奇心」と「コメ兵」がつながる存在として見られるようにするのが目標です。簡単ではないですが、そうすれば、業績もついてくると思います。

石原:私たちは「好奇心をつくる会社」だということを、社内だけで納得せず、お客さまにも思っていただけるようにしなければなりません。そのために品ぞろえや接客、空間づくりを工夫していく。そうして、お客さまが「コメ兵に行くとなんかワクワクするよね」と思っていただければ、言ったこととやることが一致してきます。

それは、働く社員にとってもやりがいになるでしょう。だからこそ、「好奇心製造業」を社内にも社会にも浸透させていきたいと思います。

樋口:僕たちとしても、浸透してこそ本当のゴールだと思っています。“フェーズ2”として、好奇心製造業という指針をどうドライブさせていくのかというサポートをしているのですが、その意味で“理想形”として描くのは、電通が離れてもこの言葉が社内で機能し、社員の方やお客さまの行動に影響が生まれる状態です。離れるのは寂しくもありますが(笑)、コメ兵が世の中の好奇心を増やしていくことに、伴走できればと思います。

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