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未来の難題を、こう解いていく by Future Creative CenterNo.23

ブランドのコアにクリエイティブを。アートディレクターが単身で内部に入ったFUJIMIリブランディング

2023/02/27

電通のクリエイティブ横串組織「Future Creative Center(FCC)」は、広告の枠を超えて、未来づくりの領域をクリエイティビティでサポートする70人強による集団。この連載では、「Future×クリエイティビティ」をテーマに、センター員がこれからの取り組みについて語ります。

ユーザーのパーソナライズ分析をウェブ上で行い、その個人の特性に合わせたパーソナライズサプリメントやプロテインを提供するブランド「FUJIMI」。2018年に創業したスタートアップ「トリコ」のブランドで、2021年にはポーラ・オルビスホールディングスグループに入るなど、順調に成長してきました。

そんなFUJIMIがリブランディングを行ったのは2023年1月のこと。このリブランディングプロジェクトでは、電通FCCのアートディレクターが単身でトリコ内部に入り、経営陣と一体になってリブランディングを推進。ブランドのコアや世界観を規定したほか、ブランドガイドラインや新商品の企画まで、広範に行いました。

リブランディング後のFUJIMIのキービジュアル
リブランディング後のFUJIMIのキービジュアル

この体制で行われたリブランディングはどんなもので、どういった成果があったのでしょうか。トリコの共同創業者であり代表取締役CEOを務める花房香那氏、FUJIMI事業責任者の小倉泰葉氏、電通FCCのアートディレクター・八木彩氏が集い、プロジェクトを振り返りました。

花房氏、小倉氏、八木氏

リブランディングの背景。もっと成長するために「FUJIMIらしさ」を

花房:FUJIMIは、私たちトリコが最初に立ち上げたブランドです。もともと私が美容関連の仕事をしたり、自分の肌荒れに悩んでいたりする中で、「一人一人の悩みに適したパーソナライズされたサプリメントがあったらいいな」と考えたのが、FUJIMI立ち上げのきっかけでした。

そしてサービスが成長し、スタッフの数も増えて事業拡大する中で、さらにFUJIMIが成長するためにはブランドコンセプトや世界観を明確にする必要があると感じていました。

もちろん、私たち創業者の中にはコンセプトや世界観があるのですが、それを示すビジュアルや言語、指針になる表現がなかったのです。そのため、メンバー間でズレが生まれることも出てきたんです。

小倉:私は2021年からトリコに加わりました。FUJIMIのプロダクトやデザインを見ると、社内にデザイナーやエンジニアが豊富にいて、一つ一つのアウトプットにこだわっている一方、一貫性という意味では課題も感じました。それぞれのクオリティは高いけれど、すべてに通じる「FUJIMIらしさ」を打ち出せれば、さらに成長すると思ったんです。

花房:ちょうどこの頃、ツイッター経由で八木さんと出会って。八木さんのデザインが心地よく、お話をしてもテンポ感や言葉選びに相性のよさを感じました。そこで八木さんにリブランディングを一緒にやりたいと提案しました。そのときお願いしたのは、八木さんが単身でトリコに入って、私たちと協業する形で進行してほしいということでした。

理由は、こういったプロジェクトの場合、外部の大きなチームに依頼するとどうしても動きが重くなると感じていたからでした。ブランドの世界観を決めるにも、間に人を入れずテンポよく八木さんと話しながらできればと思ったんです。

八木:私自身こういう体制は初めてで、デザインだけでなくブランドの定義からプランニング、コピーまで、一人で広い範囲を見るのは不安でした。

ただ、ちょうどお話をいただいた頃、「デザインは広告の制作物などに断片的に使われることが多いものの、本当はそうではなく、企業の資産やブランドとして長期で広く使えるものだ」と考えていて。だからこそ、今までとは違う企業への入り方、関わり方をしてみたかったんですよね。花房さんの提案は、そういう自分の課題感に合ったものでした。

ブランドコアやガイドラインを規定。「選択肢」を提示しながら進める

八木:最初に行ったのは、FUJIMIのコアを定義することでしたよね。花房さんをはじめ、経営陣の方と何度もディスカッションする中で、FUJIMIは「パーソナライズを総合的に提案できるブランドになる」という大きな目標が見えてきたのです。

さらにFUJIMIの強みを考えていくと、クリエイティブとテクノロジーの2つが出てきました。クリエイティブについては、社内にたくさんのデザイナーやエンジニアを抱えていますし、テクノロジーについては、独自のパーソナライズ分析技術があり、それをもとに一人一人に合ったサプリメントを提案しています。こういった強みをもとに「パーソナライズビューティケアブランド」として大きくしていこうと決めました。

ブランドのコア
ブランドのコア

花房:それを表現したのが、今回設定したブランドコンセプトの「美しさを私らしく」です。このコンセプトに付随する「FUJIMIはパーソナライズビューティケアで、世界に選択肢よりも、私らしさを増やしていく」という一文に、ブランドのコアや強みを込めました。

FUJIMIのパーソナライズ分析もアップデートし、より分析精度やUI/UXを高める形に。パーソナライズ分析をもとにした季節ごとのローションやエマルジョンも、リブランディング後の第一弾新商品として3月15日に発売予定です。

UI・UXデザイン
UI・UXデザイン
第一弾新商品の「FUJIMI パーソナライズスキンケア シーズナルローション&エマルジョン」
第一弾新商品の「FUJIMI パーソナライズスキンケア シーズナルローション&エマルジョン」

小倉:そのほか、ブランドの世界観を規定する4つのキーワードやブランドガイドライン、ロゴやブランドカラー、キービジュアルなど、1年近くかけて作り上げていきましたね。

ブランドの世界観を規定する4つのキーワード
ブランドの世界観を規定する4つのキーワード

八木:話し合う中で大切にしていたのは、花房さんの心の中にあるFUJIMIというブランドの世界観を見える化することです。最初にお話ししていただいたように、FUJIMIは花房さん自身の悩みから生まれたブランドです。なので、私がいいと思うものを提案するのではなく、花房さんにいろいろな選択肢を提示して「どれが花房さんの考えるブランドに近いのか」を聞くイメージで進めていきました。

この体制だからこそ、ブランドのコンセプトが商品に反映されていく

八木:通常のブランディングは戦略面やプランニングを考える人と、それをクリエイティブで表現する人が違うので、戦略の完成度が高くても、それをどうクリエイティブで表現するか悩んでしまうことがあります。その点、今回は私が戦略とクリエイティブ、概念と情緒の部分を行ったり来たりしたので、一貫性は強まったと思いました。

小倉:八木さんがトリコに入り込んで一緒に進めた分、今回定義したブランドのコアや世界観がメンバーに染み込みやすかったと思います。疑問が湧いたらすぐ八木さんに聞けるので、やり取りするうちにメンバーの理解が深まっていきました。外部の人に作ってもらうと、得てして最後の完成形だけ現場に降りてきた印象になることもあるので。

花房:こういったリブランディングは、内部のメンバーにその世界観が浸透して、その後、メンバーそれぞれも世界観を反映したアウトプットを続けていくことが大事だと思っています。例えば外部の方にクリエイティブを依頼したとき、その制作物は素晴らしいとしても、それ以降、内部メンバーで作るアウトプットは、その方向性やクオリティを維持できないことも。その結果、単発のブランディングという印象になってしまいます。私たちも過去にその反省があったので、今回のようにメンバー一人一人に世界観が浸透したのは良かったですね。

八木:ブランディングは、会社のメンバー全員が本当の意味で世界観を理解して、それを各自が伝えたり、商品に反映できたりしてこそ、本当の効果が出ると思います。その意味で、今の言葉はありがたいですね。

小倉:1年近くこの体制を取ったことで、メンバーの視座も上がったと思います。デザインやブランドは抽象度が高く、周りへの伝え方や表現の仕方も難しい。みんなが同じ意識でいるようで、ズレてしまうことがあります。

その中で八木さんを見ていると、資料などで考えを共有しながら、ズレの起きないようなコミュニケーションをとってくれて。若いメンバーはそういう手法を見て学ぶ機会が少ないので、すごくよかったなと。リブランディングだけではない会社としての効果もありました。

八木:そんなふうに言っていただけるとすごくうれしいです(笑)。最近は、デザイン経営という言葉を聞く機会が増える中で、とりあえずアートディレクターを呼んだけどうまくいかない……というケースもあるかもしれません。でも今回の形を含め、やり方はいろいろあると感じていただければと思います。

デザインをうまく使うとブランドのレベルは一段も二段も上がる可能性がありますし、Appleやスターバックスはその象徴だと思っています。だからこそ、断片的ではないアートディレクターの関わり方が増えれば、もっと企業に貢献できるかなと。それは企業を元気にし、日本も元気にできると信じています。

花房:FUJIMIについても、今回のリブランディングで明確にした「パーソナライズビューティケアブランド」というコアを強化して、もっとみなさんに寄り添っていけたらと思います。パーソナライズ系商品は増えていますが、トータルビューティを掲げているブランドは他にありません。今回定めたコアを大切にし、FUJIMIを唯一無二のブランドにしていきたいですね。

リブランディング詳細ページ
リブランディング詳細ページ:FUJIMI https://fujimi.me/brand

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