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起業家大国インド。ユニコーン100社超えの秘密

2022/11/10

インドのユニコーン企業は今年、100社を超え、ユニコーンの数で米中に次ぐ世界3位となりました。今回、電通の東成樹(ビジネスプロデュース局)が現地へ行き、インドのスタートアップ界の今を見てきました。

その取材記事をビジネスメディア PIVOTで掲載したところ反響が大きかったことから、電通報でもその一部をご紹介します。


なぜ今、インドなのか?

そもそも私はなぜ今、インドに行ったのでしょうか。 

私は以前から、スタートアップに興味がありました。学生の時、シリコンバレーに取材に行ったり、電通では起業家の方とお仕事をする機会に恵まれました。インドのシリコンバレーといわれるバンガロール(正式名はベンガルール)の話は以前から聞いたことがあり、一度は行ってみたいと思っていました。

そこで、ニュースや人づてに聞くのではなく、インドの活況を「自分の目で」直接、見てやろうという思いから、インドに2週間滞在して起業家や投資家にインタビューをしました。

新旧が交錯するインド

今回、インドにいる日印の起業家たちに話を聞く中で口をそろえて言われたのが「インドの急成長」。新しいサービスが浸透し、「日本よりも進んでいるのではないか?」と思うことも多々ありました。

例えば、街を行き交うオートリキシャ。

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一見、「昔ながらの乗り物」ですが、スマホを使ってUberという「新しいテクノロジー」で呼べてしまう。Uberでよく見るような乗用車のマークが、ここではオートリキシャのアイコンになっています。

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リキシャのアイコンが、ピックアップ場所に近づいてくる。類似サービスにOlaという配車アプリもある。

便利なのは、全く値段の交渉がいらないことです。行き先と乗車場所をアプリで指定したら、あとはリキシャを待つだけ。金額は、アプリが距離に応じて設定してくれます(10-20分の乗車で数百円です)。

インドはスマホ大国。一説によると、「7.5億人がスマートフォンを持つ」といわれています。例えば、たったの10分で日用品が家に届くアプリがあります。

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食品、お菓子、日用品などが10分で届く。blinkitやZeptoがメジャー。

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実際に頼んでみると、なんと、水とチョコレートが20分で届きました。

さらにはこんな昔ながらのお店でも、QRコードで支払いができます。

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デリーにある名店「ボーガルズ」。
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支払いは、PaytmやPhonePe、Google Payなどのアプリがメジャー

それもそのはず。実はインドではWi-Fiの使用料が、日本と比べて格段に安いのです。こちらは、私が空港で買ったインドのAirtelのSIMカード。

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Wi-Fiが毎日1.5GB使えて、1カ月でたったの1000円という価格帯です。
 
インドでは、格安のWi-Fiやスマホの普及を背景に、決済・配送・交通など多様な領域にわたるサービスが展開されています。そして、旧式の生活にスタートアップの画期的なサービスが加わって、新式の生活が始まる。インドでは、新旧の暮らしが交錯していました。


インドの成長の秘密

ではなぜ、インドでスタートアップがここまで成長を遂げているのでしょうか? 

まず大きな理由として、

①優秀なエンジニアが多く
②英語がしゃべれて
③人件費に価格優位性がある

点があげられます。豊富なエンジニア人材を背景に、国外に展開することも、国内14億人のマーケットで戦うこともできます。

では具体的に、どのようなサービスが伸びているのでしょうか? インタビューにあたりバンガロールの起業家たちを紹介してくれたのは、日本発のアグリテックスタートアップ「サグリ」  のインド法人で、最高戦略責任者を務める永田賢(さとし)さんです。サグリは2018年創業のスタートアップで、2019年に経済産業省&JETROの「日印スタートアップハブ」第一号案件としてインドのバンガロールに進出し、衛星データを活用したスマート農業のデータ基盤事業やマイクロファイナンス与信データ提供事業を展開しています。永田さんに連れられて、インドでのスタートアップ育成を促進するNASSCOM(ナスコム、インドの主要IT企業が所属する業界団体) で話を聞きました。

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NASSCOMで起業家の話を聞く。 永田さん(中央)、筆者(右)。
 

NASSCOMディレクターのNavratanさんは、インドでスタートアップが伸びている理由をこう説明してくれました。
 
「インドの90%のビジネスは個人事業主です。小さな農家や、地元のお店など個人店が多い。個人個人がばらばらにビジネスをしている、カオスな“unorganized market”だからこそ、その市場を効率的にまとめあげたサービスが勝利できます。
 
例えばOYO(格安宿泊サービス)は、ルームオーナーのための集客や決済の仕組みを整えましたし、Ola(インド発の、Uberのような配車アプリ)は、個人ドライバーと乗客とのマッチングの仕組みを作り上げました」

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Rocketiumの共同創業者のAnuragさん。オフィスにて。

続けて永田さんから、インドで急成長を遂げるスタートアップとして、Rocketiumの共同創業者Anurag Dwivediさんを紹介されました。
 
Anuragさんは、インドのスタートアップの隆盛の背景には「インドの複雑さ」があるといいます。
 
「インドは地域ごとに文化の違いがあり、人口も巨大で課題がものすごく複雑。だからこそ、その問いを喜んで解こうとする起業家がいる」
 
Rocketiumは、AI技術を用いてウェブのバナー広告のビジュアルなどを、自動生成するサービス。インドには多様な言語、習慣があり、バナー広告を作ったとしても言語、写真、サイズ調整などのカスタマイズ作業が大量に発生します。それをAIにより簡略化するのだといいます。
 
「インドには、非常に難度の高い課題に向き合う起業家たちがいます。その課題を解くために、未来のテクノロジーがインドには生まれるのだと思います」


行って、見て感じた、インドのスタートアップのリアル

ここまで、インド人の視点からスタートアップについてみてきました。一方で、インドに早くから注目し、渡印して活躍する日本人投資家がいました。

インドで投資を行う「Dream Incubator India」「Incubate Fund India」「Beyond Next Ventures」のファウンダーの方々に会いに行き、「なぜ、インドに進出したのか?」「実際に投資をして、見えてきた成果」などを伺いました。

インドに行き、こうして記事を書いて感じたのは、一言ではとらえきれない「動き続けるインド」です。インドで時間を過ごしていると、絶えず変化して、前へ前へと進んでいくインドが体感できます。だからこそ、起業家や投資家からすると、目が離せない国なのでしょう。

コロナ禍で移動が限られる中、私のように取材でインドへ行く人は珍しいため、多くの方から現地ならではの情報を聞くことができました。ここでは書ききれなかった話を、PIVOTというビジネスメディアで連載しています。PIVOTアプリ で「インドで勝て!」で検索いただくか、こちらのウェブ版 からご覧ください。行ってみて初めて分かった、インドスタートアップのリアルをご紹介します。

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