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キャラクター×テクノロジーでCX課題を解決!No.2

ChatGPTで再注目!?企業サイトのチャットボットは「AI×キャラクター」で超進化する!

2023/04/07

キャラクターCX2-1

今、対話型AIの「ChatGPT」の登場により、AIチャットボットに注目が高まってきています。

しかし、企業サイトで見かけるチャットボットは、「よくある質問」に回答するだけの、いわば無機質なものが多いのが現状です。

私たちは、チャットボットには、企業とユーザーのコミュニケーションを豊かにする大きなポテンシャルがあると考えています。そのカギを握るのが、「AI」と「キャラクター」です。

キャラクターCX2-2

今回ご紹介するのは、電通のAIチャットボットチームが新しく開発した商品説明サービス「Chat Staff」と、そこにキャラクターを加えた「キャラクターAIサイト」です。

キャラクターが企業の「顔」となり、テクノロジーを掛け合わせたあらゆる顧客体験をアップデートしていく、そんな無限の可能性について、キャラクターCXチームの糸乘健太郎が、Chat Staffの開発を担当した新井浩健プロデューサーと語り合いました!

チャットボットイメージ
いろんな企業サイトの右下に表示されるようになったチャットボットサービス。しかし、決まったやりとりしかできなかったり、無機質さがどうしても発生することが多い。ここに可能性を見出したのが電通のAI×キャラクターソリューション、Chat Staffだ。
 
<目次>
今のユーザーは「必要な情報だけを効率よく受け取りたい」。しかし……?

電通のAIチャットボットエンジンは「自然言語処理」に強い!

キャラクターをインターフェースにすることで顧客体験が変わる!

AI接客の本質は「1to1マーケティング」を実現すること

今のユーザーは「必要な情報だけを効率よく受け取りたい」。しかし……?

糸乘氏

糸乘:今日は、電通の新サービス「Chat Staff」を開発したAIチャットボットチームの新井さんと、AIチャットボットの可能性について深掘りしていければと思います!

が、その前にまずは読者の皆さんにChat Staffのデモ動画を見ていただきましょう。「葉酸サプリX」という、架空のサプリメントのウェブサイトという設定のデモです。

従来のAIチャットボットと違い、「自由記述でのチャットに対応」「質問の回答に合わせて内容を補足するムービーやスライドを表示」できるChat Staff。企業のウェブサイトに実装することで、ユーザビリティを向上させたり、商品に対するユーザーの貴重な本音を聞くことができるなどのメリットがある。


糸乘:さて、このChat Staffが従来型のチャットボットとどう違うのか、そしてその特長によって企業サイトに対してどう貢献できるのかを伺えればと思います。

新井氏

新井:Chat Staffの特長ですが、大きく分けて以下になります。

  1. ユーザーが今欲する情報を、そのページ内で素早く的確に提供できる
  2. 文字だけでなく、内容を補足する動画やスライドといったビジュアルを表示できる
  3. 決まりきったFAQだけではなく、ユーザーの自由記述(フリーアンサー)を許容した対話設計である

今回のデモ動画では上記の3項目に加えて、糸乘さんのチームにご協力いただき、「葉さん(ようさん)」という葉酸を擬人化したキャラクターが楽しいテイストで応答してくれていますね。

糸乘:キャラクターについては後でお話しするとして、挙げていただいたChat Staffの特長それぞれについて伺います。まず、「ユーザーが今欲する情報を、そのページ内で素早く的確に提供できる」というのは。

新井:一度に大量の情報を提供して、ユーザーに必要な情報を探してもらうのではなく、質問を文章で入力するだけで、テキストでの回答に加えて動画、スライドを表示し、商品への理解を促進する。そういう1画面完結型のソリューションがChat Staffです。

企業が自社の製品やサービスのウェブサイトを作ったときに、たくさんの情報を掲載しますよね。多いときは一つの商品紹介が数十ページにわたっているケースもあります。また、商品紹介のページでは「〇〇って素材はなんで良いの?」みたいな基礎情報から始まっていたりしますが、基本的なことは事前に知っているユーザーもいるじゃないですか。

今の時代、ネットにものすごく情報があふれ返っているからこそ、「限られた時間の中でクイックに欲しい情報をつかみたい」というニーズがあります。Z世代と呼ばれる若い世代や、あるいは年齢が上がってもネットを使いこなしている人ほど、その傾向が強いと思います。

糸乘:「知りたいポイントだけを、今すぐわかりやすく聞きたい」というニーズに対して、チャットボットがページ遷移させることなく、必要な情報を動画やスライドも交えて見せてくれるのがChat Staffであると。

今のユーザーの多くは、動画のようにビジュアルで伝えられるわかりやすい情報を欲していると思います。だから「文字だけでなく、動画やスライドといったビジュアルで伝えてくれる」点が大きいですよね。

新井:PCブラウザだと画面の左側がプレゼンエリア、右側がチャットエリアとなっていて、プレゼンエリアには説明を補足する動画やスライドを表示します。スマートフォンの場合は縦・横両対応で、縦置きの場合は上側がプレゼンエリアになります。

情報をウェブサイト内から探すのではなく、ユーザーに求められた情報をその画面で表示する。「サイトナビゲーションの改善」が、Chat Staffの大きな狙いです。

スマホ画面
スマートフォン(PCと同じく横表示も可能)で表示したところ。値段のような簡単な情報ならテキストで、もっと大きい情報はビジュアルで、とわかりやすい方法で商品の理解促進を図る。
PCブラウザ
PCのウェブブラウザで表示したところ。現在のインターネットで主流の「動画」など、ビジュアル情報を駆使することで、コンパクトかつ最適な情報伝達を設計できる。

糸乘:ユーザーがわざわざ欲しい情報を探しに行くのではなく、その場で質問するだけで、必要な情報がテキスト、動画、スライドといった形で瞬時に提示されるので、ストレスがない設計なんですね。従来のチャットボットとは異なるコンセプトで開発されたChat Staffですが、実際のユーザーの反響はいかがですか?

新井:Chat Staffの実証実験中にユーザーからアンケートを取ったのですが、「動画とテキストチャットの両方があると、より安心して商品を購入しようと思える」といった声が多かったです。そして、従来のサイトナビゲーションよりも商品の理解度が15%、購入意欲が9%向上したというデータもあります。

ユーザーアンケート

糸乘:9%は大きいですね。ちなみに、これは手で質問をタイピングするだけでなく、声で質問もできるのでしょうか?

新井:はい、もちろん音声認識も組み込めます。カスタマイズ次第ですね。さらに、会話のテキストを全て音声で「読み上げる」こともできます。音声でのチャットに対応することで、声でより楽しい雰囲気づくりをしたり、キーボード入力に少しでも抵抗感のあるユーザーに適したものにしたりなど、よりサービスの可能性も広がると思います。

電通のAIチャットボットエンジンは「自然言語処理」に強い!

糸乘:次にもうひとつの大きな特長である自由記述、つまりフリーアンサーについて伺います。Chat Staffで用いているのは、電通のAIチャットボットエンジンである「Kiku-Hana」ですよね。

新井:はい。Kiku-Hanaは電通が2018年にリリースしました。チャットボットエンジンとしての最大の特長は、「自然言語処理」、わかりやすく言うと日本語の理解力にあります。

Chat GPTなどの登場で今後変化があるかもしれませんが、現在企業の中で多く 使われているチャットボットは、あらかじめ用意されたいくつかの選択肢を表示し、「近いものを選んでください」という場合が多いですね。つまりチャットと言いつつ、あまりユーザーとの「対話」にならない。しかしKiku-Hanaは自然言語処理の性能が高いため、ユーザーが自由に記述したメッセージの意味を理解し、適切な答えを返すことができます。これがKiku-Hanaの開発コンセプトです。

そして自由記述ができると、ユーザーの商品に対する素朴な本音、疑問、要望といった、マーケティング上のインサイトを得やすいんです。さらにキャラクターがインターフェースを担うことで、よりユーザーが近い距離で会話してくれる傾向があります。先ほどのアンケートでは「まるで裏側に担当者がいて対応してくれているように感じる」というコメントもありました。

糸乘:「自然言語処理」ということについては、Open AIの「ChatGPT」やMicrosoft Bingなどが話題になっていますね。

新井:はい。企業が顧客とのコミュニケーションにAIチャットボットを使うなら、もちろんそれらの技術を利用できるシーンもありますが、顧客に対して“企業が行いたいコミュニケーション”をきめ細かに設計し、その設計通りに動くことが求められるシーンも多くあると思います。そういう意味では、企業と生活者の顧客接点には、Kiku-Hanaのように細部まで丁寧に設計・活用できるものが求められる。そうした住み分けの中で、片方を選択したり、両方を連携させたりするケースが増えていくのではないでしょうか。

糸乘:そもそも電通がどうしてAIチャットボットを開発するに至ったのでしょうか?

新井:われわれのチームは古くから企業へのチャットボット導入支援をしていたのですが、以前は他社開発のチャットボットシステムを使わせてもらっていたんです。でも、チャットボットに取り組んでいると、どうしてもプラットフォーム自体の改修がしたくなるんですね。

例えば、既存のチャットボットのイメージとは異なるユーザーサービスを、電通らしいクリエイティビティを最大限生かして作りたいとか、あるいは、せっかく会話データが蓄積されるのだから、それをサービスや商品の改善にも生かせるように蓄積したい。そうしたときに、他社サービスだとかゆいところに手が届かないので、自社で開発することになりました。Kiku-Hanaを用いたさまざまなチャットボットについては、別の連載で詳しく紹介しています。

【連載】AIチャットボットから考える、コミュニケーションのこれから
https://dentsu-ho.com/booklets/283
 

キャラクターをインターフェースにすることで顧客体験が変わる!

糸乘:過去のKiku-Hanaの実証実験では、AIとキャラクターを絡めた取り組みも多いですね。UX設計に際して、「キャラクターをインターフェースにする」ことのメリットはなんでしょうか。

新井:一番はやはり、ユーザーと企業(提供するサービス)との距離を縮められることです。顧客エンゲージメントの観点で、キャラクターとAIチャットボットを組み合わせるメリットは大きいでしょう。

私たちはチャットボットを、ユーザーが企業を体験する大切なコンタクトポイントの一つだと位置づけています。最近は多くの企業がサイトにチャットボットを導入していますが、どうしても無機質で機械的な印象をユーザーに与えがちです。他社との差別化も難しくて、どこも同じようなサービスに見えてしまいます。

そこで親近感を持てるキャラクターをインターフェースにすることで、ブランドや商品の好意度、商品理解や購買意欲が向上したり、継続的に接点を持ってくれる可能性が高まります。

また、先ほど述べたように、キャラクターを相手に自由記述でチャットができると、端的な質問だけでなく、ふとした悩みや不満を書いてくれたりするんですね。企業側にとっては貴重なデータを得る機会になると思います。

糸乘:自由記述にすることで、例えばどんなユーザーインサイトが発見できますか?

新井:ある食品の案件では、「友達に紹介したときに、自分に対するインセンティブはないのですか?」とか、あとはその会社の別の食品について「これとこれは合わせて食べても大丈夫ですか?」という質問がありました。あらかじめ企業側が用意した選択肢だけではわからない、企業が思ってもみなかったようなニーズです。これをさらなる商品開発やサービス改善につなげることができます。

糸乘:なるほど!僕らの提供する「キャラクターCX」は、AIチャットボットを含め、ユーザーとのあらゆるコンタクトポイントにキャラクターを配置することで、一貫性のあるCXを提供しようとしています。新井さんは、キャラクターをコンタクトポイントにする上で、電通の強みはどんなところにあると考えていますか?

キャラクターCX画像
キャラクターCXでは、ユーザーと企業のあらゆるコンタクトポイントにキャラクターを配することで、一貫性のあるCXを提供できる。AIチャットボットもその一つだ。

新井:キャラクター開発に当たっては、見た目のデザイン面だけでなく、そのキャラクターの役割設定や会話のトーンなども重要です。自由記述に対応するということは、それに対してどんな内容を返事するかというコミュニケーション設計、シナリオ設計をちゃんとしなきゃいけないんですね。

コピーライターやアートディレクターが参加することで、ただチャットボットのエンジンを提供するだけにとどまらず、利用するユーザーの立場や気持ちに立って、よりよいサービスを提供できるようなコミュニケーション設計に至るまでをワンストップで提供できるのが、電通ならではのセールスポイントです。

われわれは、各クライアントのブランドイメージや、「チャットボットを通じて達成したい目的」に合わせて、チャットボットをカスタマイズしています。そのとき、ちゃんとその企業とブランドのことを理解した上で、ユーザーとのコミュニケーションを設計する必要があるんです。

AI接客の本質は「1to1マーケティング」を実現すること

糸乘:今後、どんなふうにこのソリューションを進化させたいですか?いま以上にキャラクターが表情豊かになるとか、サイト訪問回数に応じてキャラクターの反応が変わるといったことが実現できると面白いなと思うのですが。

新井:利用者心理とテクノロジーを掛け合わせることで、より一層、企業と生活者のコミュニケーションを円滑にできるソリューションに進化させていきたいです。

しゃべるセリフに合わせてキャラクターの表情を変えることはまさにその手段の一つで、テクノロジー的に可能ですが、目的に応じて使い分けること、その対話設定が重要です。

顧客エンゲージメントを高める目的のチャットボットを目指すということであれば、サイト訪問回数に応じてキャラクターの反応が変わるのは、とても面白い取り組みだと思います。

糸乘:自分に合わせた対応をしてもらえると、より親しみを持って会話したくなりますね。時には質問と全然関係ない情報を流してくれても面白いかもしれない(笑)。あとはユーザーの年齢に合わせ、適した情報をレコメンドしてくれたりするといいなと思います。

新井:現在の技術で、PCのカメラを使って顔認識でユーザーの年齢を推計したり、感情を解析したりはできます。カメラがなくても、単純にアンケート的にユーザーに年齢を聞き、それに合わせて対応を変えたり、場合によってはキャラクター自体を複数用意することもできますね。

先ほど、企業が持つ会員データベースとの連携というお話をしましたが、例えば「マイページ」があるサイトの場合、ログインしてもらうことで、そのユーザーに最適化したコミュニケーションもできます。ちなみに、チャットボットが表示した商品情報から、直接サンプル申し込みや商品を購入することも可能です。

糸乘:チャットボットと会話しながら、そのページのまま、コンバージョンまでできるんですね!これもストレスのないサイトナビゲーションになりますね。

新井:そのとき例えば「送り先」や「注文の個数」も、チャットボットとのやり取りの中で聞けてしまいます。よくある「登録フォーム」だと「え、こんなにいろいろ入力しなきゃいけないの?」というハードルの高さがあると思いますが、それをチャットの中で一気通貫で聞いてしまうと、答えてくれやすいんです。

また、いわゆるパーミッション(同意)のとりやすさもあります。「電話での連絡を許諾する」みたいなチェックボックスだと、なかなか同意してもらえませんよね。でもチャットボットでちゃんとコミュニケーションできていて、電話を受けるメリットをプレゼンエリアの動画やスライドで説明されていれば、「ああ、それなら電話してもらってもいいな」というふうに納得してもらいやすいんです。

電通のAIチャットボットソリューション
これはChat Staffとは別の、電通のAIチャットボットソリューション。キャラクターがセリフに合わせて表情を変えたり、逆にユーザーの表情を認識したりできる。

糸乘:なるほど。昔はテレビで多くの人に同じ情報を届けていたのが、最近は1対1のコミュニケーションが大事になってきて、テレビ以前の接客に戻ってきている気がするんです。魚屋さんが常連さんに魚を売るように、AIを絡めると「1対1の接客」を無限に行えるというか。

新井:それはありますね。Chat Staffを始めるときに、あるチームメンバーが「AI対話の本質は、1to1マーケティングである」と言っていて。1to1がマーケティングの一つの理想形として語られるようになって長いですが、これまでは技術的にも効率的にも実現が難しかった。今はようやくそれに近いことができる状態になってきたのかなと思います。

糸乘:AIとの会話を通して企業とユーザーがコミュニケーションできるようになると、まったく従来とは違う顧客体験を実現できそうですね。

新井:AIを組み込んだキャラクターがいることで、話していて楽しかったり、そのキャラクターを好きになっていく。それがイコール、企業の顔として機能するという。コールセンターでも、オペレーターの声色一つで企業の印象って変わっちゃうじゃないですか。

お客様にとって使いやすいチャットボットを追求していくと、理想形はやっぱりドラえもんや鉄腕アトム、あるいは映画「her」のサマンサなんですね。機械と人間が楽しく会話するのが、将来的には当たり前になるのかなと。

糸乘:それは夢が膨らみます!将来的には企業サイトだけでなく、いろんなメディアでAIキャラクターと会話できるようになりそうですよね。例えば今話題のメタバースなどではどうでしょうか?

新井:デジタル空間の中では、Chat Staffのプレゼンエリアを空間に浮かべて表示させられるので、キャラクターが空間上に映像やスライドを出現させて説明しているように振る舞わせることはできますね。

メタバースでなくても、例えば駅のサイネージだったり、あらゆるデジタルの接点にChat Staffを適用できると思います。キャラクターが人間とコミュニケーションすることが当たり前になるほどに、コンタクトポイントの幅がどんどん広がっていくのではないでしょうか。

ユーザビリティが向上する一方で、企業は得られたデータをもとに顧客体験をどんどん改善する、そういう好循環を生み出せればと思います。

糸乘:これからの時代は、AIキャラクターと会話をして情報を得たり、企業とコミュニケーションしていくのが当たり前になったらいいなと勝手に思っています(笑)。今日はありがとうございました!

チャットイラスト

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