まちの幸せを追求する「都市の未来デザイン ユニット」No.2
スマートだけじゃない、“幸せなまち”の未来
2023/05/18
「都市の未来デザイン ユニット」は電通、国内グループ横断で、幸福度の高い未来の都市・地域づくりを支援する専門チームです(ユニットの紹介はこちらから)。
とはいえ、“幸福度の高い都市”とはどういうものなのでしょうか?
私たちはそれを「そこに住み、働く人たちの満足度が高く、また未来に向けて希望や高い可能性が感じられる都市」と定義しています。
スマートシティやサステナビリティ、都市OS、DX化などの“まちづくりキーワード”が前面に出てくる流れの中で、「その変化は本当に望まれている?」「その未来に人は幸せを感じられる?」など、今一度、生活者の視点から考える。“満足度”や“希望”などの人の主観も大切に、生活者の望む未来と都市や地域の進化の未来を重ねていく、そのサポートをしていければと思っています。
今回はそんな私たちの取り組みの一つとして、生活者の目線でありたきまちの未来を見つめ直す「幸福度の高いまち調査」をご紹介します(調査概要はこちら )。
<目次>
▼生活者の視点で見つめ直す「まちの未来」
▼“人生のオーナーシップ”がある都市の未来
▼“つながり”ひとつも、もっと深く
▼まちづくりに“ポジティブサプライズ”を
生活者の視点で見つめ直す「まちの未来」
この調査は、2つの異なるまちの姿を対比し、「未来になっていると思うまち」「未来になっていてほしいと感じるまち」を答えてもらうことで、生活者の視点から幸福な未来のまちの在り方を考えるためのヒントを得ようとする試みです。
なっていると思う未来予測と、なっていてほしい未来への希望を分けて聞くことで、通常の調査などでは見過ごされがちな建前と本音の隙間など、より深い生活者のインサイトをまちづくりに生かしていくきっかけになればと考えています。
“人生のオーナーシップ”がある都市の未来
最初にお見せするのは、なっていてほしいまちの姿TOP10です。
大きな傾向として「長期的な安心」「人生のオーナーシップ」「効率化・利便性」という3つの特徴が見えてきます。面白いのは「自分で決めたい、自由でいたい」という人生のオーナーシップを持ち続けることへのニーズが明確に見えることです。
レコメンドテクノロジーやAIの普及により、社会はどんどん“間違いにくく”なっています。一方で、人が幸福感をもって人生を送るという視点に立った時に、一人一人が自分にとっての正解を自分で決めて人生を歩むことの価値もきちんと認識して、都市の未来をデザインすることがとても重要なのだと気づかされます。
例えば、
- 回答を提供するのではなく、自分にとっての正解を選ぶサポートをするためのDXの在り方
- 高齢になっても、豊かな自己選択の幅を持ち続けられる社会サポート
- 間違えたくないけど、同時に自分の人生のオーナーシップは譲りたくない生活者
- 目的の達成だけではなく、そこまでの過程を含んだ体験のデザイン
これらの視点を持つだけでも、まちづくりが少し変わってくると思いませんか?
“つながり”ひとつも、もっと深く
“地域のつながりが大事”
“デジタルで人と人のつながりを生み出す仕組み”
「つながり」という言葉はまちづくりにおいて最も頻出するキーワードの一つだと思います。国が行った調査でも、日本人は他の国の人に比べ孤独を感じている割合が高く「孤立孤独の解消のために地域のつながりを」という提案をいろいろな場所で目にします。
しかし、いざ実生活で身の回りを見てみると、昔ほど公園に子どもの保護者が集い積極的に友達をつくろうとしているわけでもなく、地域の行事やイベントなどはできるだけ回避したいと感じている人も多そうです。この“孤独は嫌だけど、つながりもちょっとしんどい”の間にあるものは何なのでしょうか?
実際私たちの今回の調査でも、「人と適度な距離感があるまち」への希望が73%なのに対し、「地域住民が協力しあうまち」を望む人は36%にとどまりました。
じゃあ、人はまちにつながりを求めていないのか?
そう簡単に結論付けるのも乱暴すぎる気がします。もう少し踏み込んで調査結果を見ていきましょう。どういうつながりなら望ましい?という視点での設問です。
「価値観が近い人が集うまち」を望む人は56%います。地域住民が協力しあうまちへの要望が36%だったのに比べると、大きく数値が伸びています。また、若い世代は同世代の集まりを求める人も多い一方、高齢者は幅広い世代との交流を求めるなど、世代によって求めるつながりの違いも見えてきます。
この調査から見えてくるのは「外圧的なつながりへの拒否感」と、「価値観やライフステージに合わせた“新しいつながり方”」が求められているということなのかもしれません。
ただつながるだけではなく、「心地よいつながり方をデザインする」ことが重要でしょう。
例えば、
- 地元のさまざまなスポーツチーム×デジタルテクノロジーで地域の人をつなぐ
- どこに住んでいても好きな時間にリモートで参加できる、時間と場所を制約されない自治会
- 地域の中でお互いのできることで、安心して人が助けあう自治体主導型スキルバンク
といった取り組みを通して、価値観による能動的なつながりや、負荷の低い新しいつながり方を提供できるかもしれません。
デジタル技術を活用することで、地域や世代を越えて、もっと柔軟で多様なつながり方をデザインすることも可能になってきました。またリモートワークや移住など、人の住居との関わり方も変化する中で、つながりひとつももっと深く、生活者の目線でリアリティをもって見直してみることには、大きな価値があると思います。
まちづくりに“ポジティブサプライズ”を
最後に今回の調査の特徴である「なっているだろうと予測するまちの未来」と「なっていてほしいと望む街の未来」のギャップに着目してみたいと思います。
上の図で紹介する3つのまちの姿は「なっていてほしいけど、なっているとは思えない」というギャップが大きい項目の例を抜き出したものです。いずれも「なっていてほしい」と「なっているだろう」の間に約30%もの差があります。
望んではいるけど、本音では少しあきらめてしまっている。言い方をかえると“実現すると生活者にとってポジティブなサプライズがある未来の姿”です。
例えば、まちづくりの優先順位に生活者の「期待」と「予測」のギャップを視点として取り入れてみる。生活者視点でまちづくりを捉えなおし、実現して当然だと思われる変化よりも、生活者にとってポジティブサプライズとなる未来の変化に力を入れる。
より「喜びの大きい変化」に着目してプランニングすることで、同じ変化の量でも、より幸福度の高いまちづくりが可能になるかもしれません。
いかがだったでしょうか?
“人”基点でまちづくりを見てみると、また違った発見がありませんか?
独自の目線でのリサーチや世の中への深い洞察を通し、変化し続ける生活者のインサイトをつかみ続け、幸福度の高いまちづくりへ反映していく。「都市の未来デザイン ユニット」では、これからも私たちならではの視点でまちづくりの情報を提供していきます。都市・まちづくりについて検討中の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。