為末大の「緩急自在」No.35
アスリートブレーンズ為末大の「緩急自在」vol.35
2023/06/22
為末大さんに「いま、気になっていること」について、フリーに語っていただく連載インタビューコラム。唯一、設定したテーマは「自律とは何か、寛容さとは何か」。謎の「聞き手」からのムチャ振りに為末さんが、あれこれ「気になること」を語ってくれます。さてさて。今回は、どんな話が飛び出すことやら……。乞う、ご期待。
──「呼吸とは、なんだ?」というテーマでお話を伺ってまいりましたが、そのテーマでのインタビューは今回がラストとなります。よろしくお願いいたします。
為末:こちらこそ、よろしくお願いいたします。
──いささか強引なのですが、「呼吸」というテーマでのラストは「企業も、呼吸しているのではないか?」というお話を、ビジネスパーソンとしての為末さんに伺いたいと思います。
為末:毎回、強引な展開だなあ。(笑)
──「風通しのいい企業」とか、その逆で「息苦しい会議」とか、ありますよね?あれも一種の呼吸だと思うんです。
為末:アスリート出身の僕が思うのは、少なくとも人が老いると「脈があがらなく」なります。自動車でいうところのタコメーターってお分かりになります?ブイーン!というトルクを示すメーター。老いてくると、あれがあがらなくなる。若いときには190ぐらいまで上げられた脈が、175までしかあがらなくなります。
──それは、僕のようなサラリーマンでも分かるなあ。
為末:「渋滞」にまつわる本を以前に読んだのですが、会社のペースやリズムが滞るのは、ほんの数人、あるいはたった一人がボトルネックになっているそうなんです。
──「硬直化」みたいなことですね?
為末:そうです。アメリカ企業のあるプロジェクトのリーダーが、インドへ出張に行ったとします。結構な、時差です。その瞬間、そのプロジェクトが何時間も止まってしまう、といったようなイメージです。
──すごく分かります。それを防ぐには、どうしたらいいんでしょうか?阿吽(あうん)の呼吸だけでは、どうにもなりませんよね?
為末:結局、意思決定が集約されているからボトルネックにもなりえるわけで、権限移譲しかないだろうと思います。あとは「余白」ですかね。本当に最適な形になっていたら、少しのボトルネックが全体を一気に止めてしまいます。余白があるとそれを吸収できる。
──分かります、分かります。
為末:アスリート用語で置き換えると「流れ」を作るということだと思います。滞っている部分はどこか見つけて、そこを流れやすくする。または、そもそも部分的な滞りではなくて全体の構造問題だとしたら、一回流れを止めてもう一度立て直すことかなと。もちろんそれには勇気がいります。試合をキャンセルしたり、トレーニングを休んだりすることは不安もありますし、チームにも迷惑がかかるかもしれませんが、いったん距離を置いてから新たな流れを作り直すほうがうまくいくことも多いですね。
──今回の「呼吸」というテーマでいうと、窓を開けてゆっくりと深呼吸してみましょうよ、みたいなことですね。
為末:呼吸は「流れ」と密接に関係していると思います。血流の流れ、体の流れ、時代の流れ、チャンスの流れ……などなど。
(聞き手:ウェブ電通報編集部)
アスリートブレーンズ プロデュースチーム 荒堀より
呼吸の第3弾。「余白をいかに作っておくか」というお話がありました。例えば、新しいプロジェクトに取り組む際のチーム作りにおいて、いろいろとガチガチに決めるのではなく、各々の役割は決めつつも最後はチームとして成功するためにみんなで取り組むというような関係。もしかしたら、そんなチームのほうが、途中、何か問題が起きてもいったん立ち止まって深呼吸をして、「流れ」に従い対処することで、結果的に成功への近道となるかもしれない。為末さんのアスリートとしての経験に基づくお話を聞いていてそう感じました。仕事のチーム作りや、職場環境作りに対しても、アスリートならではの経験を基にした私たちアスリートブレーンズ。さまざまな場面で、ぜひ、ご活用ください。
アスリートブレーンズプロデュースチーム 電通/日比昭道(3CRP)・中西夏奈子(BXCC)・荒堀源太(ラテ局)
為末大さんを中心に展開している「アスリートブレーンズ」。
アスリートが培ったナレッジで、世の中(企業・社会)の課題解決につなげるチームの詳細については、こちら。