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中野の街が一つに!エンターテインメントがつなげる、未来へのまちづくり

渡邊 武雄

渡邊 武雄

株式会社 中野サンプラザ

五箇 孝慎

五箇 孝慎

野村不動産 株式会社

川合 紳二郎

川合 紳二郎

株式会社 電通

北川 公也

北川 公也

株式会社 電通

紅村 正雄

紅村 正雄

株式会社 電通

2023年5月からの約2カ月間、中野区のアイコンとして50年間に渡り愛されてきた中野サンプラザの最後を飾る大型音楽イベント「さよなら中野サンプラザ音楽祭」が開催。

中野音楽祭#2_ポスター

200人以上のアーティストが参加し、計37公演を披露。開催中は中野区役所や同駅を囲む4つの商店街とともに大々的なPRを実施。アーティストや音楽ファンはもとより、街全体を巻き込み、エンターテインメントとまちづくりを融合させ、約6万人が訪れたイベントはどのように企画され、実現へと至ったのか。

前回に引き続き、同音楽祭の総合プロデュースを担当した電通の川合紳二郎氏、北川公也(ともや)氏、紅村正雄氏、そして株式会社中野サンプラザ執行役員 管理本部長の渡邊武雄氏、2029年に開業予定の「(仮称)NAKANOサンプラザシティ」再開発事業の代表幹事会社である野村不動産中野プロジェクト推進部の五箇孝慎(ごか たかのり)氏が、その舞台裏とエンターテインメントを基点とした街づくりの可能性について語り合いました。

中野音楽祭#2_メインカット(集合)
写真左から電通・紅村正雄氏、野村不動産・五箇孝慎氏、株式会社中野サンプラザ・渡邊武雄氏、電通・川合紳二郎氏、同・北川公也氏

4つ商店街が初めてタッグを組んでPR!施設と街との距離を縮めるイベントに

北川:今回のイベントは「街と一緒に」というところも重要なポイントでした。商店街への協力の依頼は、紅村さんが野村不動産さんと一緒に回っていましたが、実際に話をしてみて、どんなふうに感じていましたか?

五箇:それまでに皆さんと築いていた関係性から、商店街の方々にはきっと理解してもらえるし、みんなでやろうと言ってくれるような気が当初からしていました。新しくできる「(仮称)NAKANOサンプラザシティ」や新たな街に期待しようとしてくださっていたからこそ、イベントにも協力してくれるような気がしていましたね。

紅村:今回、中野駅付近の4つの商店街をジャックさせていただく形でいろんなOOHを出させてもらったのですが、皆さん本当に協力的でした。弊社のクリエイティブチームがつくった、サンプラザを模したアートグラフィックや、「さよなら三角、また会う日まで」「全日、神回。」など、30以上のコピーなどを面白がってくださり、とても好意的に受け止めてくれました。クリエイティブのチカラが、すごく大きかったことを感じています。

中野音楽祭#2_街なかOOH
中野の街中に掲げられた音楽祭の告知。左上は中野区役所。

紅村:中野区長がおっしゃるには、中野サンプラザと4商店街で一緒に何かをするのは初めてだったそうです。商店街としても、最後の中野サンプラザを応援したいという想いから、できることはないかと相談に乗ってくださった。音楽祭の半券を持って来店したら少し割引してくださるとか、開催期間中に中野サンモール商店街さんが自主的に出演アーティストの音楽を流したりしてくれて、評判も良かったようです。アーティスト本人にだけでなく、街や周辺にも経済波及効果が出る取り組みは、地元の方々にとってもしたいと考えていたことと一致したのだと思います。

中野音楽祭#2_紅村氏ソロカット
電通・紅村正雄氏

川合:エンターテインメントを軸に、街が一体となって盛り上がるような好循環をつくっていけたら、すごく未来がありそうですよね。今回、地元の方への還元という意味では、区民の方をほぼ全公演へ数人ずつご招待し、ご来場いただきました。こういった取り組みも、街と(株)中野サンプラザさん、中野区さん、アーティストの皆さんなど、多くのプレーヤーの協力のもとやったからできたことです。

紅村:商店街の方からすると、中野サンプラザは食事や成人式で行く場所で、コンサートには行ったことがないという声も多かったんです。最後にその機会をもらえて、ライブに参加できて楽しかったし、いい思い出になったという声もたくさんいただけました。そうした形で施設と街の方たちの距離を少しでも縮めることができたのは、一つの成果だったと思います。

200人超の出演アーティストが集結し「呼んでくれてありがとう」

渡邊:北川さんがアーティスト側と交渉を進めるにあたっては、どんな感触でしたか?

北川:初のイベントなので基盤もないですし、最初の段階では他に誰が出るかもわからない状態でオファーしに行くので、不安はありました。けれど、そんな中でも「出演します」と言ってくださったアーティストがたくさんいて、それはやはり、中野サンプラザへの愛着や思い入れがあったからこそだと思います。どんなイベントになるのかは見えなくても、中野サンプラザの最後を飾るなら出ようと思ってくださった方の協力があって、200人超が集まったんじゃないでしょうか。

渡邊:こちら側からすると、ほぼ全てのアーティストが「呼んでくれてありがとう」と言ってくださったことに感動でした。ステージ上でも中野サンプラザへの気持ちやこれまでの思い出を語ってくれたり、セットリストにもアマチュア時代も含めて中野サンプラザにゆかりのある曲を入れてくれた。その特別感がファンの方にとってもうれしい様子でしたし、閉館すること自体がイベントを通して認知される、すごくいい音楽祭になっていました。

中野音楽祭#2_渡邊氏ソロカット
株式会社中野サンプラザ・渡邊武雄氏

北川:最終的に北島三郎さん、五木ひろしさんといった演歌・歌謡界の方々、サブカルの街ならではのアニメ・アニソンカルチャーの方、奥田民生さん、ストレイテナーさんのようなロックの方など、音楽ジャンル関係なく幅広いアーティストのみなさまにご出演いただけました。さらに「東京スカパラダイスオーケストラ×クリープハイプ」、「サンボマスター×銀杏BOYZ」といったここでしか見られない対バンライブもありました。中には、お客さんがみんな泣いてるようなステージもありましたよね。

今回のキャッチコピーは「このフィナーレは、未来へのファンファーレ」。未来につないでいくうえでのイベントという観点も大切なテーマとしてある中で、この音楽祭をきっかけに初めて訪れたお客さんもたくさんいらっしゃったのは良かったと感じています。

中野音楽祭#2_北川氏ソロカット
電通・北川公也氏

ホールとエンターテインメントを基点とした、新たなまちづくりの可能性

北川:イベントは7月2日にフィナーレを迎え、6年後、2029年の新たな施設「(仮称)NAKANOサンプラザシティ」開業に向かっていきます。今回50年の歴史を誇るホールの「さよなら」にふさわしい音楽祭が開催でき、エンターテイメントを中心としたまちづくりで、新生サンプラザへの発火点になったのではないでしょうか。

最後に、今後中野という街や、ホールを中心とした新たなNAKANOサンプラザの開発・運営に向けての展望、またエンターテインメントを基点にしたまちづくりで重要と思われるものをお聞かせください。

五箇:今回の音楽祭を通じて、「街と一体になるホール」への実感を持つことができました。新しい施設においてもそれを具現化していかないといけない気持ちがありますね。

中野サンプラザでは、ホールが完全に建物の中に配置されていて、誰のライブが行われているのかも外からは全くわからない状態でした。そのため、新たなNAKANOサンプラザでは、今回のようにホールの存在が中野の街全体に“にじみ出す”ような取り組みをしていきたい。メインはホールですが、その規模でライブをする方以外にも、例えばデッキを「ヘブンアーティスト」(東京都が実施する大道芸人公認制度、およびそのライセンス保持者)などに使ってもらうとか、時にはホールも巻き込み、街区全体のイベントとして実施するなど、何かしら「発信」の拠点となる施設にしていければと。その意味では、電通とは、ホールの運営だけではなく、引き続き一緒にエリアマネジメントを推進していけるといいですね。

中野音楽祭#2_五箇氏ソロカット
野村不動産・五箇孝慎氏

紅村:ホールが街に“にじみ出す”取り組みは、そうした施設が中野の駅前にある重要性を今後も引き継いでいくために、とても大切な検討課題だと思います。コンテンツもそうですし、施設のハードもどうしていくと良いのか、引き続き考えていく必要がありますね。

川合:やはり、ホールとエンターテインメントが、街に貢献していける取り組みを進めたいですよね。紅村くんも話していたように、コンサートに来るお客さんがただステージを見て終わるのではなく、その前後の時間に街で遊んだり、ご飯を食べたり、飲んでいくようになれば、ホールがある意義も大きく変わります。

中野音楽祭#2_川合氏ソロカット
電通・川合紳二郎氏(手前)

北川:今回出演者の中で、実は以前中野に住んでいた方がとても多かったんです。それはたぶん偶然ではなく、多彩な方が集まって独自の文化が育まれてきた街だから、アーティストや芸人さんも多くいたのだと思います。これは中野に限らずですが、これからのまちづくりやイベントの企画では、その地域ならではのカルチャーや土地自体に愛着を持つ人が集まり、そこからにぎわいやムーブメントを波及させていくような考え方が重要だと思います。

紅村:加えて、この企画の背景には街のアイコンだった施設が閉館し、一時的に来街者が減ってしまうだろうといった、地域の課題もありました。音楽祭を開催することで一つのレガシーのようなものを残し、新しいサンプラザでもそれを引き継いでホールを核としたまちづくりをしていくと発信できた点も良かったと思っています。他の土地で取り組む時も、やはり地域ごとの社会課題を解決していく視点がテーマとして重要だと感じています。

川合:今回の音楽祭も、まちづくりの観点から考えていったことがポイントでした。街を訪れた多くの方が、街のOOHの様子を「未来へのファンファーレっていいよね」とSNSに載せてくれたりして広がっていったのを見ると、「エンターテインメントは新たなまちづくりの基点となる」ことの実感が持てました。また、7月2日の最終日には多くの区民の方々が、自然とサンプラザの前に集合され、別れを惜しんでおられました。

その様子を見て、街づくりの起点となる集客施設に長期にわたってコミットするには、やはり経済効果視点での地元との連携がとても大切であり、一個人を超えた企業としての責任を伴う重要なプロジェクトだと感じています。今後も「街」と「ホール」と「エンターテインメント」が一つになっていけるような仕組みをつくって、人が集まり、その方々と共創することで、好循環を生み出せる取り組みを進めていきたいですね。

中野音楽祭#2_集合カット

「さよなら中野サンプラザ音楽祭」開催概要

●開催期間:2023年5月~2023年7月2日
●開催場所:中野サンプラザ
●公演数、総参加アーティスト:37公演、200人以上
●来場者数:約6万人 
●発信:Twitter公式インプレッション700万件以上、トレンド入りやアーティストから投稿多数。テレビや新聞など多くのメディアに掲載。

 

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著者

渡邊 武雄

渡邊 武雄

株式会社 中野サンプラザ

1991年成城大学経済学部を卒業後、全日空エンタプライズ株式会社へ入社、同社が運営する東京全日空ホテル、富山全日空ホテルなどを経て2005年に株式会社中野サンプラザへ入社。調達課長、ホール・ロビーサービス課長などを歴任後、2014年管理本部次長、2015年管理本部長、同年執行役員管理本部長となり現在に至る。

五箇 孝慎

五箇 孝慎

野村不動産 株式会社

2021年に中野区が公募した中野駅新北口駅前エリア拠点施設整備事業の代表事業者に野村不動産が選定後、担当者として中野サンプラザ及び中野区庁舎を含む再開発事業を推進中。新しい拠点施設「(仮称)NAKANOサンプラザシティ」に、最大収容7000人のホールに加え、オフィス、住宅、店舗、ホテル等を整備。『「Culture Driven City NAKANO 100」~文化を原動力とした中野100年のまちづくり~』をコンセプトに掲げて、地元と共に事業に取り組んでいる。

川合 紳二郎

川合 紳二郎

株式会社 電通

アリーナ事業開発、音楽IPのプロデュース、また、映画のプロデュース、洋画アニメ作品の吹替版プロデュース等に従事。手掛けた代表的なプロデュースコンテンツは、邦画「余命10年」、洋画アニメ「SING1」「怪盗グルー・ミニオン」、ライブイベント「ANIMAX MUSIX」など。現在は、アリーナ事業「中野再開発プロジェクト」を中心に、ライブエンタメ(音楽)、アリーナ事業、映像事業などのそれぞれの強みを掛け合わせた、電通独自のコンテンツビジネスの拡大に取り組んでいる。

北川 公也

北川 公也

株式会社 電通

入社以来、映画・音楽・キャラクター・YouTube等を中心に広くコンテンツビジネス領域での企画/プロデュース業務に従事。これまでに携わった代表的なプロジェクトは映画「余命10年」、「さよなら中野サンプラザ音楽祭」。また、企業課題に対してコンテンツIPを起点としたソリューション提供を担当。さらにメディア・エンタメ領域でのDX推進やエンタメベンチャー企業への投資・事業推進の経験も生かしながら、コンテンツビジネスを通じた社会課題の解決を目指している。

紅村 正雄

紅村 正雄

株式会社 電通

数々のPFI事業に事業者として参画。有明アリーナ管理運営事業、横浜文化体育館再整備事業等、数多くのアリーナ事業において事業計画策定、融資契約からアリーナ運営の実務までを経験。アリーナ運営を通し自治体と連携した音楽興行イベントとして、「さよなら中野サンプラザ音楽祭」のプロデューサーを担当。ソフトからハードまでアリーナ運営全般を担うスペシャリスト。

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