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サステナビリティ経営を支える次世代顧客群「サステナブルカスタマー」No.1

購入者からパートナーへ。「サステナブルカスタマー」がビジネスを変える!

2023/10/03

サステナブルカスタマー

持続可能な社会の実現に向けて、あらゆるビジネスにおいて“サステナブル”というキーワードが注目されています。

しかし、多くの企業を悩ませているのが、「サステナブルな社会に向けての社会貢献活動と、事業性をどうやって両立させるのか?」という課題です。

本記事では、電通の独自調査から判明したデータとともに、企業がアプローチすべき新たな顧客群「サステナブルカスタマー」という概念を紹介します。

企業と生活者による「回収・リサイクル活動」を企業のビジネス成長に直結させる、新たなマーケティングフレームワークとはどんなものなのか?電通サステナビリティコンサルティング室の堀田峰布子が迫ります!

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<目次>
ロイヤルカスタマーの次の概念。「サステナブルカスタマー」とは何か?

「動脈産業」と「静脈産業」をつなぐ!サステナブルカスタマーの存在

生活者の2割はすでに「サステナブルカスタマー」である

モノと情報が循環するプラットフォームの構築へ!

生活者はサーキュラーエコノミーを一緒に回す“パートナー”だ

ロイヤルカスタマーの次の概念。「サステナブルカスタマー」とは何か?

多くの企業では、環境活動、寄付活動、ボランティアといった社会貢献活動を、CSR(企業の社会的責任)の一環として実施しています。そのほとんどは、事業性やビジネス成長とは切り離された“プラスα”の活動とみなされています。

しかし、現在注目されているサステナブル経営とは、本来、

事業や経営戦略そのものの中に、社会貢献活動を含めたサステナビリティの要素を取り込む

という考え方です。

ESG(環境、社会、ガバナンス)に配慮することを、単なる社会貢献と捉えず、大きな時間軸の中で、自社のビジネスを成長させるためのドライバーとして考えなければ、本当の意味でのサステナブルな取り組みにはなり得ません。

その鍵を握ると私が考えているのが、今回ご紹介する「サステナブルカスタマー」という顧客群です。

現在、多くの企業が「ロイヤルカスタマー」を重視したマーケティングを行っています。ロイヤルカスタマーとは、企業やブランドに愛着を持ち、長期的に商品やサービスの売り上げを支え、経営に安定をもたらす非常に重要な顧客群です。

サステナブルカスタマーは、いってみればロイヤルカスタマーの「次」に位置づけられる概念です。

このたび私たちは、サステナブル経営を支える顧客とはどういった人たちなのかを探るため、生活者1200人を対象に、「サステナブルカスタマー調査」を実施しました。

※調査概要は記事末尾を参照
これまでの顧客階層

上図のピラミッドが、よく用いられているマーケティングフレームワークです。すなわち、大量の見込み客に広告などを用いてアプローチし、その中から新規顧客を獲得し、その一部が繰り返し購入してくれる優良顧客となり、最終的には企業やブランドに共感して支えてくれるロイヤルカスタマーになるというものです。

これは大量の顧客に商品を売って終わるのではなく、1人のカスタマーが長期的に繰り返し商品やサービスを利用してくれることによる「LTV(ライフタイムバリュー)」の向上を目指す考え方です。

今回、そうした企業やブランドへのロイヤルティの高さを示す「購入継続性」軸に加え、昨今の情勢を踏まえて生活者のサステナビリティ意識とその活動への参加を示す一例として、「回収・リサイクル参加」軸で、顧客セグメントを体系化してみました。以下の4象限のグラフです。

SX時代の顧客セグメント
  • 無関心層
  • ロイヤルカスタマー層
  • グリーンカスタマー層
  • サステナブルカスタマー層

ここでは継続購入をしてくれるのが「ロイヤルカスタマー」、回収・リサイクルのみに参加するのが「グリーンカスタマー」と定義しています。

注目したいのは、「継続購入かつ、回収・リサイクルを行う顧客群」です。私たちは、これらの顧客を次世代の新たな顧客群「サステナブルカスタマー」として位置づけました。

このサステナブルカスタマーを増やしていくことで、企業のビジネスモデルをSX(=サステナビリティトランスフォーメーション)し、サステナブル経営を加速させられる可能性があります。そして、そのためには、マーケティングフレーム自体もSXしていく必要があると考えます。

「動脈産業」と「静脈産業」をつなぐ!サステナブルカスタマーの存在

従来の企業は、「製品をつくって生活者に販売する」ことが企業活動の領域でした。これに対し、サステナブル経営では、製造して売るだけでなく、「回収・再利用する」ことまでが企業活動の範囲となります。

目指すのは、いわゆるサーキュラー・エコノミー(循環型経済)の実現です。

サーキュラー・エコノミーにおいては、商品をつくる製造業者や、それを生活者に販売する流通・小売業者を「動脈産業」、使い終わったものを回収・リサイクルする企業を「静脈産業」と捉えます。

サーキュラーエコノミー

この2つの産業間の連携も重要ですが、「販売」した後に「回収」するという循環の輪を回すためには、産業や企業側の努力だけではどうにもなりません。購入した商品を、使用後に静脈産業へとリサイクルに出すという、顧客の行動(参加)が必要です。

この循環の輪を回す重要な役割を担う顧客が、動脈と静脈をつなぐサステナブルカスタマーです。

サーキュラーエコノミーとサステナブルカスタマー

すでに動脈産業である製造業や流通・小売業においては、スーパーやドラッグストアの店頭に回収ボックスを設置するなど、サーキュラー・エコノミーへの取り組みを行っている企業が多いと思います。しかしここには課題があります。大まかにいうと以下の三つです。

①コストの課題

回収やリサイクルのコストが大きくかかっている。

②収益化の課題

回収・リサイクルが「次の購買」などにつながっておらず、収益化ができていない。

③回収網と生活者参加の課題

生活者からの回収網の構築ができておらず、回収量も十分ではない。また、回収に関するデータが全く取得できていない。

 

さて、こうした課題を解決するためには、サステナブルカスタマーに対してどういうアプローチをすれば良いのでしょうか?

生活者の2割はすでに「サステナブルカスタマー」である

ここでは、本当にサステナブルカスタマーをビジネスターゲットと捉えてよいのかを検討していきます。そもそも生活者全体の中でサステナブルカスタマーは、何%ぐらい存在しているのでしょうか?

今回、生活者からの回答を基に先ほどの4つのセグメント(顧客層)に分類したところ、サステナブルカスタマーに該当する生活者は、全体の22%でした。

各セグメントのボリューム

ロイヤルカスタマー(20%)やグリーンカスタマー(19%)よりも、サステナブルカスタマー(22%)の方が多く存在しています。生活者の2割はすでにサステナブルカスタマーなのです。これは十分にマーケティングの対象と捉えられるボリュームです。

また、性・年代別で見ると、10代におけるサステナブルカスタマーの割合は非常に高くなっています。「若い世代はSDGsや持続可能な開発のための教育などの影響もあり、サステナブルカスタマーである割合が高いだろう」と予想していた通りです。一方で、他のどの世代を見てもおおむね2割はサステナブルカスタマーが存在していることも注目に値します。

サステナブルカスタマーの内訳

次に、サステナブルカスタマーがどんな人たちなのか見ていきます。

今回の調査における大きなファインディングスが、「価格が高くても環境に良い商品を選ぶ」という回答者の多さです。とりわけサステナブルカスタマーにおいては、他の顧客セグメントと比較しても突出して、価格よりも「サステナブルであること」を重視していることが分かりました。

価格が高くても環境に良いものを選ぶ?

これは非常に示唆的な結果です。多くの企業が考えているよりも、生活者は「サステナブルな商品」を選ぶ傾向にあるのではないでしょうか。

世界的な原料や燃料価格の値上がりもありますし、再生プラスチックやバイオプラスチックを取り入れた製品やパッケージなどへ“サステナブルシフト”をしていくことを考えると、当面は商品の単価はどうしても高くなりがちです。

しかし、その社会的意味をきちんと理解してくれるサステナブルカスタマーをターゲット層としてマーケティングに取り入れれば、安定的な事業性の確保が見込めるはずです。

また、現在は無関心層、ロイヤルカスタマー、グリーンカスタマーに属する生活者をサステナブルカスタマーにしていくような、ナーチャリング施策も重要になってくるでしょう。

モノと情報が循環するプラットフォームの構築へ!

今もすでに多くの企業が、なんらかの形で回収・リサイクル活動を行っています。しかし、冒頭でお話しした通り、「事業性や事業の成長とは切り離された、プラスαの社会貢献活動」にとどまっているケースが大半です。

そこで、電通では現在、サステナブルカスタマーの力を借りて、「回収・リサイクル」と「販促」を合わせた仕組みの「循環プラットフォーム」の構築を進めています。

私たちが目指すのは、「モノの循環」と「情報の循環」によって、生活者が参加しやすい社会貢献インフラを構築することです。

サーキュラーエコノミー

現在実証実験を進めている循環プラットフォームでは、スマホアプリを用いることで、使用済み製品やパッケージを、店舗に設けられた回収ボックスに投入するように誘導します。

循環プラットフォーム

現在、企業が実施している店頭での回収・再利用はアナログな手法がメインであり、データ連携や分析が十分にできていないという課題があります。この回収・再利用の仕組みをスマホアプリによってDXすることで、さまざまな可能性が見えてきます。

先ほどの企業の課題を解決するために、循環プラットフォームは以下を意識して設計しています。

〈循環プラットフォームのポイント〉

  • プラットフォーム型で多数の企業が“相乗り”することでコストダウンを図ること。
  • 「回収」のCX(顧客体験)を工夫することで、参加を促し「次の購買」に結びつけること。
  • 「回収」のデータを取得し、「購買」データと併せてマーケティングに活用すること。
  • サステナブルカスタマーのナーチャリングを行い、その拡大を図ること。

特に重要なのは「回収のCX設計」です。生活者が積極的かつ持続的に“循環の輪”を回してくれるような、魅力的なCXを提供する必要があります。

例えば、生活者がシャンプーなどの商品を購入し、空になった容器を店舗の回収ボックスに投入する前に、スマホアプリを使ってJANコード(バーコード)を読み取ります。システム上で、容器が回収されたことが確認されると、その場でその投入されたシャンプーのクーポンが発行され、そのまま店舗で利用が可能に。このように、使い終わったものを回収するとそのクーポンが出ることで、「なくなったから、買おう」という自然な購買意識を後押しし、継続購入につなげる導線をつくることができます。

同じ商品だけでなく、新商品や関連商品、上位ブランドのクーポンを発行することで、アップセルやクロスセルを喚起したり、ポイントを付与するなど、生活者の回収物や回収履歴に合わせてこうしたインセンティブをカスタマイズ可能です。

しかしクーポンやポイントの発行には原資が必要で、それ一辺倒では長期的に企業の負担になります。そこで注目してほしいのが「非金銭的インセンティブ」によるCX設計です。

〈金銭的インセンティブ〉

  • 回収活動に参加することで、ポイントやクーポンがもらえる

〈非金銭的インセンティブ〉

  • 回収量、回収結果を教えてもらえる
  • CO2削減量を教えてもらえる
  • 自分のこれまでのリサイクル量や、全国で何位ぐらいに位置するかを教えてもらえる

今回の調査では、「どういったサービスがあれば、回収・リサイクル活動に参加するか?」という質問に対して興味深い傾向が見られました。全体傾向としてクーポンやポイントなどの「金銭的インセンティブ」が欲しいという回答が上位であるものの、サステナブルカスタマーにおいては、「非金銭的インセンティブ」が参加への動機になるという回答が、他のセグメントよりも高くなっています。

クーポンやポイントに頼らなくてもサステナブルカスタマーにリサイクル参加してもらえるようになれば、企業にとっても回収やリサイクル活動が“持続可能な取り組み”になるはずです。

そして生活者が日常的にアプリを使い、「モノ(商品)」と「情報(データ)」がプラットフォーム上で循環するようになれば、あらゆるコンタクトポイントでデータの取得ができます。例えば、循環プラットフォーム上でのサステナブルカスタマーへのターゲティング広告配信も可能になるでしょう。

このように、回収・リサイクルの活動をDXし、販促につなげることで、新たなビジネスチャンスが見えてくるのです。企業の側も、そもそも商品開発の段階から、サーキュラー・エコノミーを前提としたものをつくろうと、意識が変わってくるはずです。

生活者はサーキュラーエコノミーを一緒に回す“パートナー”だ!

サステナブル経営を考える上で、企業がサステナブルカスタマーと新しい関係性を築いていくことは、とても重要な意味を持ちます。

これまではただの購入者だった顧客を、企業のパーパスやサステナビリティ戦略に共感し、一緒にサーキュラー・エコノミーを回してくれる“パートナー”と捉えるのです。

そのためには、生活者に対し、自社のパーパスやサステナビリティ戦略を分かりやすく伝え共感してもらうことが重要です。

自分たちはどのようなサステナビリティを目指しているのか、そのためにどうやって取り組んでいきたいのか。

そして、「だからあなたの力が必要です」と、パートナーとして協働したいことを伝えていく。

この説明と共感がなければ、持続的なパートナー関係を築くことは難しいでしょう。

電通では、この循環プラットフォームの実現に向け、実証実験などの取り組みを進めています。ご興味のある方はぜひご注目ください!

【調査概要】
調査名:「サステナブルカスタマー調査」
調査実施主体:電通プロモーションプラス
対象エリア:日本全国
対象者条件:15~79歳の男女
サンプル数:1200
調査手法:インターネット調査
調査期間:2023年2月8日~2月10日
調査機関:電通マクロミルインサイト
 
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広報リリース:
「回収・リサイクル」と「販促」を合わせた仕組みでサーキュラーエコノミーを実現する循環プラットフォームの開発を開始

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