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日本IBMと語る、これからの「脱炭素」ビジネス
「脱炭素はコストからインベストへ」日本IBMとの共創

2023/11/15

電通グループでは、顧客企業、団体のカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを支援するビジネスやサービスの提供が本格的にスタートしています。

その一環として、2023年9月11日(月)にdentsu carbon neutral solutionsビジネス開発ユニットが主催するSXビジネスカンファレンス「IBMコンサルティングと語る 脱炭素はコストからインベストへ」が開催されました。本記事ではその模様を、ダイジェストでレポートします。

カンファレンス画像

※記事内の所属・肩書等はいずれも2023年9月のものです


 

電通グループが「脱炭素」ビジネスにコミットする理由とは?

地球環境に配慮した取り組みが世界的に進む中、2020年10月、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。

脱炭素、カーボンニュートラルといったテーマは、各企業にとっても早急に取り組むべき重要な経営課題となっています。

しかし、企業によっては目標を掲げているものの実現に向かって具体的に踏み出せていない、といったケースも多くみられます。これらの背景には、国内企業の脱炭素のバリューチェーンにおいて、企業内の組織やソリューションパートナーがプロセスごとに分断されており、一貫した意思決定や推進が困難になっていることが挙げられます。

またこの領域は、企業努力だけでは実現が難しい分野であり、外部企業と連携しながら、すべてのステークホルダーに意識改革や行動変容を促すことも必要となります。

こうした状況を踏まえ、近年は各コンサルティングファームにおいても、カーボンニュートラルの領域は拡張傾向にあり、電通グループとしても顧客企業の脱炭素に向けた課題解決にコミットしていくことは、急務となっています。

グループ横断でカーボンニュートラルの推進や脱炭素ビジネスに取り組む「dentsu carbon neutral solutionsビジネス開発ユニット」は、電通グループ各社が保有するソリューションに加え、パートナー企業と連携しながら、顧客企業のカーボンニュートラルの取り組みを総合的にプロデュースすることを目的に発足したプロジェクトです。

電通グループの強みであるコミュニケーションを軸に、企画・検討から実行まですべてのプロセスを一気通貫で支援し、顧客企業やパートナー企業と「共創」しながら、カーボンニュートラルの実現に向けさまざまなサービスを提供しています。

体制図

本カンファレンスでは、dentsu carbon neutral solutionsビジネス開発ユニットと協業し、テクノロジーの分野でサステナビリティをけん引する日本IBMの大塚泰子氏と末廣英之氏をお招きし、サステナビリティを取り巻く世界の現状を紹介いただいたほか、日本IBM×電通により生み出すことができうる事例の可能性についてディスカッションを行いました。

QCD+Sという新しい価値観でビジネスを考える

まず初めに、日本IBMのIBMコンサルティング事業本部で戦略コンサルティング パートナー(サステナビリティ戦略リード)を務める大塚氏が登壇し、サステナビリティにおける世界の潮流や今後の見通しを紹介しました。

大塚氏 1

IBMのシンクタンクであるIBM Institute for Business Valueが世界40カ国のCEOを対象に調査した「CEO Study」によると、世界の約50%のCEOが、今後2、3年で企業にとって最も大きな課題と思われるものはサステナビリティだと考えているそうです。その一方、経営陣の中には、サステナビリティを実行する上で「投資利益率や経済的なメリットがわからない……」「データなどテクノロジー活用が足りていない」といった課題を感じている方も多いことがわかりました。

しかし、「VUCA」といわれる予測困難な時代の中で、唯一、確実に起こるであろうことは、「全世界が一丸となってカーボンニュートラルを目指すこと」だと大塚氏は述べました。そのため、サステナビリティやカーボンニュートラルに関する経営戦略や、それらに付随する法律や規制などをしっかりキャッチアップしていくことは、企業成長につながる非常に重要なテーマとなってきます。

とくに大塚氏が大きなポイントとして挙げているのが「価値観の変化」です。

これまで企業の経済価値がQCD=Quality(品質)・Cost(費用)・Delivery(納期)にフォーカスしていたものが、これからはサステナビリティを考慮したQCD+S(Sustainability)という新しい価値観が求められる時代に突入しています。そのため、企業によっては、コストが多少かかっても、より温室効果ガス(GHG)を排出しないサプライヤーに切り替えるという動きも生まれています。新しい価値観が加わることで、これまでとは違った視点での経営のかじ取りが必須となり、社員やサプライチェーン、生活者などすべてのステークホルダーとしっかりコミュニケーションを図っていくことが重要となると大塚氏は述べました。

大塚氏 2

また、サステナビリティを実現するためには、テクノロジーの活用は不可欠であり、IBMもさまざまな開発やサービスの提供を行っています。

なかでもカーボンニュートラルに取り組む上で必要となるのが、GHGの排出量などのレポーティング業務であり、サステナビリティ部門の担当者は膨大な資料の整理や集計に追われることも多いです。IBMが提供する管理システム「Envizi」では、対象データをシステム連携することで自動集計ができるため、CO2の排出量といった数値もすぐに確認することが可能になります。

「こうしたテクノロジーを活用し、データを可視化することで、担当者は資料の整理や集計に追われるのではなく、集計されたデータを基に脱炭素に向けた戦略を考えるなど本来の業務に集中することができます」と大塚氏。テクノロジーがサステナビリティやカーボンニュートラルの実現にどれだけ寄与できるのか、さまざまな視点からの示唆を提示しました。

日本IBM×電通の共創で、脱炭素が企業成長のカギに!

続いて、日本IBMの大塚氏、末廣氏、電通の加々見崇氏、上田智幸氏、住田康年氏がステージに登壇し、日本IBMと電通の共創をテーマにディスカッションが行われました。

カンファレンスの模様

まず冒頭で、広告会社であった電通がなぜ脱炭素ビジネスに関わっているのか――。その背景や電通グループの強みが話題に上りました。クリエーティブディレクターの上田氏によると、これまで電通のクリエイティブチームはCMを制作したり、ブランドデザインをつくったりすることが主軸だったのに対し、現在はビジネスの川上から川下まで関わる領域が広がっているといいます。

とくに規模の大きなプロジェクトでは複数の企業が関わることも多く、方向性や目指しているゴールの共有が難しいといった課題があります。そんな時こそ、電通のクリエイティブチームがリーダーとなり、イメージや世界観を共有するビジュアルやコピーを提示し「一目化」「一言化」できることが強みです。それにより、各社が同じ方向を目指してプロジェクトを推進させることができます。クリエイティブの力でプロジェクトに関わる企業やメンバーの参加意識を高めたり、方向性を示したりすることができるのも、電通グループの強みだと上田氏は話します。

「とくにサステナビリティやカーボンニュートラルといった領域は、サプライチェーンも含めその企業を取り巻くステークホルダー全員で同じ意識をもって実践しないと達成できないもの。そういった仕組みづくりやコミュニケーションづくりに電通グループはアプローチすることができます」(上田氏)

また末廣氏も、日本IBMと電通が共創する上で、こうした電通グループの強みに期待しているそう。「IBMは、社風的にも非常に合理的な会社で、そういった思考でテクノロジーの開発などを幅広く行ってきました。しかし、サステナビリティやカーボンニュートラルを推進していくためには、非合理な選択を顧客企業やサプライチェーン、生活者の方々にしていただく必要があります。非合理というのは、決して悪い意味ではなく、情緒的や信念的なものを指します。そこはIBMが苦手とするところ。逆に電通さんはそういった非合理な文脈づくりは得意な分野だと思うので、IBMの合理性と組み合わせることで、おもしろいことができるのではないかなと感じています」と述べました。

住田氏は「非合理というのは経済合理性のことをお話しされていると思うのですが、20円を惜しむこともあれば、20万円を惜しみなく使うこともあるなど、明確なロジックが確立されているものではありません。でも必ず何かに影響を受けて行動しているため、コミュニケーションの領域で電通が貢献できる可能性があると考えています」と述べました。

またディスカッションの中では、5人の登壇者の打ち合わせで話題になったという「心地よい消費」に話が及びました。

これまで企業の経営者は、コスト重視でビジネスを考える傾向にありましたが、「心地よい消費」というムーブメントを世の中に展開することができたら、生活者は多少価格が高くても「(環境に配慮した取り組みをしている)この会社がつくっている商品を購入しよう」といった流れをつくることができるかもしれないと加々見氏。「そうすれば、これまでコストだと考えられていたサステナビリティやカーボンニュートラルが、利益の方に入ってくる可能性があります。そういったムーブメントをつくることは電通が得意するところであり、テクノロジーやロジックの部分をIBMにサポートしていただくことで、ワンストップのソリューションを私たちで創出できるかもしれない」と、新たな可能性を語りました。

続けて、末廣氏からも「そういった文脈を電通に構築していただくことで、サステナビリティやカーボンニュートラルへの取り組みが企業成長に寄与する事例をつくっていきたい」との声が聞かれました。

最後に、日本IBMと電通との共創について今後の展望を伺うと、「とにかく一緒にいろいろやってみましょう。その中で『こんなことできない?』といった要望をお互いに投げかけ合いながら、一歩、二歩と前進していたけたらうれしいです」と大塚氏。

さらに上田氏も「両社でより多くの会話のキャッチボールをしながら、アイデアとテクノロジーを掛け合わせて、脱炭素ビジネスはもちろん、それ以外のソリューションにもつなげられたらと思います」と期待感を語り、ディスカッションを締めくくりました。

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