広がるLGBTQ+教育。生徒主体で課題を発見・探究
2024/02/20
昨年6月に「LGBT理解増進法(性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律)」が施行されてから、学校でのLGBTQ+に関する教育の必要性がさらに高まっている。正しい知識を伝えるための勉強会や、ジェンダーバイアスを排除するための制服の変更など、さまざまな取り組みがされているが、生徒がより自分事化するための取り組みも生まれている。
東京都練馬区にある東京都立大泉高等学校附属中学校では、3年前から生徒が社会課題と向き合い、アクションを起こすことを目的とした探究プログラムが導入されている。生徒が自ら社会課題のテーマを決めて行うもので、約100個のプロジェクトが生徒主体で取り組まれている。社会課題は、「環境」「食」「いじめ」「防災」など、幅広いテーマが設定されており、その中でも、多くの生徒が取り上げる重要なテーマのひとつが「LGBTQ+」である。
このプロジェクトの発表会が1月27日(土)に同校で行われ、電通で「LGBTQ+調査」を行っている大島 佳果氏と菅 巳友氏も聴講参加した。LGBTQ+をテーマにしたプログラムでは、カミングアウトのしやすさや、制服から感じるジェンダー課題、親との意識のズレなど、生徒が生活で感じた違和感を糸口に課題を設定。どのようにしたら解決できるかのアイデアを考え、実践、その成果や展望などが発表された。
電通の大島氏と菅氏は、発表会に参加して下記のようにコメントしている。
さまざまなチームの発表を伺う中で私が印象的だったことは課題設定を「親の認識のズレを解決すること」に置いているチームが多かったことです。LGBTQ+の当事者/非当事者関係なく中学生の視点から見て、親の認識が自分たちの価値観や生きやすさに影響を与えているよ、ということを伝えている結果のようにも感じました。私たち大人が次世代に問題を引き継がせないために、いかに行動していくべきか改めて考える機会を頂けたと感じています。
(大島 佳果 電通 第3マーケティング局 マーケティングコンサルティング1部)
今回の取り組みでは、中学生自らが積極的にLGBTQ+の問題について興味関心を持ち、そうした情報をどうしたらもっと多くの人に知ってもらえるか考え、アクションを起こしていたことが印象的でした。普段ニュースやSNSなどで流れてくるLGBTQ+に関する情報を自分たちで試行錯誤しながら、身近な人たちに知ってもらうためにさまざまな工夫を凝らす様子を受け、私自身も情報発信者として「どうしたらLGBTQ+のテーマをもっと多くの人に自分ゴト化してもらえるか」といった課題について、改めてその方法を見直すきっかけとなりました。
(菅 巳友 電通 第3マーケティング局 コネクションプランニング2部)
この取り組みを進める大泉高等学校附属中学校の三好先生は、「中学生ではLGBTQ+をテーマに取り上げる生徒が多い印象です。テレビやインターネットでLGBTQ+の情報に触れたり、親との会話で認識のズレを感じたりと、疑問に感じる機会が多いからだと思います」と、生徒にとってLGBTQ+は身近な社会課題であると語った。「子供たちが次世代のグローバルリーダーとなるためには、社会課題に向き合い、自らアクションを起こすことが必要になります。そうした人材の育成が不可欠と考え、始めた取り組みです。まだ始めて3年ですが、子どもだから気付けることがたくさんあること、当事者意識を持ってもらうこと、解決のためのアクションが積み重なって広がっていくことに、大きな価値を感じています」と語った。
知識を得るだけでなく、自ら探究し、行動していくことで、社会課題を自分事化していく。社会課題解決に向けた新しい教育が広がっている。