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企業の未来のためにできることNo.9

電通型オープンイノベーション手法で

生まれる化学反応

2014/03/12

近年、企業の課題解決や新商品・サービスの開発手法として注目を集めているオープンイノベーション。自前主義では実現しづらかった、ブレークスルーとなるアイデア創出を可能にする手法の一つですが、電通が提供するオープンイノベーション型のファシリテーションサービスは、従来型のワークセッションとはひと味もふた味も違う、電通ならではのコネクション力が生かされています。

 

各界との人的コネクションが生かされる電通型オープンイノベーション

オープンイノベーションとは、一般的には、自社のリソースだけでなく外部のアイデアや技術を取り入れて、革新的な新しい価値を創出するという考え方です。企業が持つ技術やリソースを使いながら、他の企業や別の視点を持つ人と新規事業開発に取り組むケースもあれば、顧客を巻き込んで新たな商品開発をするようなケースを指すこともあります。

私たちがイノベーション・コンサルティング・サービスの一つとして提供しているオープンイノベーションは、「外部の異質な人材」に参加してもらうことで化学反応を起こしながら、クライアント企業の課題解決をサポートするファシリテーション型のサービスです。従来のワークセッションの「型」にはまらない右脳的な発想から生まれた手法といえます。

取り組むテーマは、クライアント企業の新規事業のコンセプト開発や、新商品・サービスのアイデア創出、あるいは既存商品・サービスの新たな市場開拓の方向性を見極めることなど、さまざまな課題が対象になります。

電通型オープンイノベーションのポイントはなんといっても、プロジェクトに参加していただく外部人材(オープンイノベーションリソースといっています)の編成力です。コミュニケーション・ビジネスを通じて積み上げてきたあらゆる業界の企業とのコネクションや、各界の専門家や有識者らとの人的なつながりを持つ電通ならではの強みが生かされます。

たとえば、ある飲料メーカーのクライアントから、20代男性に強い新商品を開発したいというご依頼があったとします。クライアント側から参加するのは、事業企画や商品開発、営業部門の担当者など社内横断的に集められた人たち。

そこに異なる知識やノウハウ、視点を持ち、化学反応を起こす外部のサポーターとしてオープンイノベーションチームを編成するわけです。たとえば、20代男性をターゲットとする雑誌の編集者や、同じように20代男性向けの商品アイテムを持つ化粧品会社の開発担当者や、ゲームメーカーのクリエーターの方などに協力を仰ぐ。飲料メーカーとは異質の業界関係者や有識者に参加してもらうところがポイントです。

オープンイノベーションチームの編成には周到な準備

プロジェクトの進め方はクライアント企業が抱える課題によりさまざまですが、例えば前述の20代男性向け新商品開発ですと、まず、外部のオープンイノベーションチームの方々に、事前にコンセプトの種となるアイデアをいくつも出していただきます。アイデア出しは、想定するターゲットの生活や気持ちを想像し、同じ生活環境の中で発想してもらうために、オフィスの仕事モードから離れて、休日などオフの時間にもアイデアをアップできる独自のクラウドシステムを活用する場合もあります。クラウドシステムを活用することで、アイデアの種を創出する段階でも、オープンイノベーションチームのメンバーが互いのアイデアを見ることができますので、そこでまた刺激を受け、新たなアイデアが生まれるということもあります。

集まったアイデアをもとに、次はクライアント企業とオープンイノベーションチームの方々、そして電通のプランナーやクリエーターが一堂に会し、アイディエーションセッションを行います。セッションではいくつかの混合チームを編成し、多種多様な人材が持つ異質な視点で創出されたアイデアが、さらに別の人が持つ異なる角度からブラッシュアップされ、様々な刺激コンテンツなども活用しながら、何度も叩き上げられていきます。こうしたプロセスを経て、クライアント企業の参加者は自分たちに業界の常識など発想の縛りがあることに気づかされたり、外部にいる人たちの新鮮な発想で眠っていたアイデアが呼び覚まされたりしながら、ブレークスルーとなる独創的なアイデアを創出していきます。

ただ、これもあくまで1つの例にすぎず、オープンイノベーションプロジェクトの設計は、クライアントが100社あれば100通りの内容になります。例えば、既存商品の改善点や新たな価値発見のために、生活者の日常生活や行動を深く洞察するエスノグラフィ*1の手法を用いたリサーチをしたり、顧客の行動や心理的変化を深く理解するために、カスタマー・ジャーニー*2手法を用い、顧客にとっての価値を探索、検証するステップを設けたりすることもあります。また、アイディエーションセッション後に新商品のプロトタイプ作成まで落とし込むときもあります。

 「型」にこだわらず、クライアントのニーズに応じてプロジェクトをデザインしていくのが、私たちコンサルタントの腕の見せどころです。

セッションの場だけでなく、社内にも化学反応の連鎖が生まれる

2年ほど前に私たちのチームは、世界最高峰の研究開発機関であるSRIインターナショナルがまとめた『イノベーション5つの原則』(ダイヤモンド社刊)というイノベーションの実践理論をまとめた書籍を訳しましたが、同書に「ウォータリング・ホール」という言葉が出てきます。直訳すれば「水飲み場」となりますが、さまざまな動物が集まるサバンナの水飲み場は、種の異なる生き物が共有する命の源泉です。それと同じように、イノベーションの知恵を生み出す場に異質な者同士が集まることで、新たな発想の源泉が生まれる。イノベーションにおける「ウォータリング・ホール」には、そのような意味が込められているのです。

実際に電通型オープンイノベーションを体験したクライアント企業の方々からは、「自分たちにはない異なる視点が入り、融合したことで、これまでにないアイデアが導出できた」という感想をよくいただきます。外部の人の思考やノウハウが刺激となって、いままで見過ごしていた新たな課題に気づいたり、自社で眠っていた技術を見直す動きが生まれたりしたケースもあります。1つのセクションで試みたオープンイノベーションプロジェクトが、他のセクションに波及したケースもあります。

異なる属性と発想の視点を持つ外部のイノベーションサポーターがもたらす化学反応は、セッションの場だけでなく、クライアント企業内にもさまざまな連鎖反応を起こすことを、現場に立つサポーターの一人として実感しています。

 

*1エスノグラフィ……もともとは、文化人類学や社会学の分野で、集団や社会の行動様式をフィールドワークによって調査・記録する手法。マーケティングリーサーチで、生活者のありのままの行動や生活様式を深く洞察する手法として応用されている。
 
*2カスタマー・ジャーニー……顧客とブランドがどのような接点を持ち、その接点ごとに顧客がどのように感じたり、行動したりしながら、購買・利用体験をしているのかというプロセスを旅に例えた言葉。顧客起点の商品・サービスデザインのために有効なツールとして、カスタマージャーニーマップなどが用いられる。

 
次回最終回は、3月26日に公開予定です。
 

撮影場所:BICE