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企業の未来のためにできることNo.10

生活者の「気持ち」に着目した

未来シナリオ創造プログラム

2014/03/26

電通では、経営・事業戦略や新商品・サービス開発の未来シナリオ策定をサポートするイノベーション・コンサルティングにおいても、生活者の気持ち(マインド)に着目するという独自性を打ち出しています。徹底したトレンド分析と右脳的発想に基づいてつくられた「未来シナリオ創造プログラム」*1に込められた「電通らしさ」について今回は解説します。

 

起こりうる事象だけでは見えてこない未来の戦略を描き切る

未来シナリオ創造プログラムは、企業が求めるビジネスの未来像を描くための手法として、新たに開発したプログラムです。まず、先に全体像を知っていただくために、未来シナリオ創造プログラムで実施される5つのステップを下に紹介しておきます。

●未来シナリオ創造プログラムの5つのステップ

この5つのステップで、商品・サービスのパイプラインの策定や、中期的な経営戦略や事業のシナリオの策定、未来の顧客を想定した商品・サービスの開発など、さまざまな未来シナリオを描き上げることができます。


まず注目していただきたいのが、ステップ1で使用される「中長期未来トレンド2014」(右図)。今後、中長期に強まっていくトレンドを「人口・世帯」「社会・経済」「地球・環境」「科学・技術」という4つのカテゴリーに分けてまとめています。カテゴリーごとに中心部にマクロなトレンドがあり、周縁に行くにしたがいミクロなトレンドとなり、全部で59の事象が未来トレンドとして配置されています。ここでは紹介していませんが、一つひとつのトレンド事象には、一件一葉形式で裏付けとなる統計データなどがバックデータとして補足されています。

 

この未来トレンドの中から、クライアントの業界・業種、プロジェクトの課題などに応じて、必要なトレンドを吟味・検討し、ステップ2につなげていきます。

次に注目していただきたいのが、ステップ2で使われる「未来マインド」です。生活者の未来の「気持ち」に着目した、このプログラムを特徴づける発想ツールです。

いわゆる未来予測本は書店にも数多く並んでいますが、そのほとんどが事象を取り上げたものです。しかし、中長期の事業戦略や商品開発などの未来シナリオを策定する際に、事象に着目するだけではブレークスルーとなる発想にはなかなかたどり着けません。

いま企業のブランド戦略も、「企業主語」から「顧客主語」へというパラダイムシフトが起きています。未来シナリオを描くときにも、想定する数年先に、顧客や生活者にどんな気持ちが強まっているのかを前提に考えなくてはいけない時代になっています。未来の気持ち(マインド)に着目することで、新たな事業戦略や商品開発の絵図も描きやすくなるはずです。

そこで、アイデアの発想ツールとしてつくり上げたのが「未来マインド」です。先にふれた「59の中長期未来トレンド」の事象をベースとし、今後生活者にどのような気持ちが強まるのかを抽出したものです。最初に挙がったマインドの種の数は1300余りにもなりましたが、それをグループ化し、さらに集約して最終的に「58の未来マインド」に絞り込んでいます。プログラムの実践場面では、この「58の未来マインド」を雛形として使うこともできますし、クライアント企業とセッションを重ねて、特定の領域を掘り下げて、個別課題に即した未来マインドを作り上げるということも可能です。

右脳的思考から生まれる「発想の化学反応」

未来シナリオ創造プログラムで一番重要な段階となるのはステップ3ですが、ここでは、ステップ1で抽出した未来トレンドと、それをもとにステップ2で導き出した未来マインドを踏まえ、自社や業界における重点開発テーマを見極めていきます。

では、未来トレンドの事象と生活者の未来マインドを掛け合わせると、未来シナリオの策定においてどんな効果があるのか。例を挙げて解説します。

次に掲げるのは、スマートハウスのコンセプト開発を例にしたものですが、「スマート技術の進展」「IT技術の進展」などの未来事象だけを前提にした従来の発想では、スマートハウスのこれからのあり方については、「太陽光や燃料電池を使った自家発電」「家電や住宅機器のマネジメント」といった、従来の発想の域を出ない概略的なポイントの列挙になってしまいます。

 

 

それに対して、生活者の未来マインドとして「効率良く暮らしたい」「モノを持ちたくない」といった点を掛け合わせると、「普段使わないものは近所で共有」「使用状況はスマホでリアルタイムに把握」という具合に、より具体的な生活シーンを思い浮かべることができます。これが、右脳的思考から生まれる「発想の化学反応」です。

未来シナリオ創造プログラムでは、他にも、ステップ2で電通独自のファシリテーションプログラム「Power Session®」*2が活用されたり、ステップ3の重点開発テーマの設定では、未来マインドの確実度を検証する「未来確実度調査」*3を実施するなど、電通らしいイノベーション・コンサルティングを実現する仕組みづくりや支援ツールが随所に用意されています。

自らの問題意識と発想で「解」を導き出す 未来シナリオ創造プログラムは、商品開発をテーマとするような場合、先に触れた「中長期未来トレンド」や「58の未来マインド」など既にあるツールをベースにすれば、セッション実施は2日間ほどでステップ5の未来シナリオアイディエーションの実施までもっていくこともできます。 ただ、実際には、未来トレンドと未来マインドの掛け合わせ発想に慣れるためのトレーニングを事前にしていただいたり、課題に応じた未来トレンド、未来マインドの抽出を行ったり、あるいは既存情報の棚卸しなどを行うなど、クライアント企業の抱える課題に適したプロジェクトをデザインすることがカギとなります。

大切なのは、クライアント企業の方々が、自らの問題意識を共有し、様々な角度から発想することで「解」を導き出していくことです。答えを出すのはあくまで参加者自身なので、私たちは、その側面支援に徹します。


参加メンバーが心地よく議論ができる「場づくり」もその一つです。上長が意見を言うまでは自分の意見を差し控えるような社内風土がある企業も中にはあります。セッションの場では、そのような感覚を取り払ってもらい、リラックスして議論ができる雰囲気づくりを心がけます。いわば、「非日常」の演出です。

そのような雰囲気の中で、参加者がこれまで自分でも気づかなかった自社製品・サービスの価値や顧客に対する思いを見つめ直し、結果的に会社の未来を創造するシナリオを描き切ることが最大の目的です。 自社を元気にしたい、そして世の中を元気にしたい。そんな思いは、クライアント企業のプロジェクトメンバーも私たちも同じなのです。

 

*1未来シナリオ創造プログラム……日本たばこ産業株式会社 たばこ事業本部 事業企画室イノベーション推進担当の協力を得て開発されたプログラム。
 
*2 Power Session®……電通独自のファシリテーションプログラム。発想支援ツールや刺激材を用いたり、オープンイノベーションの仕組みを活用するなどしてイノベーションを生み出す。
 
*3未来確実度調査……58の未来マインドについて、「現時点で感じているか」と「5年後に感じていそうか」という2つの質問に対するマインドのスコア差を算出し、「今後高まる可能性が高いマインド」を検証。

 


撮影場所:BICE