loading...

事業成長を加速させる人事戦略「HR for Growth」No.3

変革疲れ?大企業でイマ生じている従業員の意識の変化とは?

2024/06/21

企業が変わろうとするとき、変化を阻もうとする原因の多くが企業の内部に存在する――そんな状況が、あまた散見されています。それは変わることへの心配や不安など、さまざまな“今を肯定する引力”に多くの社員が引き寄せられてしまうからです。

電通が提供する、企業の人的資本経営の実現と事業成長のための支援プログラム「HR for Growth」チームでは、「企業の変革に関する従業員意識調査」を2021年12月と、2023年11月に実施しました。

2021年の第1回調査では、大企業の従業員を対象に、自社の変化に対する意識について聞き取りました。そして2023年の調査では、新たに人的資本経営に関する設問も加え、その課題感を明らかにしました(調査概要はこちら)。

その結果、企業変革に対する従業員の熱量が低下していること、人事部門と事業部門での意識のギャップなどが明らかになりました。

本記事では、「HR for Growth」に関わる電通BXデザイン局の弥園圭一と永井健一郎が、調査の結果とともに従業員のインサイトについて分析・解説します。

<目次>

自社の変革に対して、従業員は行動しているのか?

変革を推進する社員の割合は2021年から半減

自社が変わることに社員の8割以上は「不安がある」

人的資本経営への取り組みは人事部門と事業部門で意識に大きなギャップ

人的資本経営への取り組みを事業成果に結びつけるためには?

自社の変革に対して、従業員は行動しているのか?

所属先の企業から「自社が目指す変化」についての情報発信がされていると考える従業員は、前回調査(91.2%)から22.2ポイント減少し69.0%となりました。

現象した理由の一つには、コロナ禍から通常の生活に戻り、発信自体が少なくなった企業の存在があります。そしてもう一つ、変化が激しい時代において、企業からの変革に関する発信が「日常化」してしまったことも考えられます。(図表1)。

HR連載#3_図版01

また、自社の変化に対して、現在すでに行動をしている従業員は、前回調査(30.7%)から9.2ポイント減少して21.5%となり、行動を起こしている人が全体で見ると1割減りました(図表2)。

HR連載#3_図版02

その理由としては、前回調査に続き「会社・経営層から打ち出された変革案が社内でほとんど理解・浸透されていない」(26.6%)が最も多くなっています。しかし、「会社・経営層がきちんと変化の道筋を示していない」(16.8%)は、前回調査(26.9%)から10.1ポイント減少しています(図表3)。

つまり、変革に対する大きな方針(道筋)は一定程度提示されている一方で、その具体的なアプローチ(変革案)が従業員に対して「理解/浸透不足」であることが、行動に移せない大きな要因の一つと考えられます。

HR連載#3_図版03

変革を推進する社員の割合は2021年から半減

前回調査に引き続き、自社の変化に対する姿勢や考え・行動、基本的な就業意識などの観点から、クラスター分析を実施し、従業員6タイプの分類がどのように変化したのかを調べました。

<従業員6タイプ>
変革推進層
変革フォロワー層
現業と変化の狭間でもがく層
変革他人事層
結局のところ現業肯定層
就業消極層

すると、変化への関心が高い「変革推進層」「変革フォロワー層」「現業と変化の狭間でもがく層」の3タイプは前回調査から大幅に減少しています。特に自ら動く、企業の変革の担い手ともいえる「変革推進層」は、23.7%から12.0ポイント減少し11.7%になりました(図表4)。

この変化の理由としては、会社からの発信同様、コロナ禍から通常の生活環境に戻ったことや、長期にわたる変革において思ったよりも成果が出ないなど「変革疲れ」のようなものが生じていることが考えられます。変革をやりきるには、従業員の熱量をいかに保ち続けるかが重要なカギとなりそうです。

HR連載#3_図版04

自社が変わることに社員の8割以上は「不安がある」

今回の調査から、自社の変化に対し8割以上(84.3%)の従業員が不安を感じていることがわかりました。理由の上位は、「なんとなく漠然とした不安がある」(30.0%)、「目の前の業務とのバランスが取れなくなること」(21.7%)、「会社がどのようなものに変わろうとしているのかが見えていないこと」(21.0%)が挙げられます(図表5)。

なお、前回調査よりも「変化に対応しても評価につながらないのではないかと感じること」という回答が増えていることから、変化に対して自分が対応することのメリットを十分に感じられていない状況が見えてきます。

HR連載#3_図版05

人的資本経営への取り組みは人事部門と事業部門で意識に大きなギャップ

人的資本経営(人や人の成長への投資や機会)に関する意識や課題感に関しても社員の意識を確認しました。

「人材育成」「人材採用」「評価制度」などの人的資本経営に関する領域について、自社が取り組んでいると考える従業員の割合は、全ての領域において人事部門が事業部門よりも10ポイント以上高い結果となりました(図表6)。

さらに、人的資本経営に関する領域について、自社が取り組むことは重要だと考える従業員の割合も、「人材育成」を除く領域において人事部門が事業部門よりも10ポイント以上高い状況で(図表7)、大きなギャップが存在することがわかりました。

人事部門は自分たちで取り組んでいる領域のため、自分ゴト化が進んでいるものの、事業部門が同じ状態にはないことを前提に取り組むことが重要になってきます。

HR連載#3_図版06
HR連載#3_図版07

人的資本経営への取り組みを事業成果に結びつけるためには?

人的資本経営の取り組みが事業の成果につながっていないと考える従業員は、半数超えの51.8%(図表8)に及びます。その理由は、人事部門では「人事部門と事業部門での連携が取れていない」(38.1%)、事業部門は「分からない」(30.3%)が最も多くなっています(図表9)。

HR連載#3_図版08
HR連載#3_図版09

経営方針に合わせた人事戦略だけでなく、事業における課題も同時に解決につなげられることが、人的資本経営の大きな目的です。そのためには、課題領域を中心に、人事部門と事業部門がしっかりとコミュニケーションをとり、成果を生み出すために必要な取り組みを一緒に推進していくことが必要になります。

つまり、人的資本経営を事業成果に結び付けるためのポイントは、戦略段階で何が必要なのかを事業部門のメンバーも巻き込みすり合わせることです。また変革に向けての施策を実施する際に、ストーリーをもって伝え、納得した上で積極的に取り組んでもらうことが、結果として事業の成果につながっていくと考えられます。

電通では今後も、変化の激しい世の中において、企業の変革を推進すべく、従業員の意識の変化を正しく捉え、的確な打ち手を検討していきります。本調査の結果や、事業成長につながる人事戦略などに興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

【本件に関する問い合わせ先】
Dentsu HR for Growthチーム  
Email:bx-project@dentsu.co.jp

 

【調査概要】
・調査名:第2回「企業の変革に関する従業員意識調査」
・目的:自社の企業・人事変革に対する従業員の意識や考え方などを明らかにすること
・対象エリア:全国
・対象者条件:20~59歳(大企業勤務※1、部長職以下※2)
・サンプル数:600※3(性別・10歳ごとに均等回収)+人事部門300※4(人事部門経験年数1年以上が対象)
・調査手法:インターネット調査
・調査期間:2023年11月21日~11月26日
・調査機関:株式会社電通マクロミルインサイト
 
※1:中小企業基本法の定義に基づく
※2:自身の役職が「部長クラス」「課長クラス」「係長/主任クラス」「一般社員」「その他」の従業員
※3:性年代75人ずつで均等回収。全国20~59歳の600人に人事部門300人を足すとn数は900になるが、サンプル数に偏りが生じるため、全体のn数は600を使用。
※4:人事部門経験年数1年以上が対象
注)本調査における構成比(%)は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。
 

X(Twitter)