データで「人」を理解する
電通グループが提供するデータ活用のソリューション
2024/08/19
※この記事は、2024年6月7日「日経ビジネス電子版SPECIAL」で公開されたコンテンツを一部編集し、掲載しています。
企業の成長のためには、データを活用して、ビジネスそのものやマーケティングに変革をもたらすことが求められる。ますます高度化し、複雑化するデータ活用にどう取り組めばいいのか。国内電通グループ約150社からなるdentsu Japanは、顧客企業のデータ活用に伴走するべく、さまざまなソリューションを構築している。根底にあるのは、「人を理解するためにデータがある」という信念。データを活用したマーケティングの変革について、dentsu Japanのインテグレーテッド・ソリューション プレジデントである鈴木禎久氏に聞いた。
(聞き手 日経ビジネス発行人 松井健)
生活者のリアルは
データにこそ表れる
「マーケティングとは、『人を理解すること』に尽きます」と、鈴木氏は語る。1990年の入社以来、マーケティング畑で30年以上のキャリアを重ねてきた。
鈴木氏は人を理解するために、さまざまなことを実践してきた。生活者へのアンケート調査、臨床心理士を入れたイメージ調査、デプス・インタビュー、親子や家族に聞く調査など、ありとあらゆる調査手法を駆使して、「人の理解」に努めてきた。
しかし結局、「話を聞くだけでは、顧客理解は難しい。そこに大きな壁を感じてきました」と鈴木氏は話す。生活者の回答には、誤差がある。人の気持ちは常に変化し、同じ人でも昨日と今日では意見が変わってしまう。
ところが近年、その壁が突破されようとしている。鍵となるのは、「データの活用」だ。マーケティングの常識が変わり始めている。
「あらゆるものが、データで捕捉できると考えています」(鈴木氏)。生活者のリアルは、データに表れる。
データ活用は、未来の予測も可能にしつつある。例えば、テレビ放送のメタデータ(どの番組で、誰がいつ、何を発言し、その時の視聴率がどうだったのか)を見て、ゴールデンウイークの話題がテレビで最初に報じられた日から起算すれば、一連のマーケティング施策を最適なタイミングで計画できる。dentsu Japanでは、予測と結果の差を細かくフィードバックし、プランニングの精度を飛躍的に高めている。
活用できるデータは、この数年でさらに増加。SNSや動画サイト、物流の購買動向といったデータの活用が始まっている。生活者の位置情報や天候、利用する交通機関などの情報と、嗜好データを合わせて分析すれば、車内や街角で広告をどのように見せ、店舗スタッフの対応をどうカスタマイズすれば、購入意欲を高められるかといった戦略を具体的に検討できる。
「プラットフォーム事業者のデータや流通の購買データなど、さまざまなデータと自社の顧客データとを統合分析し、マーケティングのROI(投資対効果)を向上させたいというニーズが高まっています」(鈴木氏)。dentsu Japanは、2016年からプラットフォーム事業者と連携し、許諾取得済みのデータをセキュアに分析できる「データクリーンルーム」を活用している。そして2024年からは、多種多様なデータや、それを分析する人財・ノウハウをベースにROIを高めていくマーケティングモデル「Marketing For Growth」を推進して、こうしたクライアントの課題に応えている。
ロイヤルティ の高い顧客を
見極めて集中投資
マーケティングROIを向上させるには、ロイヤルティの高い顧客や、ロイヤルティが高くなる可能性のある顧客層に集中的に投資することが望ましい。
しかし、従来はそうした顧客層の見極めが難しいため、まず多くの生活者に投資して認知と理解を広げ、その中から見込みのある顧客を絞り込む方法が取られてきた。さらに、一度購入してくれた顧客に何度も買ってもらうことでロイヤルティの高い顧客を増やしていく。いわゆる「デュアルファネル型」のアプローチだ。
しかし、初めから可能性の高い顧客層を識別できるとしたら、どうだろうか。見込みの高い顧客だけに投資し、高い確率で獲得できる。その精度が高まるほど、デュアルファネル型だったアプローチは「寸胴型ファネル」に変わっていく。
「データクリーンルームによるデータの活用によって、適切な顧客に、最適なタイミングで、最適なコンテンツを提供することが可能になります。将来的には、もっともマーケティングROIの高い『寸胴型ファネル』の世界観を目指したいと考えています」(鈴木氏)
顧客体験をより良くする
そのためのデータ活用
クッキー規制など、ユーザー行動のトラッキングや個人情報の扱いに対する社会の目が年々厳しくなっている。
根本的な課題は「お客さまの立場になって考えられていなかったこと」にあると、鈴木氏は指摘する。
望まない情報を一方的に届けることが続けば、顧客は去っていく。そうならないためには、ベストなタイミングで望ましいコンテンツを届けることによって、顧客の役に立つ必要がある。
「データ活用の幅を広げ、分析ツールなどの独自技術と、専門人財のノウハウを高めています。やりっ放しではなく、結果をしっかりとフィードバックして精度を高めていくことが重要です」(鈴木氏)。顧客の満足度を得るところまでやり切ることが大切だと語る。
しかし、データを分析しているだけでは、真の価値は創出できない。「何をすれば人は振り向いてくれるのか。より良い顧客体験につながるのか。データから得たインサイトを、実効性の高いクリエイティブやコンテンツにする想像力が鍵になります」(鈴木氏)。そこに、広告コミュニケーションをリードしてきた電通の強みが生きてくる。
「データを活用したマーケティングの変革が多くの企業で進めば、生活者一人一人に喜ばれる世界の実現につながる。そう信じて、顧客企業のデータ活用に伴走しています」と鈴木氏は語った。
取材を終えて(日経ビジネス発行人 松井健)
鈴木氏はマーケティングの世界を長く経験した後、電通デジタルの代表取締役社長としてデータ活用の最前線に立ってきた。「クリエイティブにつなげる想像力がなければ、データがもたらす真の価値は生かせない」という言葉に、プロのマーケターならではの視点がある。データを生かして生活者の行動を予測し、マーケティング施策の実効性を高める取り組みは、多くの企業にマーケティングの変革をもたらすだろう。