loading...

電通報ビジネスにもっとアイデアを。

dentsu Japan佐野CEOが語る、事業変革とBXの最前線

2024/10/30

image
事業変革の最前線を探求するカンファレンス「Xplorers(エクスプローラーズ)」が2024年8月27日(火)に行われた。第一線で活躍する変革のリーダー100人が集結し、事業変革・新規事業創発・DXについて発表・議論を深めるこのカンファレンスに、dentsu Japan CEO 兼 電通 代表取締役 社長執行役員 佐野傑氏と、電通グループ グローバル・プラクティス・プレジデント– BX 兼dentsu Japan BX プレジデント 兼 電通 執行役員 豊田祐一氏、電通デジタル 執行役員 安田裕美子氏、電通 後藤一臣氏、山原新悟氏が登壇した。

佐野傑CEOが語る。dentsu Japanが目指す真のIGPとは

image
キーノートでは「変革と創造に求められる各社の取り組みと目指す方向性」をテーマに、4名のCEOが語り合った 。登壇したのは、味の素 代表執行役社長 藤江太郎氏、三菱電機 取締役 代表執行役社長 CEO漆間啓氏、三井住友フィナンシャルグループ 執行役社長 グループCEO 中島達氏、dentsu Japan CEO 兼 電通 代表取締役 社長執行役員  佐野傑氏の4人。

グローバルにおいて重要な役割をもつdentsu Japan

佐野氏は、まず始めに電通グループのパーパスである「an invitation to the never before.」について紹介。「これはグローバルも含めた電通グループのパーパスです。グループの仲間全員が、多様な視点を掛け算し、社会や企業の皆さまの発展に寄与していくことを共通メッセージにしています」と語った。

image
「電通は日本の会社だ、というイメージを持たれている方もいるかもしれませんが、グループは約120カ国にまたがりグローバルに事業を展開しています。グループ全体の売上総利益の海外比率は約6割です」。そうした事業展開の中、グループの約4割を占める佐野氏が統括するdentsu Japan。国内約150社、約2万3000人で構成された事業ブランドであり、電通、電通デジタル、電通総研、セプ テーニ、カルタホールディングス……など専門性ある各社が連携し、さまざまな領域の課題解決に貢献するソリューションを提供している。

グループ内でも先進性・強みの源泉になっているというdentsu Japanは広告領域からの拡張を宣言し、事業領域を拡大してきた。現在、中心となる事業領域は「Marketing(広告やCRM)」「Transformation(経営変革やDX)」「Contents(エンターテインメントやスポーツ)」の3つであり、「何が広告で何が広告でないか、その境界は溶け合ってきていますが」と前置きした上で、広告領域外の売り上げは、4割に達しているとした。

「多様性の開花」がdentsu Japan変革の鍵

メインテーマである「変革の推進」について、重要な経営視点は“人”が資本であること、と佐野氏は語る。「人的資本経営が世の中でいわれるずっと前から当社は取り組んできました。工場や製品をほとんど持たないdentsu Japanにとって、“人”が資本であることは昔から変わらずに大切にされてきたことです」。その人的資本経営をさらに進めるために、最も力をいれているのが、企業カルチャーの変革による「多様性の開花」である。

「約2万1000人の能力が最大化されることこそ、私たちの競争力の源泉です。その能力を、足し算ではなく掛け算をすることで、大きな力が発揮されるのだと思います。そしてそれは、同一ではなく多様性ある能力の掛け算であることが重要です」と強調した。多様性ある一人ひとりの成長と能力の解放、その掛け算を通して、顧客企業の成長と社会に活力を生み出す存在を目指す。

「それが、dentsu Japanが目指す姿『真のIntegrated Growth Partner』です」(佐野氏)

そのために大事なこととして、「DEI」と「インテグリティ」の2つを挙げた。2024年1月に就任したチーフ・ダイバーシティ・オフィサー 口羽敦子氏、チーフ・ブランディング/カルチャー・オフィサー 吉羽優子氏を中心に、経営層全員で進められている。「いいパーパスを掲げても人が動かないと意味がありません。パーパスを言えることよりも行動することが大事です。DEIに関しても社員が行動を起こすための、さまざまな活動を具体的に進めています」とした。

image
dentsu JapanのDEIの取り組み

「インテグリティ」に関しては、「私はインテグリティを、本来、一人ひとりが持っている高潔さ、倫理観のことであり、それを正しい知識と想像力を元に行動で示すことと捉えています。私たちの自由闊達(かったつ)な能力の発揮は、ベースとなる一人ひとりのインテグリティがあることが前提です。私自身はもちろん、社員同士も自らのインテグリティを話し合い、考えています。各種ガイドライン制定と、17の施策を通じてインテグリティの社内浸透を進めています」と紹介した。

image
dentsu Japanのインテグリティの取り組み
image
カルチャー変革とdentsu Japanが目指す姿のまとめ

その後ディスカッションで、日本経済の活性やグローバル競争に必要なことについて質問が及ぶと、日本の人財はグローバル人財と比較して、個々人では優秀な場合でも 、チームになると勝てないことがある。個々人の能力を発揮し、チームの強い力を生み出すためには、挑戦する志を持つ人が同じ方向を見てチームとして最大の力を発揮するようなリーダーシップとカルチャーが大事だと語った。

外部調査による各種企業ランキング※でも高く評価され始めているdentsu Japan の各社。「ですが、まだまだ道半ばです。私の好きな言葉の一つに『早く行くならひとりで行け。遠くへ行くなら仲間と行け』というのがあります。dentsu Japanの多様な仲間たちと一緒に、社会や皆さま(聴講者)の変革パートナーとして、進化を続けていきたいと思っています」と、改めての決意で登壇を締めくくった。

※OpenWork「働きがいのある企業ランキング2024」電通3位、OpenWork「20代が選ぶ『成長環境への評価が上がった企業ランキング』」 電通3位、OpenWork「新卒社員が評価する『チームワークに優れた日系大手企業ランキング』」 電通4位 、OpenWork「新卒入社の若手社員がおすすめする企業ランキング」電通総研1位、OpenWork「管理職が評価する企業ランキング」電通3位


持続的な変革を生み出す動力と熱量とは

image
カンファレンスの最後を飾ったのはdentsu JapanによるBXについてのプレゼンテーション。「持続的な変革を生み出す動力と熱量とは」をテーマに、企業・事業変革における課題の現在地と、変革に重要なキーワードについて語られた。

変革をHolistic(包括的)に推進する

image口火を切ったのは、電通グループでBXの統括をする豊田祐一氏。dentsu JapanのBXの全体像「Holistic Transformation Model」について語った。

image 
上記の図が「Holistic Transformation Model」であり、dentsu JapanのBXの領域になる。パーパスを中心に据えながら、企業基盤から組織人事、事業から営業・マーケティングまで全域の変革支援を行っている。これらの領域は独立しているわけではなく、図の矢印が表しているように、それぞれが密接に関連しあっているという。「例えば、事業変革を推進するためには、企業文化や組織人事の変革も必要な場合がある。つまり、ある領域の変革は、その領域の変革だけでは実現しない場合があります。dentsu Japanは、企業・事業変革の課題をHolistic(包括的・統合的)に捉え、支援しています」と語った。

この「Holistic Transformation Model」を下支えするdentsu JapanのBXのユニークネスは3つある。ひとつ目は「クリエイティビティ」。これは課題を新たな視点で捉え直す、その企業ならではの戦略を立案する、それを社内に浸透させていくなど、変革の全工程で発揮される広義のクリエイティビティを指している。2つ目は、「人の心を動かし、人の行動を変える力」。人とは、従業員を含めたすべてのステークホルダーを指している。結局のところ、変革をドライブするのは人だ。3つ目は「実行力」。成果が出るまで実行・伴走してやりきる力。この3つが強みとなっているという。

全体像の最後は、Holistic(包括的・統合的)な支援を可能にする体制である。「例えば、クリエイティビティ×データの電通デジタル、システムインテグレーション・コンサルティング機能・シンクタンク機能を持つ電通総研、新規事業創造に強いイグニション・ポイントなど……BXDX領域において専門性のある7つの会社が連携し、課題に最適なチーム体制で企業に伴走しています」と紹介した。

image


現場で起きている「2周目の悩み」

imageさまざまな企業・事業の変革支援に携わっている電通の山原氏が、実際に経営層との対話や、電通の独自調査などから見えてきた変革の現場で起きている課題を語った。一言で言うと、「変革の2周目の悩みが訪れている」という。

image
「さまざまな変革をしてきた企業こそ、この『2周目の悩み』が起きています」と山原氏は語る。

「例えば、事業開発に関しても、『2周目』を迎えている企業が多い」と話す。2、3年前までは、本業と離れた飛び地となる事業開発を目指すことが多かったが、2周目になったいま、本質的な強みやDNA、眠っているR&Dのポテンシャルを生かすような、本業の「隣地」に「象徴となる事業」の開発を目指すことが多くなっているという。「しかし、そのような隣地に骨太の新規事業を開発することは容易ではありません。そういう事業は当然時間を要しますが、企業内では数年もたつと環境が変わり、本業回帰の強い力が働いてしまうことも少なくありません。」と山原氏は語る。

社内の変革に対する捉え方も、2周目を迎えているという。電通独自調査「第2回 企業の変革に関する従業員意識調査(2024年)」でも、この課題を裏付けるような結果が出ている。変革に積極的な「変革推進層」と「変革フォロワー層」は足しても全体の約3割。これは、第1回(2021年)よりも減っているという。むしろ、「変革困惑層」「現業肯定層」「変革他人事層」が増えているという結果が出た。行動に移せないのは「経営層からの変革案が浸透していない」、自分は変えさせられる側だという「漠然とした不安がある」と回答している。2周目となり、従業員を巻き込む変革が難しくなっているというのが、この結果からも見えてくるだろう。

そうした変革の2周目を迎えている企業こそ、何のためにこの変革を成し遂げるのか、どういう企業像を目指し、どういう価値を社会に生み出すのかという根幹の部分を定めることが重要だという。そしてそれを、多くの社内の人が共感し、旗印となるような、分かりやすく力強い変革のコンセプトと、シンプルな戦略シナリオで描くことが重要になってくると話す。

具体的に、dentsu Japanではどんなアプローチがあるのか、続いて紹介された。

企業の「自律的な変革」を支援する

image具体的な解決アプロ―チとして、電通デジタルでDXによる“両利き経営”支援を進めている安田氏が語るのは、「自律的変革を促す独自プログラム」である。

企業・事業変革においてDXは必要不可欠であるが、「とにかくデジタル化するのだ、という手段(How)が目的化しがちな『強制的な変革』になってしまうことが数多くありました。2周目の悩みが起こっているいま、従業員一人ひとりが、なぜ(Why)やるかを理解し、何(What)を実現するべきかを懐に持っている、『自律的な変革』が必要です」と安田氏は言う。「自律的変革」を促す独自プログラムは3つ。変革戦略を策定する「DX ARROW」、従業員のマインドを醸成する「Will Being Program」、データ×ビジネススキルを高める人材育成「ビジネストランスレーター育成」である。

※両利きの経営…「主力事業の絶え間ない改善」と、「新規事業に向けた実勢の行動」を両立させる重要性を唱える経営論。スタンフォード大学経営大学院のチャールズ・A・オライリー教授と、ハーバード・ビジネススクールのマイケル・L・タッシュマン名誉教授が提唱。


image「DX ARROW」は、変革における難題に対して、論点・KSF・ユースケースの3つをまとめたフレームワーク。論点にあわせて企業が自身で考えられる伴走型プログラムになっている。「大手製造業社のご支援をした事例です。難易度の高い新規事業開発プロジェクトだったために論点が拡散・船頭が多くて進まない・事業に対する温度感がまちまち……といった、解決の難しい課題がありました。それに対し、戦略以前のビリーフ(信念)からすり合わせ、向かう方向や温度感をそろえた上で戦略策定、さらにサービスの順番がどうあるべきか、というところまで議論を重ねました。そうすることで、内部で腹に落ちた戦略ができるのです」と語り、そこから初めて、デジタルやデータをどう使うか、という議論を行ったという。

image
「電通グループのデジタル変革を体現する企業として自ら得た学びを、クライアント企業の本質的な成長支援に今後も生かしていきます」と締めた。

dentsu Japanならでは。クリエイティビティによるBX支援

imageもうひとつの解決の視点として提示されたのが、「クリエイティブによるBX支援」である。語るのは電通で、クリエイティビティでBX支援を行っている後藤一臣氏。広告表現としてのクリエイティブではなく、「ビジネス変革の『動力』や『熱量』を生むドライバーとしてのクリエイティビティです」と後藤氏は切り出した。

「クリエイティビティの能力はいろいろな捉え方ができます。ビジネス変革における力とは何か。ひとつは、『可視化・具体化するチカラ』といえます」(後藤氏)

この「可視化・具体化するチカラ」が動力や熱量になって、ビジネス変革を加速させるという。具体事例として、改質リグニンが紹介された。改質リグニンとは、日本固有の樹木であるスギから、薬剤を用いて開発した新素材である。加工性に優れており、熱に強く耐久性が高い。石油由来のプラスチック製品と同等の性質を実現しており、電子基板からテニスシューズまで加工可能なバイオ素材として注目を集めている。

この改質リグニンの活用をさまざまなステークホルダーを巻き込み推進していくために、「どんな社会を実現できるのか」を可視化する際、クリエイティビティの力が大きく発揮されたという。

image
Before ベネフィットがより直観的に伝わる方法はないか、と考える。
image
After 一枚絵で「改質リグニン」がもたらす持続的な社会を可視化した。

「このように、可視化・具体化され、解像度が高まると、人は一気に当事者になるんです。それが変革へのドライブにつながります」と後藤氏は言う。

image
「宇宙食産業共創コンソーシアム」の事例。多数のステークホルダーが参加するプロジェクトで取られた手法。
 
image
全員で目指せるビジョンを可視化することでプロジェクトが一気に前進した。

方向感への“腹落ち”が、メンバーの能動的な行動につながり、周囲を巻き込むことができた好事例といえる。最後に後藤氏は、「変革の動力というのはトップダウンの一方的なものではなく、関わるさまざまなステークホルダー、その人の熱量をサイクロン式に巻き込みながら進んでいくものだと思います。クリエイティビティはその動力をつくるのに貢献します」と語った。

最後に

改めて、熱量を持ってやっていくために何が必要なのか。「変革疲れ」が出ている調査結果から見ても、簡単ではない。dentsu Japanの熱量を高めるアプローチで最も有効なものは何か、という議論になると、「共通の夢、“腹落ち”できるビジョンというのが熱量の“へそ”になる」(後藤氏)、そのビジョンは「自分たちはなぜ変わらないといけないのか、そのビジョンが創業の原点、DNAと地続きであることが大事だと思いますし、その発露のさせ方は企業によって違うので、そこまで丁寧に伴走させていただくことで、社員の方の熱量も徐々に上がっていくのかな、と思います」(山原氏)と語った。

「実際に、カルチャーとか熱量は大事だと経営者の約95%の方が答えている調査結果※がありますが、何をもって熱量を測るか、というのも難しいポイントです。そこも『Culture For Growth』というソリューションでプログラム化しています」(山原氏)と、紹介した。

※電通独自調査「企業文化変革に関する経営層および経営企画部署勤務の意識調査(2024年)」


また、「変革は、今を否定することももちろんあるべきだと思いますが、一方で、残すべきいいところを見定めて残すことも大事です。いいところを見つけることは、私たちは広告・マーケティングで得意としていることでもあります」(安田氏)と語った。

最後に豊田氏が、「企業変革・事業変革では、システム基盤、各種制度の変革に目がいきがちですが、それに加えて、人の心を動かし、人の行動を変えることが大切です」と強調。「私たちは広告マーケティングの会社として培った人を動かす力と、dentsu Japanの各社の専門性を掛け合わせてご支援していきたい」と、登壇を締めくくった。

数多くの企業変革・事業変革に伴走してきたからこそ見えてきた「2周目の悩み」。より難解になったこの課題に対して、広告マーケティングで培った人の心をつかむクリエイティビティと、専門性ある7社の掛け合わせによって伴走・支援する。人を大切にし、多様性の開花を経営に掲げるdentsu JapanならではのBXが強調された発表となった。


Xplorersに関してはこちら https://xplorers.jp/
※2024年の開催は終了しています。
Dentsu BXDXサイトはこちら https://dentsu-bxdx.jp/
 

tw