Z世代が買い物に行きたくなるお店とは?「ジェネキュン」に聞いてみよう!No.1
Z世代はゴチャゴチャしたお店が好き?本音調査から見えた購買行動
2024/11/18
これからの購買の中心となっていくZ世代は、リアル店舗での買い物をどう捉えているのでしょうか?
本記事では、そんな疑問に答えるべく、「Z世代的 小売りへの本音調査」の結果と考察を紹介します!
調査を実施したのは、電通グループの中でも特にリテールに強い、電通tempoと電通リテールマーケティング。この2社によるマーケティングプロジェクト、その名も「ジェネキュン」の一環として実施しました。
ジェネキュンは、Z世代のメンバーが中心のプロジェクトです。メンバー自らの経験と洞察、同世代ならではの着眼点をもとに、Z世代の消費行動を探り、Z世代の価値観に寄り添った新たな売り場提案を目的として掲げています。
本音調査から見えた、Z世代の買い物へのリアルな価値観について、電通tempoの林萌々子氏と、電通リテールマーケティングの松本光由氏に伺いました。
※調査概要は記事末尾を参照
<目次>
▼Z世代の「買い物」への本音、知りたくないですか?
▼Z世代は、ゴチャゴチャした売り場が好きだった!?
▼Z世代は「予定外」の買い物が多い!?
▼企業よりインフルエンサーや友人の情報を信頼するZ世代
▼Z世代は「店頭での販促施策」が効きやすい?
Z世代の「買い物」への本音、知りたくないですか?
──お二人の自己紹介と、それぞれの会社について教えてください。
林:私は電通tempoのマーケティングプランナーとして、流通小売業や外食産業の課題を解決する企画提案を行っています。例えばファミリーレストランの季節ごとのプロモーションや、イベントなどを企画しています。私自身もZ世代であり、同世代のトレンドを調べるのが好きなので、Z世代をターゲットとした企画を得意としています。
私の所属する電通tempoは、流通・小売業や外食産業を対象に、店頭を起点としたマーケティング・プロモーションを提供する専門会社です。デジタルとオフラインを融合したプロモーション力が特徴で、消費者の変化を捉えた戦略立案を行っています。
電通tempo
https://www.dentsu-tempo.co.jp/
松本:私は電通リテールマーケティングで、データアナリストをしています。普段の業務は、スーパーマーケットなどのID-POSデータや、レシートデータを使って、人起点での購買データ分析を行っています。
個人のIDがひもづいたID-POSでは、プライバシーを保護した上で、 例えば「去年このブランドを買った人は、今年これを買うようになった」「この商品を買った人は同じカゴにこういう商品を入れている」といったレベルの分析が可能です。レシートデータなら、この店舗を利用された方が他にどんなお店を利用しているのかという「買い回り」状況を分析したりできます。
電通リテールマーケティングという会社は、リテールプロモーション、リテールメディアを活用した販促ソリューション、フィールドグラウンダー(店舗巡回・店頭営業)を得意としています。特に各種データ分析をもとに検証を行い、仮説を立て、企画を立案できるのが強みです。
電通リテールマーケティング
https://dentsu-rm.co.jp/
林:両社とも社名の通り、店舗、リテールについての知見が豊富なので、例えば電通リテールマーケティングが調査分析をして電通tempoが企画を担当するなど、2社で全部の工程をカバーできます。今回のジェネキュン以外でも、一緒に仕事に取り組むケースはよくありますよね。
──まさにリテールの専門家チームですね。そんな2社によるジェネキュンとは、どんなものなのでしょうか。
林:ジェネキュンは、電通tempo と電通リテールマーケティングの知見を合わせて、Z世代に刺さるような店頭での企画を考えるプロジェクトです。
現在、ジェネキュンの取り組みは4つあります。
林:ジェネキュンのメインメンバーは、両社からZ世代の社員が2人ずつ選抜されており、あとは施策に応じてサブメンバーが加わります。今回は本音調査ということで、調査分析のプロである松本さんに入ってもらいました。
──今回の調査は、どういった経緯で行われたのでしょうか。
林:私たちのクライアントは、次の時代の購買の主役となるZ世代に、店頭に来てもらいたいと考えています。そこで、Z世代の購買行動を探り、より良い売り場をつくるアイデアを得るために、2023年秋に調査を実施しました。
Z世代は、ゴチャゴチャした売り場が好きだった!?
──本音調査から見えたZ世代のインサイトで、印象的だったものをいくつか教えてください。
林:いろいろありますが、まず大きかったのは、「Z世代は商品がたくさん陳列された、ゴチャゴチャとした売り場が好き」ということですね。私も同じZ世代として、実はこの結果はちょっと意外でした。Z世代というと、キレイに整頓されているものを好むし、モノをあまり持たないミニマリストが多いイメージを持っていたんです。
松本:「ゴチャゴチャとして、商品がたくさんある売り場が好き?」という質問に対する回答が、Z世代では「そう思う」と「ややそう思う」を合わせて47.4%と、ほぼ半数に達しています。これに対し、その他の世代は27.6%で、Z世代とは19.8ポイントの差があります。かなりはっきりと傾向が分かれました。
林:Z世代は「商品がたくさんある売り場から自分が好きなものを見つけたり、トレンドを探してたりしている」という声が多く聞かれました。SNSで見かけたトレンドを自分の目で確認するために店頭に行き、そこでさらにトレンドを知るような使われ方をしているようです。
ゴチャゴチャとして商品がたくさんある売り場というのは、マイナス的な意味はなく、宝探しをしているかのような楽しい店舗のことをイメージしています。
──例えばドン・キホーテやヴィレッジヴァンガードのようなお店のことでしょうか。
林:はい。Z世代が普段よく行くお店としては、他に3COINS、ロフト、ハンズ、プラザも挙がっています。いずれも商品が店頭にたくさんあって、思わず足を運んでみたくなるようなお店ですよね。
松本:どの世代でも、お店選びのポイントとしては「売り場の楽しさ」を挙げる方が多かったのですが、Z世代の場合はさらに「トレンドが分かる」「SNS映えする」といった回答が多く見られました。
──SNS映えというのは、お店と商品、両方でしょうか?
林:そうですね、近年はお店側がSNS映えするようにPOPを工夫をして、店内撮影OKにしているケースも出てきました。また、SNS映えする商品を店頭でアピールすることもあります。例えばチーズの新商品を出したときに、「このチーズを使ってアレンジレシピをつくって投稿してね」という告知をしたり。
──お客さんが、映える売り場の様子をSNSに投稿して、それを見た人がお店に行くという循環を狙っているわけですね。
林:そう思います。最近は、電通tempoでも「Z世代に刺さって、どんどんSNSで拡散してもらえるような仕掛けを考えてほしい」というクライアントからの依頼が増えているんです。
Z世代は「予定外」の買い物が多い!?
──購買行動では、どんなインサイトが得られましたか?
松本:「予定外の買い物」をする割合が、Z世代では他世代よりも高かったことです。特にコスメのカテゴリでは、他の世代と比較して+11.3ポイントと、顕著に傾向が現れました。
──なるほど。それはつまり、Z世代では「無駄遣い」が多いということでしょうか?
松本:それがそうではないようで、実は「買い物に行くときは、きっちり予算を決める」と答えた割合も、他の世代より高いんです。
──きっちり予算を決めるけど、予定外の買い物をするというのは少し不思議な結果ですね。なぜ予定外の買い物が発生するのでしょうか?
松本:調査で目立ったのは、「好きな有名人やキャラクターなどとコラボしていたから」という回答です。「食品」「日用品」「コスメ」の3カテゴリで質問したのですが、Z世代では全てのカテゴリにおいて「好きな有名人やキャラクター~」という回答が突出していました。
林:つまり、予算や買うものを決めてお店に行くけど、そこでたまたま“推し”のポップアップをやっていたり、自分の好きなキャラクターとコラボをしているのを見て、思わず商品を買ってしまうということですね。もうZ世代の間では、推しのタレントやキャラクターがいるのが当たり前になっています。やっぱり推しのことになると、お財布のひもがゆるんでしまうのではないでしょうか。
──先ほど、予定外の買い物は「コスメ」のカテゴリで特に多く見られたとのことですが、具体的にはどういうシーンが想定されるでしょうか。
林:これは私自身の体験ですが、例えばプラザに入ったときに、店頭にモニターがありますよね。そこに自分の好きなアーティストの出演動画が流れていて、「この商品おすすめ」と言っていたんです。それで「え、こんなコラボしてたの、知らなかった!」と興奮したことがあります(笑)。実はそういうことって、実際にお店に行ってみないと分からないことも多いんです。
松本:私は調査の前は「デジタルネイティブなZ世代は、ECサイトで効率よく買い物をしているのではないか」という先入観を持っていたのですが、お店の楽しい雰囲気を味わったり、「買った」という強い実感を得られるといった、リアルイベントとしての購買体験を求めているのかもしれないなと今は思っています。
つまり、リアル店舗での購買体験は“コト消費的”な面があるんですよね。今回、「店頭で商品を購入する理由」も聞いているのですが、「接客してほしいから」「友達や家族と一緒に選べるから」という声が、Z世代ではかなり多くありました。言ってみれば人とのコミュニケーションもイベントの一種ですからね。Z世代にとっては、コト消費的な体験が得られるのがリアル店舗の魅力であり、そこで発生した出会いやイベントに応じて「予定外の購買」が発生しているのかなと。
林:たしかに、店頭でやっている限定イベントやポップアップストアにも関心が高いようです。私の同世代の友人にも、買い物はできるだけ店頭に足を運ぶという人がいるのですが、ECでワンクリックで買うのと、店頭で店員さんから自分に似合う色を教えてもらって買うのとでは、同じ商品であってもモノに対する思い入れが違ってくると言っていました。ECでは得られない、「買い物自体をイベントとして楽しんだ思い出」をつくることがポイントになっているんですね。
企業よりインフルエンサーや友人の情報を信頼するZ世代
──商品選びについては、Z世代特有のインサイトはありますか?
松本:Z世代は、他の世代と比べると「流行の商品」を選ぶ傾向が高いという結果が得られました。「トレンドや流行を意識して選ぶか」という質問に対して、「そう思う」「ややそう思う」と答えたZ世代は50%を超えており、他の世代より20ポイント以上も高くなっています。
林:Z世代は子供の頃からソーシャルメディアに馴染んでいて、日々移り変わるトレンド情報に敏感なのと、学生であれば日常的に友人から情報を得る機会も多いからではないでしょうか。SNSでは、昔よりもはるかに情報が速く、広く拡散しますよね。
加えて、Z世代の購買行動は、「トレンドをチェック→商品を購入→SNSに載せる」という一連の行動が「セット」になっていることもあります。単に欲しい商品を購入して使うだけではなく、買ったものをみんなに見てもらうところまでが大事なんです。
──「みんなに見せる」ことが前提の買い物だから、トレンドを強く意識するわけですね。
松本:そうだと思います。先ほどの「SNS映えする売り場」が好まれる話も、他世代よりトレンドを重視する姿勢と関係しているのかなと。また、Z世代は、特にSNSで熱心に情報収集をしているようです。調査で「商品を購入する前に、事前にネットで情報収集する」と回答した割合を見ると、「そう思う」「ややそう思う」を合わせた割合が、他の世代より11.3ポイント高くなっています。
林:情報収集に熱心な背景についてですが、Z世代は倹約指向があり、「買い物で失敗したくない」という思いが強い傾向があるようなんです。失敗を避けるために、事前にSNSで口コミをたくさん調べて、予算を決めてからお店に行くのだと思います。
──Z世代は、主にどんなプラットフォームから情報を得ているのでしょう?
林:今回の調査では具体的なプラットフォーム名まで聞いていませんが、普段、Z世代の方のお話しを聞いていると 、商品のカテゴリによって違います。そして、複数のソーシャルメディアを横断的に活用するのが当たり前になっています。例えばYouTubeではある程度時間を割いた洋服の着用動画があったり。Instagramには新しく発売された食品をまとめてくれるアカウントがあったり。
以前、電通tempoであるワークショップを実施した際、「誰からの情報を一番信頼していますか?」という質問に対して、Z世代の全員が「企業よりも、友人や自分が好きなインフルエンサーの情報を信じる」と答えていました。それも、大御所のインフルエンサーよりも、ジャンルを絞ったマイクロインフルエンサーなど、「自分と生活がかけ離れていない、親近感が持てるような人」が実際に使ってみた口コミ情報が信頼できるという人が多いようです。
Z世代は「店頭での販促施策」が効きやすい?
──デジタルネイティブであるZ世代ですが、実際は店頭に行く理由がたくさんあるんですね。
林:今回お伝えしてきたように、店員さんとのコミュニケーションや、新しいトレンド発見など、買い物を“コト消費”として捉えているのがやはり大きいです。そのため、Z世代に対しての販促は、店頭でアプローチできる場面が多いのではないかと思います。
松本:Z世代は買い物経験が上の世代よりも少ないこともあって、何を買うべきなのか、「失敗」しないための判断材料を欲しているように思います。そこをうまくサポートできる販促施策を売り場でできれば、効果的なのではないでしょうか。
──例えばこんな販促施策があったら面白いというアイデアはありますか?
林:たくさん商品があるのは、売り場の楽しさにつながる一方で、今はやっているものが分かりにくいという面もあります。そこで、「売り上げランキング」が表示されたPOPがあると便利じゃないかなと思っています。それも単なる全体売り上げではなくて、例えば「韓国が好きな20代が今注目しているコスメランキング」みたいに、細かく年代や部門が分かれていてくれると、欲しいものにたどり着きやすいかなと。
松本:店頭の話とは少し逸れてしまいますが、Z世代のような若い世代を取り込むための施策は、プロ野球のようなスポーツコンテンツにおいても重要だと感じています。実際にコンテンツとコラボしたグッズや、選手を推しにしている方に向けたグッズを販売しているのも目にします。他にも「失敗しない」という意味で考えると、コラボなどで興味を持ってもらった後に、実際に球場に足を運んでもらうための「観戦のハードルを下げる情報発信」も重要だと感じます。目的に応じた観戦スタイルを発信していくことで、失敗のない満足度の高い体験を 提供できるのではないでしょうか。
──広い意味での推しの存在が、Z世代の心をつかむ鍵になりそうですね。本日はありがとうございました!
<編集後記>
Z世代は、意外にもゴチャゴチャした売り場が好きで、お店の雰囲気を味わいたい。そこでしか出会えない“推し”のプロモーションを見たり、店員さんと会話を交わしたり、友達と相談したりしながら、商品を選びたい。つまり、買い物が“コト消費”になっている。そういう場であることが、ECサイトにはないリアル店舗の魅力なのかもしれません。
次回は、Z世代プランナーが考える「エモく楽しむ売り場づくり」について伺います。お楽しみに!
【調査概要】
Z世代的 小売りへの本音調査レポート
「スーパーマーケット」「コンビニエンスストア」「ドラッグストア」「バラエティショップ」の4種類の店舗について、それらのお店での買い物の価値観や行動を調査。
・調査目的:Z世代の買い物における価値観や実店舗での行動実態を把握する
・調査期間:2023年11月8日(木)~11月9日(金)
・調査エリア:全国(いずれかで月1回以上、店舗に訪れる15歳~27歳/30歳~59歳の男女)
・調査方法:ネットリサーチ
・有効回答数:800人 ※Z世代500人※学生を250人、学生以外を250人で構成/30代100人/40代100人/50代100人)
さらなる調査データは電通tempoウェブサイトでチェック!
https://www.dentsu-tempo.co.jp/case/