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デジタルプラットフォーマー活用で進化する店頭販促No.2

ここまで進化した!デジタル販促の最新事例

2024/12/17

近年、FMCG(日用消費財)系メーカーを中心とした企業で重要度が増している「店頭販促」の打ち手として、大手プラットフォーマーのIDデータを活用したデジタル販促が大きく進化しています。

電通、電通デジタル、電通プロモーションプラスの3社はデジタル販促推進チーム「Boostore」を立ち上げ、さまざまなクライアントの販促領域における最適なプラットフォーマー選定とソリューション提供を展開しています。

前回の記事では、店頭販促で起きている課題・ニーズと、その解決につなげるためのデジタル販促の新潮流を紹介しました。今回は、実際にBoostoreチームで取り組んだユースケースをもとにデジタル販促を成功させるためのポイントをお伝えします。

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(左から)電通デジタル 飯田真悠氏/電通プロモーションプラス 石井天平氏/電通デジタル 加藤光氏/電通 阿部萌子氏

 導線をシンプルにする「フリクションレス」「決済連動」へのニーズが急増

──改めて、Boostoreのプロジェクト概要を簡単に教えてください。

石井:クライアントの店頭や販促領域のマーケティング課題を解決するために、国内電通グループ横断で包括的なソリューション開発・提案に取り組んでいるチームです。大きな特徴の一つとしては、各種プラットフォーマーのデータを起点にしたソリューションを提供可能で、特定のプラットフォーマーに縛られない“プラットフォーマーフリー”という考えのもと、クライアントの商品特性やニーズを踏まえて最適な施策を提案しています。

──さまざまなクライアントと向き合っていると思いますが、これからデジタル販促にチャレンジしたいと考えている企業からは、どのような相談が多いのでしょうか?

加藤:私たちはプラットフォーマー各社のIDデータを活用した販促のことを総称して「デジタル販促」と呼んでいるのですが、いわゆるLINEやPayPayを活用したキャンペーンが世の中に浸透していく中で、企業のデジタル販促に対する認知・関心は高まっていると感じます。

一方、数あるプラットフォーマーの中で何を選べば良いのかが分からないという相談をいただくことが増えています。売上を上げたい、特定の小売・流通との商談に使える武器が欲しい、共通のIDベースで継続的にキャンペーンを展開したいなど、さまざまなニーズや課題がある中で、どのプラットフォーマーを使い、どのような設計をすべきなのかに悩まれている企業が多いのかなと。

──特に最近ニーズが高まっていると感じる点はありますか?

加藤:キャンペーン参加までの導線をシンプルにする「フリクションレス」に関するご要望をいただくケースが増えています。従来のキャンペーンだとシールを集めてハガキで送ったり、レシートをもらって撮影した画像をアップロードしたりと、応募に手間がかかることがキャンペーン参加のボトルネックになっていました。そこで、例えば対象商品を特定の決済方法で購入することで自動的に応募できる「決済連動」のキャンペーン施策など、キャンペーン参加のステップをできる限り減らして離脱されにくい導線を設計することが求められています。

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電通デジタル 加藤光氏

顧客体験を高めるキャンペーンを低コストで継続!

──実際に“離脱”や“フリクションレス”に対する課題を解決した事例はありますか?

阿部:大手ビールメーカー様との取り組みで、キャンペーンに参加するお客様の負担を減らし、もっと楽しく参加できる体験を設計したいという会話の中から生まれたのが、購買証明ソリューション「SCAN DA CAN」です。缶特有の個体差をAIが検出し、ユニーク判定やブランド判定を行うことで、お客様が撮影した缶の1本1本を違う缶として認識し、飲んだ缶の本数に応じてポイントを付与します。

お客様は缶のフタを開けて撮影するだけでキャンペーン応募ができ、さらにスキャンする過程でアニメーションを流すことで、手軽で楽しい応募体験を実現しました。他の飲料メーカー様にもご活用いただき、缶以外の容器にも対応するほか、応募時にゲームに参加できる仕組みを設計するなど、クライアントのニーズに合わせてさまざまなキャンペーンを展開しています。

scan da can

──ソリューション開発にあたって、特に工夫した点はありますか?

阿部:キャンペーンを実施しながら、AIモデルの精度をスピーディに改善していったところです。スキャンがうまくできない事象が起きている場合は、リアルタイムに改善することはもちろん、状況に応じて新機能をキャンペーン期間中に実装するなど、改善点を見つけて素早く対応することで精度向上を行っています。このようにスピード感を持ってシステム改善が実現できるのは、国内電通グループで開発から実装まで内製しているという強みが発揮できているからだと考えています。

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電通 阿部萌子氏

──キャンペーンに参加したお客様の反響で印象に残っていることはありますか?

阿部:スキャンの読み取り成功/失敗をお知らせするアニメーションにIPキャラクターを活用したのですが、あえて読み取りに失敗し、その画面を出してSNSに投稿して楽しむお客様がいました。たまにレアな演出が出るようにしたのですが、それも結構SNSで投稿されていて、スキャンする、という応募体験を楽しんでもらえているのはうれしかったですね。

──クライアントからの反応はいかがですか?

阿部:従来のキャンペーンと比べて、手軽に楽しく応募できることから、応募数の増加が見込めただけでなく、一度AIモデルを構築すれば繰り返し使えるので、コスト面でもメリットを感じていただけています。その結果、1回限りのキャンペーンで終わるのではなく、継続してSCAN DA CANを活用したキャンペーンを実施していただいております。

LINEミニアプリを活用したマイレージプログラムでKPI 100%を達成

──前回の記事では、マーケティングの潮流がフロー型からストック型に変化しているという話がありました。ストック型のデジタル販促にはどのようなものがあるのか、具体例を教えてください。

石井:LINEのミニアプリを活用した飲料メーカー様のキャンペーン事例を紹介します。クライアントはBoostoreの「LINEで応募」というソリューションを活用し、LINE公式アカウントを軸とした網羅的な販促キャンペーンを実施。これらの取り組みを通して新規のお客様も売上も一定数増加しました。その次の課題として、獲得した新規顧客のロイヤル化・ファン化を促進したいというご要望をいただきました。

そこで、LINEのミニアプリでマイレージプログラムを展開しました。マイレージプログラムとは、お客様は商品を購入してバーコード等を読み取るたびにデジタルポイントが貯まり、賞品などに引き換えできるというものです。実際に日常的に飲まれる飲料ですと、非常に多くのお客様にご利用いただいているという実感があります。これにより、お客様と継続的にコミュニケーションを取ることができるようになり、IDを軸にした施策の効果測定やマーケティング戦略が可能となります。

──マイレージプログラムを設計する上で、工夫したことはありますか?

石井:例えば、一定の条件をクリアすると特別なバッジがもらえるコレクション機能や、購入回数に応じてランクが上がり、ランク限定の賞品に応募できるなど、お客様が使い続けたくなるような体験を設計しています。

また、複数チャネルに対応した購買証明も工夫したポイントの一つです。飲料はスーパーやコンビニ、ドラッグストア、自販機、映画館など、さまざまな販売チャネルで購入することができます。そこで、購買証明をレシートやQRコードだけでなく、条件付きではありますがJANコードやバーコードなどにも対応させることで、あらゆる販売チャネルでマイレージプログラムを活用できるようにしました。なお、この仕組みはマイレージプログラムに限らずさまざまなキャンペーンに応用できるため、新規顧客獲得向けの「LINEで応募」でも購買の場所を問わずに応募できるようにアップデートしています。

──クライアントからの反応はいかがですか?

石井:キャンペーン開始から1年も経たずにKPIを100%達成するなど、一定の効果が得られていることについて喜んでいただいております。もともと、お客様のロイヤル化・ファン化を目的としていた中で、多くのお客様が複数回購入していますし、実際に毎日バーコードやレシートを読み込んで何回もキャンペーンに参加してくれる人が多数いることが分かっています。

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電通プロモーションプラス 石井天平氏

チャネルを横断した中長期的なマーケティング施策の高度化に貢献

──決済連動やフリクションレスを実現した事例はありますか?

飯田:はい、飲料メーカー様との取り組みで、販促キャンペーンによる新規獲得や売上アップだけでなく、施策を通じて得られたデータをお客様の同意許諾のもと活用することでマーケティングの効率化や高度化、さらに部署を超えて全社的なデジタルリテラシー向上も推進していきたいというご要望をいただきました。

そこで、PayPayを活用した決済連動型のポイント還元キャンペーンを実施するとともに、デジタル販促キャンペーンの効果予測を可能にするBoostoreの
シミュレーションツール「SP COMPASS」を活用して、キャンペーン参加意向の高いIDの抽出と広告配信のターゲティングを行いました。施策結果を分析してみると、「SP COMPASS」にて抽出した参加意向の高いIDほど実際の購買率も高いことが分かり、クライアントからも好評をいただいております。

──このキャンペーンで工夫したポイントを教えてください。

飯田:オフラインとオンライン、いずれの販売チャネルでも共通IDで参加できる施策にしたところです。お客様の行動はどんどん多様化し、買う場所や時間も違えば、買い方もこまめに一つずつ買う人、まとめ買いする人などさまざまで、それぞれのお客様の行動に合わせたマーケティングを展開していく必要があります。しかし、多くの組織が機能別に分かれているためデータや知見が分断されているのが現状です。

今回、チャネルを横断して共通IDをベースにした施策を展開することで、オンライン・オフラインを超えて顧客理解を深めることができるようになり、マーケティング施策の効率化・高度化はもちろん、部署を超えたデジタルリテラシーの向上にも貢献しています。

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電通デジタル 飯田真悠氏

加藤:また、デジタル販促によるキャンペーンは、流通各社の棚を獲得するための商談においても大きな効果を発揮しています。流通各社のあいだでもLINEやPayPayのキャンペーンに対する認知・関心は高まっているので、キャンペーンをすること自体が付加価値になり得ます。実際に店頭POPの設置率も通常のPOPとは比べ物にならないぐらい高いというデータがあり、それがキャンペーン参加率の向上にもつながっています。

例えば、日用消費財メーカー様の場合、食器用洗剤と洗濯用洗剤、歯ブラシ、石けんなど、ブランド横断キャンペーンを実施すると、それぞれ売り場が異なるので、店内での買い回りが起きるという流通側のメリットがあります。

──これからデジタル販促にチャレンジしてみたいという企業に向けて、デジタル販促を成功させるためのポイントを教えてください。

加藤:キャンペーン参加までのステップを減らすというフリクションレスや、お客様がキャンペーンに参加したくなるようなインセンティブ設計が大切なのは前提として、そこから中長期的視点に広げてどういうデータを蓄積・活用していくべきなのかを考える必要があります。

そして何よりも、キャンペーンは参加するお客様がいないと成り立たない施策なので、まずはキャンペーンを認知してもらうことが大事ですし、商品を購入してキャンペーンに参加してもらい、その後も利用し続けてもらうという、キャンペーン全体の統合設計が非常に重要だと思います。

飯田:一過性の取り組みで終わらせるのではなく、データを蓄積・活用し、他のマーケティング活動にも展開してくことがポイントですよね。どこで告知すれば参加してもらいやすいのか、店頭POPが良いのか、デジタルアドが良いのか、デジタルならどこに配信すれば良いのか、どういうセグメントで、どういうコピーで訴求すべきか、など、実際の購買につながった指標をもとに検証するところまで活用できるようになると、中長期的に大きな成果が得られるのではないかと思います。

Boostoreチームから、デジタル販促の新たなトレンドを創出する

──最後に、Boostoreチームでこれから実現したいことや注力したいことを教えてください。

加藤:今回紹介した事例以外にもBoostoreではさまざまなソリューションを提供しておりまして、その一つに「買ったよフラグ」があります。これは事前にエントリーしたお客様にバーコードを付与し、流通各社のPOSと連動して購買証明を判定することで、リアルタイムでインセンティブを受け取れるようになるというもの。今後、対応可能な流通が全国規模で大幅に増える予定なので、より多くのクライアントにご活用いただけるように注力していきたいと考えています。

阿部:「SCAN DA CAN」については、ポイントを貯めたのにキャンペーンに応募しない人や、応募が面倒で参加しない人を減らすために、スキャンをしたタイミングで、すぐに当選or落選が分かるシステムを実装したいと考えています。また、現在は飲料がメインですが、お菓子のパッケージなど他の商品の個体判定が可能になれば、より多くのクライアントに価値提供できるようになると思うので、AIをはじめとする技術開発にも注力していきたいです。

また、中長期的には海外展開も視野に入れておりまして、すでに導入事例があったり、システム開発をまさに進めている国もあります。各国でに連携できるプラットフォーマーやシステムが異なるので、うまくチューニングしながら展開していきたいと考えています。

石井:私がチャレンジしたいのは、インセンティブなしでも参加してもらえるようなキャンペーン設計です。今は“お得要素”でお客様に参加してもらうキャンペーンが主流ですが、そうでなくても「面白そうだな」「参加してみたいな」と思ってもらえるようなアイデアをどんどん考えて、売上やブランド醸成に貢献することはもちろん、お客様がワクワクするようなキャンペーンを作っていきたいですね。

飯田:分かります。データが偏ってしまわないためにも、より幅広いお客様に参加してもらえるような仕掛けができると良いですよね。また、キャンペーン設計一つとっても見せ方や設計のトレンドがどんどん移り変わっていくような状況の中で、Boostoreチームから新しいデジタル販促のトレンドを作っていけるようになりたいと思っています。

加藤:そうですね、プラットフォーマー側も新しいメニューを開発するなど、どんどん進化しているので、プラットフォーマーとも密に連携しながら新しい潮流を生み出していきたいですね。

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