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データから読み解く訪日中国人旅行者のリアル2025No.2

訪日中国人旅行者の実像① Ctripでのオンライン調査結果から読み解く

2025/07/04

訪日中国人旅行客のリアル2025

データをフル活用して、インサイトを深堀りし、訪日中国人旅行者の実像に迫る本連載。前回は、中国人の海外旅行に関する動向を中国政府などの公開データなどから振り返り、旅行者数の回復状況やニーズの変化など、基礎的な情報を整理しました。

今回は、電通が提携関係にある中国最大手のオンライン旅行代理店「Ctrip(シートリップ)」の協力を得て2023年12月と25年3月に実施した独自の訪日中国人旅行者オンライン調査から得られた変化も踏まえ、旅行目的や購買傾向、消費パターンなど、インバウンドマーケティングの実務に活用できる重要なポイントを明らかにします。

 


2024年の訪日中国人旅行者数は回復

日本政府観光局(JNTO)のデータによると、2024年の中国からの訪日客数は698万1200人で、19年と比較すると約73%まで回復しています。上期の回復率は低かったものの、下期の回復率は高くなってきています。電通の訪日中国人旅行者向けのインバウンド事業のパートナーである、中国最大手のオンライン旅行代理店Ctripのデータによると、25年は24年と比べて約20%の訪日客の増加が見込まれるということもあり、25年には訪日中国人旅行者数はコロナ前の水準に近くなると予想されます。

訪日中国人旅行者数(日本政府観光局公式発表)


Ctripを利用して中国から日本を訪れた旅行者数の傾向

Ctrip提供データからわかる訪日中国人旅行者の旅行行動

Ctripの協力を得て、24年にCtripを利用して日本を訪れた中国人旅行者の傾向に関するデータも得ることができました。ここから、以下のような特徴が見えてきました。

•    Ctripを利用して日本を訪れた中国人旅行者は、コロナ禍前の19年とコロナ禍明け直後の23年を比較すると、全期間を通じて過去最高を更新。
•    男性と女性の比率は、4:6で女性が多い。
•    年齢は30代後半が最も大きなボリュームゾーンで、30代前半と40代前半がそれに続く。
•    居住都市は、1級・新1級・2級※の大都市が中心。
•    1年間の日本訪問数は1回が多数ではあるが、2回以上訪れる人も一定数存在している。
•    旅行日数は4〜6日が4割強を占める。一方、3日以内の短期で訪れる層も2割存在している。
•    旅行スタイルとしては、個人旅行が半数を超えており、団体旅行は減少傾向にある。

※中国では、都市を人口や経済レベルなどさまざまな観点から1級(北京・上海など)・新1級(青島・成都など)〜5級までの6つに分けられている。習慣的なものであり法律などで定められた正式な行政区分ではないが、一般的には中国の大手経済誌「第一財経」とその傘下のシンクタンクが発表する「都市魅力ランキング」が基準とされ、毎年少しずつ顔ぶれが変わる。
参考サイト;中国広播電視台「第一财经发布《2025新一线城市魅力排行榜》 ,刷新过往重新发现」
https://www.smg.cn/review/202505/0166469.html
 

 
Ctripデータ 2024年訪日旅行者プロファイル①

また、日本旅行にあたって、ビザや航空券、宿泊予約、テーマパークなどのチケット購入などが、日本を訪問するどれくらい前のタイミングで行われるのかについても、Ctripによる予約データの分析から以下の傾向が見られます。

•    ビザの手配:旅行出発の1カ月以上前から手配する方が半数以上を占める。
•    航空券の予約:大多数が出発の2週間ほど前までに購入を終えている。
•    宿泊予約やテーマパークなどのチケット購入:航空券の予約よりも後に予約・手配されることが増えてきており、出発1週間を切った段階でチケットを手配する層がかなりの数を占めている。

訪日中国人旅行者の旅行開始前の旅行手配の傾向
出典:Ctripデータ

電通独自調査からわかる訪日中国人旅行者の傾向

電通は、Ctripを利用して24年から25年にかけての年末年始および25年の春節期間中に日本を訪問した中国人旅行者に対して、25年3月にオンライン調査を実施しました。この調査はコロナ禍が収束し、中国人の海外旅行が再開した直後の23年末にも実施しており、今回が2回目の調査となります。

訪日中国人旅行者の訪日の目的や旅行時の行動についての最新の傾向を把握するとともに、コロナ禍直後と訪日中国人旅行者数が戻ってきた現在とを比較することで、旅行目的や意識・期待することについて、明らかにすることを目的に実施しました。

【調査概要】
調査期間:2025年3月中旬〜下旬
調査対象:2024年から2025年にかけての年末年始、および、2025年の春節期間中にCtripにて航空券あるいはホテル宿泊を手配した利用者
調査方法:対象者に対してSMSで回答依頼を送付し、ウェブサイトでのオンライン調査
有効回答数:449件

 

ここからは、23年末と25年3月の調査で意識・行動の違いが顕著に出た項目について掘り下げていきたいと思います。

調査から得られたポイント1:旅行の計画や旅行中に活用するチャネルの変化→SNSが重要に

旅行の計画や旅行中に活用するチャネルの変化 
コロナ禍による旅行制限などがあり、23年の時点ではCtripなどの旅行サイトにおける情報収集がメインになっていた。だが、この2年間で多くの中国人が海外旅行を再開したこともあり、その行動がSNSなどに積極的に投稿・共有されるようになった。また、中国人の海外旅行スタイルが、団体旅行から個人が自分で旅程を計画・行動する、自由旅行にシフトしてきており、旅行にあたっての情報収集のチャネルとして、直接の人間関係や、SNSによる口コミの重要性が増してきている状況にある。

調査から得られたポイント2:日本旅行中の買い物関連の変化

1)購入する商品の計画を立てる時期:より出発時期に近く

購入する商品の計画を立てる時期
 日本への旅行の目的については、前回の調査と大きな変化はなかったが、旅行中の買い物をする場所や内容については変化が起きている。「日本への旅行の計画を立てる以前の時点から計画的に買うものを決める」という層が減少する一方、「旅行出発日の1〜2週間前から検討を始める」という層が多くなってきている。また、あらかじめ計画を立てるのではなく、「旅行中のウィンドーショッピングを楽しみながら購入する商品を決定する」というスタイルも増えてきている。

2)買い物をする場所:ドラッグストアでの購入率が高く

買い物をする場所
買い物をする場所としては、ほとんどのチャネルが増加しているが、特にドラッグストアが大きく伸びている。百貨店やニッチブランドなどの小規模店舗がそれに続く。 

3)旅行中に支出を計画している予算:増加傾向

旅行中に支出を計画している予算
参考:1元=20.17円(2025年6月27日時点※みずほ銀行・中値)

支出額は、前回よりも増えている。中国経済に対する懸念などのニュースもあるが、調査時点においては、人民元が日本円に比べて高い傾向が続いていることもあったことが考えられる。購入予定の商品カテゴリーについて、前回の調査ではトップだった「化粧品」が、「ファッション(アパレル・靴・アクセサリー)」にそのトップの座を譲ることになった。

4)旅行中に購入を検討している商品:ファッション&医薬品が増加

旅行中に購入を検討している商品


購入予定の商品カテゴリーについて、前回の調査ではトップだった「メイクアップ・スキンケア製品、美容機器 」が、「ファッション(アパレル・靴・アクセサリー)」にそのトップの座を譲ることになった。

購入意向商品カテゴリーの増減率では、「医薬品」カテゴリーについての伸び率が顕著である。「メイクアップ・スキンケア製品、美容機器」は前回よりも減っており、「アニメやマンガのグッズ 」や「家電製品」の割合は他に比べて伸び率が低い。これらのカテゴリーについては、近年多くの企業が中国に進出してきており、中国国内で入手しやすくなったことで、日本で買う必要性の見定めが行われていることが考えられる。

このレポートの詳細についてご興味・関心がある方は、下記までお問い合わせください。
お問い合わせ先:dentsu-gbc@dentsu.co.jp


次回は、電通中国のデジタル・オーディエンス・データ・プラットフォーム「Merkury」による、訪日中国人旅行者に関する人物像(ペルソナ)を明らかにする0次分析を通じて、どのようなプロファイルを持つ中国人が日本を訪問しているのか、その特徴を明らかにし、企業や自治体のコミュニケーション戦略や実施に活用できるインサイトを探ります。


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