ワカモンのすべてNo.16
【データ】オンラインメガホンとオフラインメガホン:10人10色のワカモンたち(後編)
2014/06/18
前回は、電通ワカモンと電通総研メディアイノベーション研究部が共同で分析・作成した10のクラスターの全体像をご紹介しました。今回は、その中から特徴的な2つのタイプを掘り下げてご紹介します。
まとめたいシェアしたい「SNSめだちたがり」(構成比9.1%)
このタイプは、情報発信そのものが好きなプチ・キュレーター。情報の処理能力は高く、ネットに転がっている情報を拾い上げて人に教えるのが得意で、知識欲と他者から評価されたい願望が強い。SNS利用率、活用度、フォロー数/フォロワー数は共に高く、リアルな生活の中でもネタ探しを欠かさず、しかし発信するときに自分の意見やコメントはあまり重ねない“編集者”タイプです。
SNSが普及したことで、気軽に情報発信ができるようになりましたが、若者にヒアリングをしていると、キュレーションサービスである「まとめサイトできのうの話題を知った」「"ツイッターで友だちがリツイート(RT)していたのを見て○○を知った」といった答えがよく返ってきます。
このタイプでは、そんな「記事やリンクをまとめる」「リツイートやシェアで広める」プチ・キュレーターの若者を可視化しています。ただ、キュレーターの前に“プチ”とつけているのは、深い意味でのキュレーション(編集)行為ではなく、リツイートやシェアボタンをワンクリックしてキュレーションをしている子たち、だから。
なぜ“プチ”キュレーションなのか。前提には、他人からよく思われたい、目立ちたい、というマインドがあります。でも、例えばネットに転がっている情報をSNSに投げ込むとき、「自分の意見」を載せて発信するのではなく、そのままシェアして「その情報を知っている自分(どや!)」という自己演出をする。
「新しいものやおもしろいものを最初に言いたい」「ちょっとだけ優越感を持ちたい」欲がある一方で、SNS上でも「空気を読んで」います。データ上でも「周りの人から浮かないために気を使っている」という意識が強く出ていたり、後に実施したグループインタビューの中でも、「SNSではあまり自分をさらけ出したくない」「相手の気分を害さないようなことだけ書く」といった発言が出てきたりしました。
最近の若者は、SNSの影響もあり、付き合うコミュニティーの数が増えています。そんな中で、キャラ立ちしたい、目立ちたいけど、イタイやつと思われたくない、さらけ出しすぎるのはちょっと…と思ってしまうその結果が、ネット上の流行りのコンテンツや情報にうまく乗ってキャラづくり、というマインドと行動ではないでしょうか。
ネットに賭けてる「自己プロデュースキャラ」(構成比4.4%)
一方で、「自分」を積極的に発信するタイプの「自己プロデュースキャラ」というタイプ。
実名で有名になりたいタイプで、いわゆる“アルファブロガー”願望があり、セルフブランディングを常に意識して行動している。興味関心が多岐にわたっていて、挑戦意欲・上昇志向が強い。最も特徴的なのは、自分のブログやホームページなど、自分なりの発信手段を持っている子が多い、ということです。パソコンやスマホから、積極的に発信・書き込みを行っており、そこには自分の意見もポストする。このタイプも、周りの反応を非常に気にしているのは共通しています。
ただ、彼ら彼女たちは、発信する内容の中心に「自分」があるので、「自分の日常の様子をネットに投稿して、友人・知人と共有するのが好き」「メディアを通じて、知らなかった人とつながるのは楽しい」といった特徴がデータ上でも強く出ていて、強いキャラ立ち意識とコミュニケーション欲求が見てとれます。先ほどの「SNSめだちたがり」のちょっと微妙なマインドとは対照的。
グループインタビューでの発言でも、「ブログの文章を書くときは、より良く見せたいので、絵文字も使わないでガチっとした言葉を使う」「食べものだけの写真は反応が薄いので、ツイッターやフェイスブックには自分が食べている写真を載せる」という、発信のパフォーマンスを最大限に高めようとする意識が見られました。
「オンラインメガホン」と「オフラインメガホン」
ところで今回、「SNSめだちたがり」や「自己プロデュースキャラ」に注目した理由は2つあります。1つ目は、SNSという情報発信・共有ツールが普及したからこそ生まれたタイプだという点、もう1つは、コミュニケーション戦略を考えるときに、彼ら彼女らがネット上での拡散装置になりうるからです。
話題を広める、拡散することをメガホンに例えると、前回ご紹介した「ムードメーカー」というタイプはリアルな体験、リアルなコミュニケーションの中で話題を広げていくので【オフラインメガホン】、今回ご紹介したネット上でキュレーションや発信をする「SNSめだちたがり」「自己プロデュースキャラ」は【オンラインメガホン】という特性があります。
若者に興味を持ってもらい、彼らの口の端に上り、広げてもらうためにはターゲット理解が必須ですが、この3つのタイプのコミュニケーション特性だけを見ても、それぞれ異なることが分かると思います。
さて、2回に分けて、「メディア・コミュニケーションでみる若者まるわかりクラスター」についてご紹介しました。
それぞれのタイプごとに、どんなツボがあり、興味を持ち、どんなコミュニケーションをして、そしてどう消費をするのかは大きく異なります。今回ご紹介した「SNSめだちたがり」のツボは、例えばシェアして「いいね!」と言われるお役立ちコンテンツや情報でしょうし、「自己プロデュースキャラ」のツボは、そこに行くこと、それを買うことで自分のスタータス感が上がるような場所や人、モノといった価値基準になると思います。
10人10色のワカモン像が、いまどきの若者を理解し、幸せな関係をつくるための、ほんの手助けになれば幸いです。
あなたのまわりにいる若者は、どのタイプですか?
(コラム:小木真 イラスト:小島洋介)
〈分析概要〉
d-campデータを元に因子分析、クラスター分析を実施した。
使用データ:d-camp2012(調査実施期間: 2012/10~2013/07 )
調査エリア:関東1都6県
分析対象:中学生を除く15歳~29歳男女(1163ss)
調査方法:アンケート用紙による郵送留置法
調査実施機関:電通マクロミルインサイト
【ワカモンプロフィール】
電通若者研究部(通称:ワカモン)は、高校生・大学生を中心にした若者のリアルな実態・マインドと 向き合い、彼らの“今”から、半歩先の未来を明るく活性化するヒントを探るプランニングチームです。彼らのインサイトからこれからの未来を予見し、若者と 社会がよりよい関係を築けるような新ビジネスを実現しています。現在プロジェクトメンバーは、東京本社・関西支社・中部支社に計14名所属しています。ワカモンFacebookページでも情報発信中(https://www.facebook.com/wakamon.dentsu)。