デジタルときどきグローバルNo.9
太陽のないカンヌで、うれしくなったり、落ち込んだり。
2013/07/04
みなさま、ご無沙汰してしまってすみません!6月の更新がちょっと遅くなったのは、カンヌに行っていたからであります。「いいなぁ、南仏のさらりとした風と海と太陽が楽しめて」とか思った人…、違います!今回は、カンヌに行ったというよりは、カンヌの会議室に行った、というのが正しい感じです。
今年の佐々木は、Cannes Lions International Festival of Creativityに、Design Lionsの審査員として参加してきました。このデザイン部門への応募数は、全世界から2373件。審査はすべて会場内で行われるので、イベントが始まる5日も前から現地に入り、まだ閑散としたカンヌの街を横目に見つつ、朝9時前から、太陽の当たらない薄暗い会議室でせっせと審査して、議論して、終わるころにはもう日が沈んでいるのです。名物のロゼワインを飲む暇も、プリプリのムール貝さんに挨拶する余裕もなく、コーヒーとピザの毎日でした。
審査はほんとうにタフでしたが、でも、Design Lionsはとっても面白かった!個人的には、FilmやFilm Craftに次いで、カンヌで最も面白い部門のひとつだと思いました。日本語でデザインというと、アートやクラフトを指すイメージがありますが、それだけではありません。デザインとは、何かの「課題」を解決する性能が、形になったもの。機能のデザイン、経験のデザイン、サービスのデザイン、デジタルのデザイン、などなど、評価するポイントは多岐にわたります。そしてデザインは、みんなが最後に触ったり見たりする部分。アイデアがいちばん濃く出る部分だなあと感じています。
デザイン部門についてさらに特筆すべきなのは、日本の強さです。アイデアがあって、クリーンで、細部にこだわったデザインは、各国の審査員たちに認められました。審査員の多くは広告系ではなく、世界的なデザインブティックの著名人たちで、佐々木としてはとても刺激的だったのですが、さらにその人たちが、日本のデザインに一目置いてくれていて、自分の仕事じゃないけれども何だかうれしくて。日本からの全エントリーは120本(全体の5.1%)ですが、金銀銅のライオンを受賞したのがそのうち14本(全受賞の10.1%)と、かなり良い成績。
この、デザイン部門における日本の強さを見ると、かつてサイバー部門で日本が目立っていたのを思い出します。今のサイバー部門は、ストーリーテリングの深さ、クラフトへのエネルギーのかけ方が以前と少し変わってきていて、日本のものも簡単には入賞できない状況になってきていますよね。むむむ、デジタル係としては、がんばらなきゃ…。
1週間以上におよぶ審査が終わると、気がつけばカンヌも終盤。電通セミナー以外は見る余裕もなく、太陽にあたる暇もなく、他の部門で日本が苦戦していることにとても危機感を感じ、世界のすてきなアイデアの洪水にやられて、「自分は何をやっているんだろう、もっともっと良いものをつくらないと…」と、焦って、悔しくて、悲しくなって、ドヨーンと落ち込んでいました。カンヌの熱病です。日本のみなさんとの飲み会にも行かず、夜のカンヌを一人ふらふらしてGutter Barにたどり着いたら、なんと、前回のインタビューで紹介したラウルと、Dentsu America赴任時代のルーマニア・クリエイターたちに偶然再会…。なんて世界は狭いんだろう。彼らのInstagram Menuが銅賞を受賞したとのこと。落ち込んだ自分がまた突然うれしくなって、ちょっと元気をもらい、ちょっと飲み過ぎたのでした。