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広報パーソン必見!上場企業479社の広報力No.5

広報オクトパスモデル

その1「情報収集力」

2014/07/19

日本の上場企業479社を対象に当研究所が行った「第1回企業の広報活動に関する調査」の連載も5回目を迎える。この回からは、いよいよ本調査で用いた独自分析モデル「広報オクトパスモデル分析」について解説していきたい(図表1)。「オクトパス」(タコ)とあるように、企業の広報活動を活動フローと組織の視点から「8つの広報力」に分解して考えているのが、この調査の大きな特徴の一つだ。「8つの広報力」は準備フェーズの「情報収集力」「情報分析力」「戦略構築力」「情報創造力」、アウトリーチ/エンゲージメントフェーズの「情報発信力」「関係構築力」、組織力強化フェーズの「危機管理力」「広報組織力」の合計8カテゴリーで構成されている。今回は「情報収集力」に注目してみよう。

図表1 広報力総合評価と広報活動オクトパスモデル分析スコア
 

「情報収集力」の高さで広報力第1位は「電力・ガス業界」

回答いただいた上場企業479社の全体傾向としては、「情報発信力」が最も高い。広報力1位を獲得した「電力・ガス」業界も同様で、全体平均を大きく上回る61.5点を獲得している(図表1)。同業界が総合1位を獲得したもう一つの理由として「情報収集力」の高さが挙げられる。情報収集力の全体平均は37.0点なのに対して、同業界はプラス23.3の60.3点を獲得(図表2)。2位の「食料品」業界の49.2点を大きく引き離したことが、総合1位獲得の大きな要因といえる。電力業界は昨今の厳しい環境の中で、広報部門がコミュニケーションの相手方の考え方を把握・理解しようと努力している結果、活動量が増加したのではないかと推察する。

図表2 広報力総合評価と情報収集力

「情報収集力」とは「自社の広報環境を把握する力」

当研究所ではこの「情報収集力(Intelligence)」を「自社や業界・競合に対するメディアの評判や、ステークホルダーの動静などについて収集・把握する能力」と定義している。つまり「自社の広報環境を把握する力」である。報道やソーシャルメディアなどの公開情報に加え、独自人脈による記者や有識者などからの非公開情報の収集に至るまで、10の設問で構成されている(図表3)。

図表3 情報収集力に関する企業の広報活動実態(情報収集力の10設問から主要設問を抜粋)
※回答した上場企業479社が情報収集力関連で当てはまると回答した数をパーセンテージ表示している。
  星印は、専門家パネルが重要視した上位3項目(数字は順位)

自社の「評判」、情報収集できていますか?

これら設問への回答から分かった企業の活動実態と、専門家パネル(記者・有識者など)が重要と判断した項目とのギャップが興味深い。専門家が最も重要だと答えたのは「生活者・顧客の意識・実態や、自社への評価を定期的に収集している」という設問。実践している企業は、20.3%にとどまった(図表3)。一方、実行する企業が最も多かった項目は「自社に関する新聞・雑誌などでの報道について、継続的にモニタリングを実施」(76.2%)であった。

近年の広報部門に期待される役割は、パブリシティーなどのメディアリレーションズ活動一辺倒から、商品やサービスだけではなく、企業そのものに対する生活者や顧客の親しみや好感などのレピュテーションマネジメントに変化してきている。企業側にその認識が低いことが専門家パネルとの意識のギャップにつながったと推察される。

ソーシャルメディアなどインターネットの普及によってオープン情報の収集が簡便になった半面、情報量の多さに負けていないか、本当に必要なステークホルダーの考え方や深層心理などの非公開情報の収集ができているかを、広報責任者は再点検してみてはいかがだろうか。

孫子の兵法で有名な一文に「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」という言葉がある。広報という競合企業との情報戦の前には、知るべきことを知る努力が必要と考える。


企業広報戦略研究所(C.S.I.)

企業広報戦略研究所について
企業広報戦略研究所(Corporate communication Strategic studies Institute : 略称CSI)とは、企業経営や広報の専門家(大学教授・研究者など)と連携して、企業の広報戦略・体制等について調査・分析・研究を行う電通パブリックリレーションズ内の研究組織です。