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電通スマプラNo.3

スマートフォンゲームに「ポチッ」とお金を使うキモチって?(後編)

2014/08/21

前回の記事では、もともとネガティブに感じていたスマートフォンゲームでの課金行動も、課金に応じる理由が自分の中で明確になるとポジティブに感じる人が多い、ということを説明しました。その背景にあるのは「プチ欲求」を満たしやすいスマートフォンゲームならではの特性があるからです。今回は「ゲームにお金を使うキモチ」をもう少し掘り下げていきたいと思います。

1.「だって○○だから」。課金に応じる理由付けはさまざま

人がお金を使う時に、「対価」という概念があります。ペットボトル飲料であれば150~160円ぐらい、牛丼であれば300~400円ぐらい、ランチであれば500~800円ぐらいという形で、私たちは前もって商品やサービスの金額感を感覚的に把握しています。そして、「安い」「適正」「高い」を自分の中で判断し、お金を支払うことで、その対価として商品やサービスを手に入れています。

一方でスマートフォンゲームは、例えば、「アイテム一つ100円」と言われた時に、実体のある「モノ」でもなければ、現実世界で提供を受ける「サービス」でもないので、「安い」「適正」「高い」の判断がなかなか難しいのです。100円は適正な価格なのか。本当は50円でも高いかもしれないし、200円でも安いのかもしれない。つまり、「100円の価値があるかどうか」は、生活者側の判断に委ねられます。本当にお金を払う価値があるのか悩ましい、けれども自分の中でうごめくプチ欲求は、満たしたい。葛藤し、悩みます。

そこで、キーワードになるのは、「だって○○だから」。

スマートフォンゲームへの課金が、適正かどうかを判断し、自分自身で納得するために、自分の普段の消費行動の中で、置き換えが可能な消費行動を探した上で、「だって○○だから」と思うことで、スマートフォンゲームへの課金行動の価値を規定するのです。「だって、デザート1個、購入したと思えばいいし♪」「だって、先輩に誘われて飲み会に1回行ったと思えばいいし♪」など、自分なりにスマートフォンゲームにお金を払う「理由」とそれによって得られる「対価」を結び付けているのです。

先日、スマートフォンゲームで課金に応じている人を対象に、グループインタビューを実施しましたが、そこで見られたたくさんの「だって○○だから」は、年代、職業、普段のお金の使い方、スマートフォンゲームへの熱中度など、背景が異なることにより、それぞれの個性的な理由が詰まっていて、非常に興味深いものでした。

スマートフォンゲームの課金に応じる理由は、細分化しています。だからこそ、スマートフォンゲームにおいて、たくさんの「だって○○だから」が生まれていると、電通スマプラは考えます。

加えて、生活者にとって、バーチャル通貨(クレジットカード、電子マネー、通信キャリア経由の決済など、現金に依らない通貨)に対する抵抗感が少なくなっていることも、スマートフォンゲームの課金に応じやすくなっている要因の一つと考えられます。クレジットカードや電子マネーの普及で、紙幣や硬貨のリアルなお金に触れる機会はだんだんと少なくなっています。そのため、「実体のあるお金を支払い、実体のあるモノやサービスの提供を受ける」形ではない、スマートフォンゲームのアイテムのようにバーチャルな「モノ」に、バーチャルな通貨で支払いをする行為が、抵抗を感じずに当たり前のように行われているのだと考えられます。

2.人の欲求を分析すると見えてきた、8タイプの「だって○○だから」

「一般的な欲求」と「金銭感覚」の2つを掛け合わせて分析を行うと、スマートフォン上で課金に応じる「だって○○だから」の気持ちが見えてくる。そんな考えに基づいて、電通スマプラでは「スマホ課金・購買クラスター」を作成しました。

【図1】スマホ課金・購買クラスター

スマホ課金・購買クラスター

すると、普段の生活で起こる一般的な欲求と、スマートフォンゲームの楽しみ方や課金のタイプに特徴があることが分かりました。タイプは大きく「8つ」に分類でき、それぞれを「○○消費層」と名付けました。

例えば、「イケイケ大人消費層」の人は、ONもOFFも忙しく過ごすタイプの人。消費意欲や達成意欲が強いため、つい「レアアイテムが欲しい」とか、「もうちょっと先に進めたい」とか、そんな理由でスマートフォンゲームの課金にもバリバリ応じます。理由は、「だって時間ないし」。時間をお金で買う欲求が強いのです。8クラスター中、最もスマートフォンゲームへの支払額が高いのも納得です。

「キラキラ努力消費層」は、向上心が強く、自己努力を惜しまない一方で、周囲から自分がどう見られているかも気にします。キーワードは「だって、キラ充でいたいし」。自分がキラキラと輝き続けるための努力を怠らず、そのためにお金を使う事もいとわないのです。購買行動において「カワイイ」ことがひとつの大切な判断基準。スマートフォンゲームも「見た目がカワイイ」キャラクターや装飾アイテムであれば課金に応じ、自分のテンションを高めたり、友人知人に披露したりします。もちろん、「外見」のみならず、「内面」も高めたい意識が強いので、レベル上げやキャラクター・アイテムの強化なども積極的に行います。「内面も外見も、ステキでありたい」という欲求が、自分自身のみならずゲームの中でも反映されていると考えられます。

反対に、私も当てはまる「ハァハァ探究消費層」は、ゲームへの関心は高いのですが、世の中の流行に対する関心は薄い層です。「だって、自分がよければいいし」という言葉に表現されるように、「自分が好きなものを突き詰める」タイプの人なので、「ハマる」と時間もお金も使いますが、「ハマる」までに時間がかかり、自分の基準で「つまらない」と思うと一切関心を示さないのが特徴です。この層の人は、スマートフォンゲーム以外にもアニメ・マンガ・アイドル・サブカルチャーなど、「エンタメコンテンツ」自体への関心が高く、時間やお金を消費しているため、相対的にスマートフォンゲームに対する関心は低くなります。そのため、平均して見てみると、あまりスマートフォンゲームで課金に応じません(全8クラスター中、最下位)。

なので、実はスマートフォンゲームで課金に応じるのは、「非リア充」「ゲーマー」といったイメージの人よりも、むしろ「リア充」と定義される人の方、という傾向にあります。

3.スマートフォンゲーム市場は、これからも拡大する

もちろん、スマートフォンゲームを利用していて課金に応じていない人、スマートフォンゲームをプレーしていない人は、まだまだ多く存在しています。

【図2】スマートフォンゲーム課金/無料利用者の割合

スマートフォンゲーム課金/無料利用者の割合

もともと「課金に対してはネガティブ」と、9割もの人が回答していたはずなのに(図3・連載#02参照)、今はスマートフォンゲームにお金と時間を使っている現課金利用者のように、現無料利用者も、ネガティブな印象がある課金行為に対して、何かのキッカケで「だって、○○だから」と自分なりの課金理由が見つかることで、ハードルを乗り越える可能性は高く、まだまだスマートフォンゲーム市場は拡大するといえるのではないでしょうか。

【図3】現在課金ユーザーの課金前の抵抗感

現在課金ユーザーの課金前の抵抗感

ゲーム大国と呼ばれる日本では、もともとテレビゲームが受容されやすい文化があります。私自身も、中学・高校・大学と、ゲームと共に青春の階段を一歩ずつ上ってきました。プラットフォームや遊び方、画質のクオリティーやお金の支払い方など、ゲームをプレーする方法は時代と共に変遷を遂げていますが、カタチは変わっても「ゲームで楽しみたい!!」という本質的な欲求を常に満たしてきたことに変わりはありません。

そして現在、常に持ち歩いているスマートフォンで、ゲームをいつでも楽しむことができるからこそ、ついつい起こる「プチ欲求」に、時に無料で、時に課金に応じてより楽しむ。気付けばスマートフォンゲームの話題で友人と盛り上がる機会も増えました。かつて「ケータイゲーム」と呼ばれていた頃には、あまり無かった現象に思えます。どんどんメジャー化していくスマートフォンゲームは、これからも、新しいエンターテインメントを提供し、より多くの人をとりこにしていくでしょう。

そして何より、ゲームって、「やっぱり、面白い!」もの。「ゲームは1日1時間!」という某名人の名言がありますが、自分なりに合った時間とお金の使い方のバランスで、毎日がちょっと楽しくなる、すてきなエンターテイメントであり続けてほしいと思います。

次回は、スマートフォンゲームからは少し離れて、「パソコン」「スマートフォン」「タブレット」といった、スマートデバイスの特性について、ご説明したいと思います。

<実施調査について>
「電通スマプラ スマートフォンゲーム課金に関する自主調査」
調査方法:PCインターネット調査
実施時期:2014年5月12日(月)~5月16日(金)
対象:全国15~59歳男女
スクリーニング調査:18,000サンプル
本調査:3,000サンプル
※以下の3層を、スクリーニング調査よりそれぞれ1,000サンプル抽出して回答を得た
1)スマートフォンゲーム現利用者(課金利用あり)
2)スマートフォンゲーム現利用者(課金利用なし)
3)スマートフォンゲーム現非利用者(休止者を含む)

 

電通スマプラロゴマーク
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◎「電通スマプラ」とは?
スマートフォンを中心としたスマートデバイス(パソコン、タブレットなど)上のビジネスの立ち上げ、成長・拡大に貢献するプランニング・ユニットです。
チーム内には、スマートフォンのゲームやアプリなどのマーケティング・コミュニケーションの実績が豊富な戦略プランナー、コミュニケーションプランナー、コンサルタント、コピーライター、プロデューサーなど、多種多様な人材をそろえています。また、一人一人が何かしらのオタクであるため、課題への深堀りはもちろん持ち前の個性と人間力でクライアントに向き合うことをモットーに、マーケティング活動を支援していきます。