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広報パーソン必見!上場企業479社の広報力No.8

広報オクトパスモデル

その4「情報創造力」

2014/09/01

日本の上場企業479社を対象に企業広報戦略研究所が行った「第1回企業の広報活動に関する調査」の連載も8回目。今回は、企業の広報活動を「8つの広報力」に分解して考える「広報オクトパスモデル分析」の4つ目、「情報創造力」について解説したい。

今回取り上げる「情報創造力」は調査の結果、企業の広報力を見る8つの指標の中で、最も低い値にとどまった。図表2にある10の項目の中で、最もスコアが高い項目は、「自社や自社製品・サービスについて、報道向け資料を作成している」(40.3%)。次いで「広報戦略に沿った、広報素材を準備している」(37.6%)が高いものの、どちらも4割前後にとどまり、その他8項目は、すべて3割に満たない。情報発信の“要”となる「情報創造力」。なぜ、この指標のスコアが最低なのか?

図表2_情報創造力に関する企業の広報活動実態(情報分析力の10設問から主要設問を抜粋)
※回答した上場企業479社が情報創造力関連で当てはまると回答した数をパーセンテージ表示している。星印は、専門家パネルが重要視した上位3項目(数字は順位)。
 

「情報創造力」とは、いわゆるクリエーティブ力である

前回までの「情報収集力」「情報分析力」「戦略構築力」の回で説明した「情報を集めて、分析して、戦略をつくる」。この流れでいえば、「情報創造力」とは戦略に合わせて、コンテンツを編集・加工し、表現する力のこと。言い換えれば、ステークホルダーとの関係づくりに欠かせない、いくつかの要素をデザインし、実際の情報発信につなげるクリエーティブ力。そのポイントは、「広報戦略に沿った表現」である。

そこで、専門家パネルが重要視した項目「広報戦略に沿った、PRメッセージ・ストーリーを策定している」に注目してみると、全体結果では27.1%だが、広報力総合評価の【SABC(注)の企業群のスコアはそれぞれ【S=64.4%/A=27.2%/B=12.7%/C=3.1%】となる。SとAの間には2倍以上の開きがある。つまり広報力の優秀さは、広報戦略にもとづく、メッセージ、ストーリーの開発にかかっていることが分かる。

(注)広報力総合評価は、8つの広報力すべての点数の合計が多い順に、回答企業を【S/A/B/C】の4つのランクに分けて評価をしたものである。

 
しかし、この「メッセージ、ストーリーの開発」がなかなか難しい。収集した情報を単に整理するだけでなく、キーメッセージ、キービジュアルを設定し、それを柱に広報展開しなければならない。4割近く(37.6%)が「広報戦略に沿った、広報素材を準備している」にもかかわらず、開発には至っていない状況が見えてくる。

「情報」の意味とは

では、「メッセージ、ストーリーの開発」のためには、何が必要なのか?
ここで取り上げたいのは「情報」という言葉である。この言葉の成り立ちにはいくつもの説があるが、その一つに、「情報」という言葉は、「情」と「報」で構成されており、「情」は人心を表し、「報」はデータや数字を表しているという解釈がある。これに従えば、情報の創造、すなわちクリエーティブで忘れてならないのは、人の心を動かすエモーショナルなメッセージやストーリーと、“データ=論理”である。

「トップが語る言葉」も情報創造力を高めるポイント

もう一つ重要なポイントは、「メッセージ、ストーリー」の“語り部”の存在である。今回の調査項目では、「トップのメッセージを専門的に作成する社内・外の体制がある」が23.4%、「トップのプレゼンテーション力・表現力を強化するためのトレーニングを定期的に実施している」が4.0%と低いが、企業トップが“語り部”の役割を果たすことは、実はとても重要である。人々の脳裏に残る論理的なデータとともに、エモーショナルに語りかけるトップが広報戦略の表現者として人々を動かし、良い関係を生み出すことを期待したい。


企業広報戦略研究所(C.S.I.)

企業広報戦略研究所について
企業広報戦略研究所(Corporate communication Strategic studies Institute : 略称CSI)とは、企業経営や広報の専門家(大学教授・研究者など)と連携して、企業の広報戦略・体制等について調査・分析・研究を行う電通パブリックリレーションズ内の研究組織です。