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ワカモンのすべてNo.24

田中里奈×西井美保子:前編

「青文字系ナンバー1読者モデルの『自己プロデュース力』とは?」

2014/09/17

10~20代の若者の「今とこれから」をリサーチする社内横断プランニングチーム・ワカモンの研究部員が、新しい生き方を模索する著名人と対談していきます。今回のゲストは、「青文字系」(東京の原宿などで多く見かけるガーリーでカジュアルな同性受けするファッションおよびそれらを多く取り上げる雑誌のこと)モデルを代表する田中里奈さん。さまざまなジャンルの企業とコラボ商品を企画するなど、読者モデルの枠組みを超えて活躍中の田中さんの持つ「自己プロデュース力」について、ワカモンメンバーの西井美保子さんが迫ります。

ワカモンメンバーの西井美保子さん(左)と、読者モデルの田中里奈さん

 

「自分が欲しい」から生まれるストーリーが大事

西井:田中さんは、企業とコラボして新商品を企画したり書籍を出したりなど、本当に幅広く活動されています。しかも、コラボする分野もアパレルメーカーに限らず、ヤフーやファミリーマートなどさまざまです。これだけ活動の幅が広い読者モデルは珍しいと思うのですが、いつごろからそういう活動を始めたんですか?

田中:大学生のときから青文字系の読者モデルをやっていますが、一方でひとりの女の子として普通に生活する中で、「こんな商品があったらいいな」「こういうのが欲しいな」と思うことがよくありました。初めはとりとめもなくアイデアが浮かぶだけで終わっていたんですけど、だんだんと義務感のようなものが生まれてきて…。

西井:義務感というと?

田中:誰しも「こんな商品があったらいいな」と思うことはあるけど、それを実現させるのはなかなか難しいじゃないですか。でも、私はたまたま読者モデルとして、ブログやツイッターなど情報発信できるメディアを持っているので、少しだけ実現しやすい位置にいる。だから、発信する手段のある人が女の子たちの気持ちを代弁すべきだと考えるようになって。当時、人間にはいろんな人生があって、その人にしかできないことが必ず1つあると思っていたんですけど、そのときに「私はこれだ!」と確信しました(笑)。

西井:結果的にその確信は正しかったのですね。今でこそさまざまな企業とのコラボを成功させていますけど、初めから順調だったんですか?

田中:最初は何をやるにしても専門性を身に付けないとダメだと思って、コラボする商品の知識をかき集めていました。でも、付け焼き刃の知識ではプロフェッショナルの方には絶対にかなわないし、自分らしさも出せない。じゃあ「私だからこそできること」って何だろうと考えたときに、これは読者モデルをやる中で身をもって痛感したことでもあるんですが、作り手側は専門的な知識を得れば得るほど、消費者の気持ちが見えなくなりがちなんですよね。使う人や読む人が本当に求めていることよりも、実現できるかどうかを優先してしまう。だから、私はいち消費者としての視点、ひとりの女の子としての視点で商品と向き合おうと思って。その立場からアイデアを発言するようになってから、納得のいく商品を生み出せるようになりました。

田中氏

西井:モノづくりに携わる上で、その視点は重要ですよね。消費者や女の子の気持ちに寄り添うときに、気を付けていることはありますか?

田中:ベースは自分基準です。自分が心から気に入って着たり使ったりできるかどうか。その理想を追求した上で、ツイッターやイベントなどでみんなの反応や着ている服などを観察して、アイデアを膨らませています。本当に迷ったときはツイッターで「これとこれ、どっちが好き?」と直接聞いたりもしながら(笑)。あとは、ただアイテムだけで終わらせるのではなく、使う人がハッピーになれるような付加価値を付けるようにしています。例えば、ある企業から「食べ物とモノを一緒に売りたい」とだけ言われたことがありました。そのとき、私は夜中にちょっと後ろめたさを感じながら食べるスイーツがいちばんおいしいと思っていて、その時間をお気に入りのルームウエアを着て過ごせたらもっと幸せな気分になれると考えました。それで、「真夜中の女子会」というコンセプトを勝手に立てて、それに沿ったアイテムと世界観づくりをしました(笑)。そういったストーリーをつくることで、みんなもただ商品を使うだけじゃなくて、商品を通して毎日の生活をちょっぴり楽しくすることができるんじゃないかと思うんです。

西井:広告界でも今の話に近いところがあって、「リーズナブル消費」と呼んでいるのですが、特に若者は安いだけではなく、商品やサービスを利用する理由があるものにこそお金を使うようになってきています。商品やサービスができた背景や開発者の思い・過程などのストーリーに共感して、人の気持ちが動くという方向にシフトしています。田中さんはそれをひとりで自然に身に付けていてまさに自己プロデュース力が優れていることの証しですね。

 

自己プロデュースの第一歩は、あえて自分の所属する旗印を押し出すこと

西井:自己プロデュースに関連してセルフブランディングの話になるんですけど、ワカモンの調査をしていて感じたのは、ひとつのカテゴリーにくくられるのを嫌う人が多いこと。「ギャルだけどオタク」みたいなギャップを求める傾向があります。田中さんは、「青文字系」というカテゴライズに対する抵抗感はないのですか?

西井氏

田中:自分を説明するときのとっかかりとして、心に響く言葉やカテゴリーは大事だと思っています。それをきっかけに田中里奈を覚えてくれるかもしれないし、名前がなければ文化も根付きません。「青文字系」というカテゴリー自体がまだまだ世間一般に浸透していないので、説明する大変さはありますけど(笑)。

西井:自分のカテゴリーを決めることはある意味、覚悟を決めることにもつながるのでしょう。「自分はこうやって生きていくぞ」という旗印にするというか。

田中:私がいろんな企業とコラボできているのは、その旗印があってこそだと思うので、逆に積極的に活用しています。本質的には人前に出るよりも企画を考えたりモノづくりに携わる方が好きなんです。それをもっと良くするためにメディアに出ている部分もあって。

西井:近年は就職を考えるときにも大企業や公務員を選択する人が多くて、いわゆる安定志向といわれています。でも、大企業に就職することが目的になると、入社後のモチベーションが保てなくて辞めてしまう人も多いそうです。田中さんの場合は、芸能人になって有名になることが目的ではなく、根本にモノをつくりたいという思いがあって、そのツールとして読者モデルをやっている印象を受けました。

田中:無意識な部分も大きいんですけど、メディアで情報発信していく自己プロデュースと、モノづくりのプロデュースをバランス良くやっていけたら理想ですね。企業が求めている「田中里奈」の強みもそこだと思うので。

※対談後編は9/24(水)に更新予定です。


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【ワカモンプロフィール】
電通若者研究部(通称:ワカモン)は、高校生・大学生を中心にした若者のリアルな実態・マインドと向き合い、彼らの“今”から、半歩先の未来を明るく活性化するヒントを探るプランニングチームです。彼らのインサイトからこれからの未来を予見し、若者と 社会がよりよい関係を築けるような新ビジネスを実現しています。現在プロジェクトメンバーは、東京本社・関西支社・中部支社に計14名所属しています。ワカモンFacebookページでも情報発信中。