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Dentsu Design TalkNo.35

たっぷり「アイデアとプレゼン」の話(後編)

2014/10/11

電通デザイントーク第122回は『たっぷり「アイデアとプレゼン」の話』と題し、博報堂ケトルの木村健太郎氏、POOLの小西利行氏、ワンスカイの福里真一氏の3名のクリエーターを迎え、9月9日に電通ホールで開かれた。様々な発見と気づきに満ちた、3時間のトークライブの後編をお届けする。

長く続くシリーズ広告の理由

木村:福里さんのCMは、「宇宙人ジョーンズ」も「TOYOTOWN」もそうだけど、長続きするシリーズが多いと感じます。その秘訣は何ですか?

 

福里:それは、私の我慢強さです(笑)。いわゆるクリエーターの方々は、新しいことをしたい欲求が強いと思うんです。でも、私は同じ企画フレームにいろんなことを入れ込んでやっていくのが面白く思えるというか。ドラマの「水戸黄門」みたいに、長続きしている番組にはパターンがあって、それを飽きずに何十年も延々とやっている。そういうのが結構好きなんですよね。

木村:商品から発想すると3、4本で終わるところを、世相で展開していくから、ネタが尽きないんですね。福里さんの企画は商品から発想しているけど、時代や世相に接着しているのが面白い。その間のプロセスはどうなっているんですか?

福里:私の場合、その商品が人の人生にどう関わるかから考えていくので、どうしても人の暮らしを描くことになるから、世相が入ってきやすいんじゃないでしょうか。CMってテレビ番組と一緒に流れてくるものだから、CMと番組をあまり分けて考えなくていいと思っています。「タレント広告」って批判を浴びやすいですけど、冷静に考えればテレビ番組ならタレントばかり出ているのも、世相をネタにするのも普通ですよね。

 

小西:確かに「宇宙人ジョーンズ」も「TOYOTOWN」も時代を取り込めるし、楽しめるし、“番組化”していますね。ただ、一方でCMの中で言うべきことがたくさんありすぎるような、企業メッセージ満載にならざるを得ない仕事も多いでしょう。その頭の使い分けはどうしてるんですか。

福里:メッセージをたくさん言わないといけないなら、感じよく言った方がいいんだろうなと。例えばトヨタの「こども店長」は、いくらエコカー減税や補助金の説明をしても、こどもだとちょっと感じがいい。しかも説明している時はしっかりしているのに、ママの前では甘えん坊に戻る、そういう、こどもならではのかわいらしさを描くことで聞きやすくなるのかなと。

企画書を書くコツ、通るプレゼンのコツ

小西:お2人には、企画書を書く自分なりのコツってありますか。

木村:昔、毎週プレゼンをしていたクライアントの方に、なぜいつも自分のプレゼンは受けがイマイチなんでしょうか、と聞いたことがあるんです。そうしたら「その時間は午後だから眠いんだよ。別件のことを考えているし。それに最初は誰も君のことを信用していないよ」と言われて、ああそうなんだと。だから企画書は、そういう人たちの目を覚まさせ、集中させて、信頼してもらえるように工夫して書いています。

小西:僕のプレゼンは、「難しいのはここです、それをこうすると簡単になります」というのが基本的なロジックです。難しいことを簡単にすると人は喜ぶ、というのが僕の持論で。あと、最初にキーワードを出すようにしていて、その選び方は「それ、相手(世の中)がうれしいかな?」「それ、誰かに話すかな?」の2つだけ。「相手がうれしい」は突破力で、「誰に話すか」は波及力。いつもできるだけシンプルにコンセプト化して、分かりやすく、皆が動きやすいフレーズを作るようにしています。日産のセレナの時は「モノより思い出。」っていうシンプルな言葉が一番刺さると思ったし、プレミアムモルツも「最高金賞のビール」とストレートに言うのが一番売れるんじゃないかと。本当は福里さんみたいな、面白い系のCMも作りたいんですけど(笑)。

 

福里:私の企画書は、自分が企画を考えていった思考のプロセスをそのまま書いて、だからCMはこうなりました、と話します。それが一番自分も話しやすいし、相手も聞きやすいかなと。

木村:僕は真逆なんです。「考えたプロセスで話すな」と師匠から教えられたので、1回書いた企画書を、相手の立場からもう一度書き直しています。一番効くツボはここです、そのために一番いい方法はこれです、では一緒に体験してみましょう、と。ある日テレビでこんな情報を見て、中吊りでイベントがあることを知って、ネットでもニュースになっていて…とカスタマージャーニー風に話すことが多いです。人の企画書ってなかなか目にする機会はないけど、全然違うんでしょうね。今度、こっそり見せ合いましょう(笑)。

<了>

 

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企画プロデュース:電通人事局・金原亜紀