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日本企業がめざすべき新しいマーケティングの世界No.2

コンテンツマーケティングを

効率的に活用できる時代が来る

2014/10/21

相手に興味深い情報を送るジャーナリズム的手法

山本:昨今注目されているビッグデータに基づくマーケティングは、ある意味、マーケティング3.0以降と相反する部分があるように感じています。マーケティング3.0とは、すなわち「参加の時代」になることだとコトラー教授はおっしゃっています。つまり、マーケターと生活者とが一種のパートナーとして連携することになる。ところが、ビッグデータを活用しようとすると、単なる最適化プロセスに陥ってしまう可能性があります。つまり、マーケターが生活者をコントロールしようとして最適化を図るという構図ですね。

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コトラー:ビッグデータを、生活者をコントロールするためのツールと見なすのは望ましくありません。ビッグデータは、セグメントや大小さまざまなトレンドを特定し、活用するためのツールです。ビッグデータは、マーケターが働き掛けたいと考える個々人との間にどのような関係性を結ぶべきかについては、何も教えてくれません

企業は生活者を巻き込み、関係性を築くための努力をしなければなりません。消費者のニーズや関心に働き掛けて巻き込むのです。こうした発想から生まれた新しい動きが、コンテンツマーケティングです。

かつては、お客さまに対して何かお知らせを送る場合、そこには必ず売り込みの文句がありました。「ただ今、3日間限定のセール中! 今すぐお買い上げを」といった具合ですね。でも今は、もっと興味を引くコンテンツを送り、お客さまに「あなたが何に関心を抱いているのか、何を大切にしているのか知っています。興味をお持ちいただけるような情報がたくさんありますし、喜んでご提供しますよ」という姿勢を貫かなくてはなりません。コンテンツマーケティングの活用には、多くの期待が寄せられています。それはある意味、ジャーナリズムともいえ、相手にとって興味深い情報を送る手法です。

といっても、実は、かつて多くのセールスマンが実践していた手法と大して変わりはないのです。セールスマンが、販売先の購買担当者と仲良くなり、相手が熱心なサッカーファンであることを知ったとしましょう。するとセールスマンは、折につけサッカーに関する興味深い話を仕入れてきます。
「やあ、ジョー。とても面白いサッカーの話を聞いたんだよ。キミも興味があるかもしれないね」…という調子ですね。その結果、二人の関係性は一層強いものになっていきます。

企業と生活者が共有する記憶をコンテンツ化する

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山本:生活者にとってもブランドにとっても、意義のあるコンテンツマーケティングですが、活用していく上で、指針やコツといったものはありますか。

コトラー:コンテンツマーケティングは新しい概念なので、お客さまとの関係をどのくらい強化できたのか、どこまでいくとやり過ぎなのか、あるいはそもそも必要なのか不必要なのか、ということを判断する十分なガイドラインがまだできていないのです。今後、購買者に対して本当に効果があったのか、購買者はコンテンツを実際に見たのか。そんな効果測定ができる手法を確立しなければなりません。しかし、あと1~2年もすれば、コンテンツマーケティングを効率的に活用できる時代が来ると確信しています。

山本:例えば企業であれば、自社の古い記録、歴史などを掘り起こすことによって人々の感情を揺り動かすものがたくさん出てくることも考えられます。特に日本のブランドの場合、そういう傾向が強いと思います。日本の生活者は、日本経済の成長とともに生きてきました。国産ブランドの歩みを通して日本は経済復興を果たしたからです。

コトラー:企業が生活者と共有する記憶を発掘し、コンテンツ化して感動を呼び起こすというのは、面白い視点ですね。

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