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クラウドファンディングの本質は リスクの分かち合い

“社会”からリソースを得る「ソーシャル・ソーシング」の可能性 №7

  • 蓮村 俊彰

2014/11/11

クラウドファンディングの本質は

リスクの分かち合い

 
 
用語解説
【ソーシャル・ソーシング】
アイデア、資金、スキルなど社会から必要なリソースを提供してもらうことで、社会の皆と共創していく仕組み。
【クラウドファンディング】
インターネットを介して広く個人からお金を集める仕組み。「寄付型」「購入型」「融資型」「投資型」など、さまざまな手法がある。狭義では購入型のみを指して使用されることがある。
【ファンドレイズ】
ある特定の目的のためにお金を集めること。

注1:本稿で特に断わりのない限りクラウドファンディングと記載した場合、「購入型」を指す。
注2:クラウドファンディングのプラットフォーマーは、「購入型」は特商法(仕組みにはよっては、資金決済法〈あるいは銀行法上〉)、「投資型」は金商法、「融資型」は貸金業法等の関連法規に則った営業が必要になる。
 

 

 

 

◆J-WAVEのクラウドファンディングプロジェクトが、初の続編へ!

連載第3回でご紹介したJ-WAVE LISTENERS’POWER PROGRAM「川崎の野菜“かわさきそだち”を広めるためのラジオ番組を作りたい!」のファンディングは無事に目標金額を達成し、10月29日に放送されました。そして、同プログラム初の続編放送に向けたファンディングが実施されています。

 
readyfor.jp/projects/KAWASAKISODACHI2
川崎産の野菜を広める為のラジオ番組を作りたい!【第2弾】


ファンディングで成立した番組によってリスナーや視聴者の反響を巻き起こし、続編の制作・放送に賛同する声が高まって、以降のファンディング支援の輪が更に拡大していく…。そんな放送とファンディングの循環が実現できれば、それはマスメディアの新しい可能性だと思います。その最初の試みといえます。

◆ニワトリが先か? タマゴが先か? クラウドファンディングのジレンマ

「クラウドファンディングによって番組を制作・放送し、そのマスメディアの影響力をもって次回のファンディングにつなげていく」。このサイクルが実現するとしても、初回放送のための“スタートアップ・ファンディング”は番組放送の力を借りずに告知・PRする必要があります。当たり前ですが、最初が一番難しいといえます。

ここから垣間見えるクラウドファンディングの性質があります。クラウドファンディングは「ニワトリが先か、タマゴが先か」ともいえる因果性のジレンマを抱えています。

不特定多数の生活者からインターネットを介して資金を募るという性質上、人気があるコンテンツや既に認知を得ているブランド、有名人・著名人によるファンディングは比較的成立しやすい。逆に無名の案件はファンディングの実施主体であるプロモーターが情熱をもって相応に頑張らないと成立しづらい、という状況が生じます(もちろん例外もあり、それがこの仕組みの醍醐味といえるのですが)。

現時点の国内クラウドファンディングプロジェクトの多くは、まだまだこれから人気や信頼を獲得していこうというスタートアップ段階のプロジェクトです。

リターンへの信頼がないから資金が集まらない。資金がないから魅力的なコンテンツ開発や告知・PRができずにリターンへの期待が広がらない。ニワトリが先か、タマゴが先か。

ただしかし、この議論はジレンマを打破するのに必要なリスクを誰が取るのか、という論点にこそ意味があります。そして、そこにこそクラウドファンディングの本質があるのだと考えています。

◆「支援してもらう」ことの本質とは

従来のビジネスの常識においては、開発や告知・PRといったイニシャルコストに対し、事業主がリスクを取って投資をしてきました。

資金をニワトリ、モノ・コンテンツ・サービスをタマゴとするなら、今までは事業主からリスクを取ってニワトリを用意し、生活者に魅力的なタマゴを見せることでジレンマを打開してきました。

クラウドファンディングは、従来事業主が負っていたリスクの一部を生活者にも負ってもらう仕組みといえます。
生活者にまだ見ぬタマゴを信用して買ってもらうことで、事業主がニワトリを用意できる。限定的ではありますが、生活者にある程度リスクテークをお願いすることが可能になったのです。これが「支援をしてもらう」という言葉の本当の意味だと思います。

まだ完成していないモノ・コンテンツ・サービスを企画段階で購入してもらい、その売上金を元手に開発や制作を行い、完成してから購入者(支援者)に引き渡す仕組みが、購入型クラウドファンディングです。開発リスクや在庫リスク、興行リスクといった事業リスクをヘッジできる仕組みとして、事業主にとって非常に魅力的です。しかしそのリスクは決してこの世界から消え去ったわけではなく、誰かが肩代わりしているだけです。つまり支援をする生活者に肩代わりをしてもらっているのです。

開発リスク(開発が遅れる、仕様が変わる)や在庫リスク(完成した商品が魅力に欠ける)、興行リスク(完成したコンテンツが面白くない)などに代表される事業リスクは、どんなに緻密に計画を立てようと、将来や未来といったものが不確実である限り避けられないものです。この不確実ながら将来実現する予定のモノ・コンテンツ・サービスを企画段階で先に購入してもらうことで、リスクを一部生活者に転嫁させてもらう仕組みがクラウドファンディングのファンクションの本質です。この本質を理解した上で、クラウドファンディングを如何に活用するかがとても大切だと感じています。

通常のビジネス構造/クラウドファンディングの構造

 

◆「購入型」のリスクとは

連載第3回の後半で、クラウドファンディングは資金集めを媒介とした仲間集めと捉えた方が適当だというお話をしました。私は、この場合の仲間とは「夢や目標を共有するだけでなく、リスクをも分かち合えるパートナー」だと考えています。リスクを分かち合うことで両者の間には今までにない太い絆が生まれると考えています。

J-WAVE LISTENERS’ POWER PROGRAMで協業しているREADYFORは「購入型」のクラウドファンディングです。「購入型」クラウドファンディングは「インターネット通信販売」の仕組みに則っています。「購入型」であれば必ずどこのプラットフォームでも「特定商取引法に基づく表記」として通信販売事業者であるプラットフォーム運営事業者の法定記載事項が明記されています(※)
(※)なお、「購入型」のクラウドファンディングでは、仕組みによっては、資金決済法(あるいは銀行業法)の規制がかかる場合があります。

「購入型」クラウドファンディングは、仕組みは通信販売で、その通信販売の売り上げをもって資金調達としています。しかしモノや体験を単純に前売りするのではなく、“夢や目標に共感・賛同し、リスクをも分かち合ってくれるパートナーを募る”という意識で挑む必要があります。プロモーターは支援者に対してパートナーになってくれたことへの深い感謝と信頼をもって接する必要があります。

もちろん、支援者のリスクは非常に限定的なものです。購入型クラウドファンディングは「売買契約」に整理されることが多いため、支援者が負うリスクはあくまで、自分が期待し、購入したモノやサービス、コンテンツが当初の期待通りであったか否か、という点です。事前に「購入」しているわけですがら、完成品が期待に沿わないことはあっても、商品が送られてこないといった例外的な場合を除き、支払金額分の価値が全くの無になることはありません。(ただし当然、実際の完成品が通常備えるべき性質を備えていない場合には、事業者が瑕疵担保責任を負う場合があります。)

◆ハイリスク・ハイリターンの「投資型」

これが「投資型」クラウドファンディングの場合、株式投資などと同じで、投資先の事業が失敗すれば出資資金が全くの無価値になる可能性があります。元本保証はありません。「購入型」と比べハイリスクといえます。しかしそのリスクがある分、出資先の事業が利益を上げた場合、配当金を得られるというリターンがあります。「投資型」クラウドファンディングで出資する人は「購入型」でいう「支援者」ではなく「出資者」と呼ばれます。

「投資型」クラウドファンディングは「金融商品」に該当するので、金融商品取引業者の登録を受けているプラットフォームでしかファンディングを行うことはできません。逆に、特定商取引法の範囲で営業する「購入型」クラウドファンディングで支援者に対して金銭的なリターンを行うことは金融商品取引法に抵触しますのでできません。あくまで製品やサービス、体験といった商品をリターンとしてお返しすることになり、支援者からの資金は「投資」されたのではなく「消費」されたことになります。

◆支援者は客以上、出資者未満のリスクテーカー

お客様、支援者、出資者、事業者のリスク分布を図にすると下記のようになります。

支援者は客以上、出資社未満のリスクテーカー
※単純化した図であり、必ずしも個別のケース全てに当てはまるとは限りません。

 

この図のように、支援者はお客様以上、出資者未満のリスクテーカーとなります。支援者が原則としてリスクの存在しない「お客様」意識を強く持っている場合、つまり支援者に「プロモーターのリスクの一部を引き受けてあげた」という自覚が無い場合、いざリスクが顕在化した際に大きなトラブルに発展する可能性が高くなります。

リスク顕在化の最も分かりやすい例は「支援した際(お金を支払った際)に期待したものと最終的に完成したものの間に差がある(こんなはずじゃなかったのに!)」というものです。質の良し悪しもありますし、センスの違い、好き嫌いの違いもあり得ます。

期待値と成果が余りに乖離すると当然クレームやトラブルにつながります。しかし、一方で、支援者にお客様意識しかないと、やはりクレームやトラブルを引き起こす要因となります。

◆夢や目標だけでなく、リスクをも分かち合えるパートナーシップ・絆の創出を

耳当たりの良い言葉を並べお金集めをするのではなく、「夢や目標を共有するとともに、リスクも分かち合う」というプロモーターと支援者との間のコンセンサスが必要です。そして何よりも両者の間の信頼、つまりパートナーシップが何より大切です。その上で、共有したリスクを回避すべく、両者が更に協働し、目標の実現を推進することが理想的な姿です。

クラウドファンディングは単発の資金調達ですが、ファンディングの後にも絆は残ります。そしてそれは蓄積されていき財産となります。このパートナーシップの創出こそ、クラウドファンディングの最も重要な使い方になるのではないでしょうか。