“社会”からリソースを得る「ソーシャル・ソーシング」の可能性No.8
ファンド拡大期のキープレーヤーとは
2014/12/09
※用語解説
【ソーシャル・ソーシング】
アイデア、資金、スキルなど社会から必要なリソースを提供してもらうことで、社会の皆と共創していく仕組み。
【クラウドファンディング】
インターネットを介して広く個人からお金を集める仕組み。「寄付型」「購入型」「融資型」「投資型」など、さまざまな手法がある。
【ファンドレイズ】
ある特定の目的のためにお金を集めること
連載第5回で、ファンドレイズにはコミュニティーの力が必要不可欠である旨を述べ、ファンドのプレーヤーを発起人、伝道者、支援者、応援者、無関心層、無認知層に分けて「ファンドレイズコミュニティー分析フレーム」(下図1)を図示しました。
今回はこの図をベースに資金面からのグループ分けをし、解説したいと思います。
◆資金面からプレーヤーを分類してみると
コミュニティーおよびその周辺を構成するプレーヤーを図示したのが下のファンド発起人であるプロモーターを頂点としたピラミッドです。
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この図を元に、それぞれのプレーヤーの帰属するマーケットおよび資金の特性を分類すると下のようになります。
図2: 資金面からのプレーヤー分類 |
◆スイートマネー(SWEET MONEY)とは
このフレームの「プロモーター」「エバンジェリスト」による支援金はいわゆる「スイートマネー」と呼ばれるものです。これはベンチャー業界でよく使われる用語です。資金を集めている人自身や非常に親しい人が出してくれるお金を指します。
スイートマネーはファンドのコンテンツ力やコンテキスト力といった連載第2回で示したファンドパワーが不足していたとしても、プロモーターの家族や友人・知人関係だけである程度は獲得できる資金です。
クラウドファンディングの中にはこの「スイートマネー」だけでファンドを成立させているものも存在しますが、規模に限界があるため多くは目標金額が最初から低く設定されています。ファンドが目標金額に達しないものも散見されます。
◆ウォームマーケット(WARM MARKET)とは
ウォームマーケットはダイレクトビジネスやネットワークビジネスの文脈で使われることの多い用語です。広義の関係者や購買経験者を対象とした販売戦略を考える際の概念です。不特定多数の新規顧客に営業する場合と比べて難易度やアプローチが違うため、ウォームマーケットとして区別されます。
知り合いなど、元々の人間関係が存在する「サポーター」は特にウォームマーケットといえます。
また「ファン」層については、ファンドの目的(コンテンツ力)や文脈(個人の趣味嗜好との整合性)において高い親和性があり、支援の呼び掛けが比較的受け入れられやすい傾向にあります。熱狂的なマニアやファンクラブ会員、同人には、購買経験者同様のロイヤルティーを期待できる場合もあるのです。なのでファンを対象としたファンディングも、一部ウォームマーケットと扱えると思います。
◆コールドマーケット(COLD MARKET)とは
上記のウォームマーケットの対語です。全く見ず知らずの人を対象に新規として営業をする場合の概念です。ピラミッド図でいうと、関与度の低いライトなファン層から無関心層、無認知層が含まれます。
最も支援を引き出しにくい層ですが、しかし、最大ボリューム層でもあります。
◆ファンドを急伸させるのは誰か
では、ファンドを大きく成長させる可能性を秘めているのはどの層なのでしょうか。
実は、最も支援を引き出しにくいコールドマーケットの最大マジョリティー層こそが、ファンドを爆発的に拡大させるのです。
海外の事例のように億を超えるファンドを成立させるには、このコールドマーケットをいかに開拓するかにかかっていると感じます。スイートマネーとウォームマーケットからの資金にのみ依拠している限り、なかなかファンドはスケールしません。
ファンドレイズを成功させるには、コールドマーケットを開拓する戦略を練っていく必要があるのです。