感動テクノロジーの世界No.4
テンションあがる?!インタラクティブな演出
2015/01/27
前回のLED特集の中で、お客さんの動きに呼応して光り方が変わるLEDクリスマスツリーの事例をご紹介しました。第4回のコラムではウルトラテクノロジスト集団・チームラボ代表の猪子寿之さんのインタビューを交えながら「インタラクティブ」について深掘していきます。
音声や動作など人の自然な動きに呼応して操作できる「インタラクティブ」、つまり双方向性のある演出は、これまでの「ステージ」や「ディスプレー」のような演出側と鑑賞側の明確な線引きをあいまいにし、お客さんを作品へと引き込んでゆく・自分ごと化させる効果があります。
「インタラクティブ」であることの効果を、以下の3つに分類して、事例を元に考えてみたいと思います。
①参加性を高める
モバイルを使った参加型の演出は、イベントにおいて不可欠のコンテンツといえるでしょう。
噴射した水の膜に映像を投射するウォータースクリーンはこれまで、大きな仕掛けを単に鑑賞するものでした。チームラボが手掛けた「香川ウォーターフロント・フェスティバル」では、「チームラボ☆ぐるぐるリールで、ぐるぐる回して、海の幸から妖怪魚まで釣り上げろ!大会」が実施されました。釣り糸の先に広がるバーチャルの大きな海の中、いろんな魚が泳いでおり、来場者が力を合わせてリール代わりのスマホを振ることで、ウォータースクリーンに映し出された魚が釣れる仕組みです。その「参加性」「体験性」の高さは、これまでの単に「見る」行為とは圧倒的に異なるものとなりました。
②身体性を拡張する
手を上げるとその軌道が見え、息を吹きかけるとその空気の動きが色となってゆらめく。
モーションセンサーテクノロジーの進化により、自らの動きにインタラクティブに呼応し、その動きが可視化され、身体感覚を拡張することが可能になりました。
身体がまるごとコントローラーになる、マイクロソフトの「Kinect」を使ったゲームもその一つと言えるでしょう。Xboxのゲームである「Fruit Ninja Kinect」では、キネクトセンサーで腕の軌跡を刃になぞらえ、宙を舞う果実を切っていくことができます。その反応のスムーズさと効果の気持ちよさで、まるで本当に自分の腕が刃をまといゲームの世界に入ったかのような、身体性の拡張を感じることができます。
③演出効果を高める
演者の動作に呼応して色や形を変えたり、文字を流したり。インタラクティブであることで、その舞台装置としての機能が高まります。
Nike Basketballが展開したキャンペーンで上海に出現した 「House of Mamba(ハウス・オブ・マンバ)」は、フルサイズの最先端LEDバスケットボールコートです。選手の動きに反応するモーショントラッキングとインタラクティブなLEDビジュアルやグラフィックス、ビデオを導入し、観客は選手の動きをより視覚的に楽しむことができます。単に鑑賞するだけでなく、フォーカスすべき選手の動きや注目すべきプレーが可視化され、観客は一層深く試合にコミットできます。
●デジタルテクノロジーの進化で、お客さんが作品にいくらでも入れるようになった
これまで紹介してきたインタラクティブな演出手法は、デジタルテクノロジーの進化によって可能になりました。数多くのインタラクティブな作品を世に発表している、チームラボ代表の猪子寿之さんに、お話を聞いてみました。
──先日参加させていただいた「Pepper Tech Festival 2014」(ソフトバンク主催)の作品「The light orchestra with Pepper」、おもしろかったです。自分の携帯が演出の一部になって、勝手に光ったり音が鳴ったりしだして。びっくりしましたけど(笑)。
(光のオーケストラ、動画はこちらから↓)
http://www.team-lab.net/all/other/the_light_orchestra_with_pepper.html
猪子:あれはお客さんの位置を音で測位して、アプリを使って光らせたり音を鳴らしたり、ハックしてるんです(笑)。
実はお客さんには何の能動性もないんですよね。だから、極論すると街を歩いてる人が知らないうちに人文字になっちゃうとか、そういうことも考えられる。
例えば表参道の通りで、ある日ある瞬間、突然全員の携帯が乗っ取られて、ビカビカーと坂の上から下まで光って、なんで光ってんだー!と思ったら、自分の携帯も光りだしたりしてね。テンション上がりますよね。
どういうことだ―!とか、クレーム来ちゃうかもしれないけどね(笑)。
──クレーム来そうですね(笑)。
これもそうでしたが、チームラボはデジタルテクノロジーを駆使した、お客さん参加型のインタラクティブな作品が多いですよね。
猪子:20世紀までの物質的な価値観だと、どうしても、鑑賞者が受け身になって鑑賞するだけになりがちだったんですよね。お客さんの入る余地が極めて少ないというか。
デジタルテクノロジーの進化で、お客さんが作品にいくらでも入れるようになった。
昔から、リアルな空間でお客さんが入れるようなものはあったと思うんですけど。段ボールで一緒に作るとか、みんなで絵を描くとか。でもそうなると、やっている時は楽しいんだけど、鑑賞物としては堪えられない。
デジタルだと、お客さんが参加して何かすること自体を裏側である程度設計できるから、状態を担保できるんですよ。フォローを入れられるっていうか…ユーザーの表現したかったことをこっち側で堪えうるものに…堪えうるものにって言ったらなんかひどいけど(笑)。
お客さんが参加する前提で変化そのものを設計・表現できるようになりました。
つまり、作品を鑑賞者に対して「インタラクティブ」にすることで、鑑賞者が作品に容易に「参加」することができるようになったんです。
今後もますますお客さんのテンションが上がる、インタラクティブな演出手法の進化は続きます!以上、第4回は「インタラクティブ」特集をお届けしました。