感動テクノロジーの世界No.3
LED革命で変わる未来
2014/12/16
LEDは、21世紀のわれわれの生活を変えた革命的なテクノロジーです。
2014年12月10日にストックホルムでノーベル賞授賞式が開催されました。日本人のノーベル賞物理学賞の受賞で、LEDが再び注目されています。青色LEDの登場で赤、緑とともに光の三原色がそろい、フルカラー表示が可能になったことでブレークスルーが起き、普及が進みました。さらに、消費電力が少なく、耐久性が高いなどの特長が注目され、イルミネーション、映像ディスプレー、医療や漁業などで幅広く利用されることになりました。イベント・スペースの世界でも、演出・プレゼンテーション手法を革命的に変えています。「感動テクノロジーの世界」第3回のコラムでは、3つのキーワード(照らす・魅せる・送る)でLEDの 最新事例を取り上げながら、LEDの未来を探っていきたいと思います。
①照らすLED - 照明
LEDは低消費電力・長寿命という特長を持ち、“エコブーム”と相まって、電球や蛍光灯などに代わり照明分野でLED化が急速に進みました。ネオンサイン、イルミネーションなど、街中の照明もLEDに取って替わりつつあります。さらに新たな技術開発も進んでおり、例えば10月にイケックス工業が発売したLEDキャンドルは、電磁石の機構により自然のような炎が揺らぐ、今までに無かったLEDキャンドルです。リアルなLEDのキャンドルは人々を癒やすだけでなく、火災防止にも役立ちます。省エネ・低コスト化に加え、このような特殊技術との組み合わせによって、われわれの生活におけるありとあらゆる照明がLED化しそうな流れとなっています。
②魅せるLED - 演出
この10月、新国立劇場によるワーグナーのオペラ「パルジファル」で約64万個のLEDを使用した舞台セットが音楽界の話題になりました。伝統的なオペラの世界でも、最近はこのような最新の技術を駆使した舞台が数多く制作されていますが、これだけのLEDを活用したケースは世界的にも例がないのではないでしょうか。
調色性の高いLEDは、単なる照明装置でなく、演出装置としても重要な役割を担っています。LEDがさまざまなイベントやスペースで活用されるようになったのは、その演出力の進化にあると思います。東芝スマートコミュニティセンター(川崎)には、LEDとハーフミラーを組み合わせたExcellentなEntranceがあります。幻想的で奥行き感のある空間となっており、LEDは何かと組み合わせることで無限の演出力を持つ装置となりました。
さらに、LEDとインタラクティブな手法を掛け合わせて、エンターテインメント性を高めた事例も多く見られるようになりました。フルカラーLEDチップを立体的に配置したキャナルシティ博多のクリスマスツリーは、スマートフォンやタブレット端末から観客がツリーにデコレーションできる仕組みとなっています。制作したチームラボの担当者は「LEDや制御コントローラーが安くなったこと、LEDが小型化したことで、演出の可能性が広がった」と話してくれました。今後も、ウエアラブルなどを組み合わせてLEDを活用した新たな演出手法が出てくるのではないかと思います。
③送るLED - 通信
最後は、情報を「送る」装置としてのLEDです。現在は電波によるWi-Fi(公衆無線LAN)の普及が進んでいますが、次世代技術としてLEDの光を使った超高速通信「Li-Fi」の研究が進められています。また、LED照明の目に見えない光の変化を利用して、スマートフォンにスーパーの店舗内の位置情報やセールス情報を送信するシステムもあります。このような「送る」装置としてのLEDも見逃せません。11月に富士通研究所がLED照明の光にID情報を埋め込む技術を開発しました。例えば、LEDで照らされたモノや人物にスマートフォンをかざすだけで、ID情報に対応した商品情報が提供されたり、舞台上のアーティストの楽曲がダウンロードできるなど、さまざまなものを情報の発信源にすることが可能になります。LED照明が“通信インフラ”になる時代も来るかもしれません。
LEDはどこまで進化するのか
照らす(照明)・魅せる(演出)・送る(通信)の3つのキーワードでLEDの最新事例を見てきました。ノーベル賞を受賞した中村教授は会見で「今のLEDでは電力を光に変換する効率は50%ぐらいで、残りは熱になってしまう。100%にして電力ロスをなくすことを目指している」とコメントしています。LED革命はまだ続きます。