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シンブン!今だからできること。今しかできないこと。No.20

地方紙を活用した、
エリア + ナショナル =
ハイブリッド型マーケティング!?

2015/01/30

このところ、企業のマーケティング戦略で「エリア」「地域密着」などの言葉を聞く機会がまた増えている気がする。以前からの目的である地域でのシェア拡大もさることながら、生活者のメディア接触行動が多様化する中でコンタクトポイントが多岐に分散していることから、それらを統合する場として新たにエリア・地域に着目しているのだという。

新聞広告においても、全国規模のナショナルキャンペーンでありながら、各地域の消費者の嗜好やニーズを上手く取り込んだローカルの要素を併せ持つ、エリアマーケティングとナショナルキャンペーンの融合とでもいう成功例が増えているようだ。いわば「ハイブリッド型マーケティング」とでもいえようか。

例を見てみよう。味の素では全国の地方新聞社と連携し、食にまつわる地元コンテンツを活用した企画を継続的に実施している。最近では11月24日の「和食の日」に合わせて、全国40紙で各地の旬の食材を使ったレシピ付き広告が展開された。

shizuoka
静岡新聞「根野菜のさくらえびあんレシピ」

まさに文字通り北は北海道から南は沖縄まで、様々な食材を生かしたレシピが並ぶ。右側のレシピでは各地域ごとに最適化されたクリエーティブ素材を使いながらも、「和食は、和色で、できている。」のコピーのもと、黒を背景にした印象的な統一フレームを用いることで、全国キャンペーンとしてまとめている。
このような「ハイブリッド型マーケティング」の特徴を4つのポイントにまとめてみた。
味の素の例をとって説明してみたい。

①地域密着でありながら、全国規模で一気呵成に展開。

味の素の例では、40種もの広告クリエーティブが準備され、「和食の日」に全国40紙で一斉展開されている。地域密着メディアでありながら、全国規模で連携した展開が可能な地方紙ならではの企画となった。

②従来の流通対策や販促プロモーション的色合いが強かったエリアマーケティングとは異なり、全国統一のブランディングに重きが置かれ、そのための強いメッセージ性を持つ。

「和食は、和色で、できている。」というコピーのもと、旬の食材が持つ「和色」を「和食」と結び付け、その色合いの美しさや四季折々の食材が持つ豊かさにより、和食とそれに欠かすことのできない調味料としてのブランディングを行っている。ユネスコ無形文化遺産にも登録された「和食」を前面に出すことで、社会性、メッセージ性のある広告となっている。

③基本の枠組みは全国で統一されマスメディア・ウェブなどで発信されつつ、地域ごとに最適化したコミュニケーションが同時並行している。

共通のコピーとクリエーティブで統一されたフォーマットを用いることで、一体感のあるキャンペーンとしてまとめ上げている。一方で、各地の旬の食材を生かしたレシピを掲載することで地元の人々の共感を呼ぶ、地域に最適化したコミュニケーションとなっている。

④地元コンテンツや課題・ニーズなどを活用し、地域・社会に対する愛着を喚起する内容になっている。

この他にも、味の素ではこれまで地元で活躍する料理家やアスリートらとコラボしたレシピの広告が出稿されてきた。これらの企画の中では地元新聞社がコーディネーター役となってきた。地元食材選びから地元の人材との橋渡しなど、地域に根差した新聞社ならではの役割といえよう。

 

地方紙はそれぞれが特色ある紙面を持ち、バラエティー豊かなメディアである。しかし同時に、それらがあたかも1つのメディアでもあるかのように連携しながらキャンペーンを展開する時、大きな力を発揮する。「地域密着型メディア」としての地方紙に期待したい。