「そのひと言」の見つけ方No.8
「外してるけど、おもしろい」を目指す。
2015/02/12
電通の会議室は常に笑いが起きています。
僕の席は会議室の近くなのですが、笑い声が頻繁に聴こえてくるので、どれだけおもしろい話がなかでされているのだろうと思うと、いてもたってもいられなくなります。
会議は面倒でつまらなくて時間のロスではない。会議は実はとてもおもしろいものなのです。
コピーライターになりたてのころ、僕が出すのはマジメな案でまったく笑いは起きませんでした。でも先輩が「こういうコピーなんですけど」と出すと、わっと笑いが起きるのです。そうすると、その案はいつの間にやらロジックを超え、「これおもしろいから提案しようよ」ということになり、提出してみたらクライアントにもウケて、結局世の中に出ていくこともある。
「まずその場にいる人を笑わせる」
というのは、コピーが間違っているか正しいかは関係なくて、届くかどうかであり、わかりやすい判断基準だと思います。
自分が伝えたときにその場の空気をおもしろい方向に変えられるか、どんどんやってみたらいい。笑ってもらえれば快感になるし、自信にもなると思います。
電通のクリエーティブの会議ではなかなかお見かけしませんが、議論の場で正論ばかり言う人はけっこういるようです。間違ったことは言ってない、おっしゃっていることは隅から隅まで正しい。
でもそういう人からは人は離れていくという話を、心理カウンセラーの知人から聞いたことがあります。
つまり、正論は人を動かさない、ということなのではないかと思うのです。
「外してるけど、おもしろい」というのは、ストライクゾーンを微妙に外すことで、受け手の意外性を刺激するという力があるのだと思います。
たとえば不動産や銀行のような手堅い案件ほど、やわらかい言葉のほうがクライアントにフィットすることがあります。保守的になればなるほど正論が出てくる世の中ですから、そんなときほど「ストライクゾーン甘めのゆるい球」を意識するほうがよいのではないでしょうか。
「正しいけど、つまらない」は、コピーにとっては致命的です。
いや、コピーだけではなくすべての言葉、もっと言えばすべての商品や製品やアイデアにとっても致命的です。だから、「外してるけど、おもしろい」を目指すこと。そうすれば、伝わる言葉、印象に残る言葉が生まれます。しかも不思議なことに、「外してるけど、おもしろい」を繰り返していくと、「正しくて、おもしろい」が出てくるようになります。トライ&エラーでブラッシュアップが可能なのです。