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電通報ビジネスにもっとアイデアを。

【続】ろーかる・ぐるぐるNo.52

“フェイク・コンセプト”が多すぎる

2015/03/19

平均すると月に2~3回は出張があるのですが、その行き先は広島、静岡、名古屋、盛岡、仙台、郡山…など、すべて国内。グローバルなんて、どこ吹く風。ドメスティックどっぷりの毎日を過ごしているわけですが、そんなぼくのところにも3~4年に1度くらい、突然海外出張の相談がやってきます。先日も「電通イージス・ネットワークに属するアジアのクリエーター相手に90分くらい話をしてみない?」というお誘いがありました。

「英語でそんなにしゃべるの、無理っス」「ぼくの下手っぴな英語を長時間聞かされる聴衆の方がかわいそうっス」と丁重にご辞退申し上げたにもかかわらず、気がつけばバンコクのホテルで数十名の聴衆の前に立っていました。

 

この時のテーマは「コンセプト」。

ひとの行動・習慣・価値観にもう元に戻れないような変化をもたらすイノベーションを起こすためには、新しい事実を照らすサーチライトとなるような言葉=コンセプトが必要です。(詳しくはコチラを)しかし残念ながら、世の中にはとても多くの「自称コンセプト(=フェイク・コンセプト)」が存在します。その典型的なパターンについてお話ししました。

たとえば「からっぽ型」。インスタント麺の新商品コンセプトとして「新ヌードル経験」なんて設定するのが、これに当たります。岡本太郎さんの「芸術は爆発だ」のように新しく進むべき方向性を直感的に共有できるのが本物のコンセプト。どのような道に進むべきか表現するのを怠って、単に「新」「かつてない」「発見」などの言葉で誤魔化しているケースが意外に多くあります。

これより多く目につくのが「ポエム型」。なんとなくもっともらしい、なんとなくかっこいい言葉の組み合わせで表現されているものの、何を照らし出しているのか、さっぱりわからないパターンです。たとえば「美しき狼」というインスタント麺の「コンセプト」。「エキサイティング・ゴージャスネス」という高級車の「コンセプト」。別に広告コピーではないので内輪のチームメンバーと方向性を共有できれば十分なのですが、それにしても何を言いたいのか曖昧すぎて、何の新しい「事実」も照らし出してはいません。サーチライトになっていないのです。

もう一つのパターンが「説明型」。たとえば「コシの強い極太面に豚骨と魚介系、野菜系のトリプルスープを合わせた即席麺です。札幌の人気ラーメン店主が監修。たっぷりボリュームがあり、こってり濃厚な味付けですので、食欲旺盛なお客様にも満足いただけます。」といった感じのものです。これなんか全然サーチライトじゃないですよね。ただの(新しくもない)事実の羅列。でも、こういった言葉が「コンセプト」として流通しているケースは意外に多いものです。

こうした「フェイク・コンセプト」がはびこる原因には、チャレンジを恐れ、無難を求める「大企業病」や「ロジカルシンキング」の限界、あるいは企業内担当者の言語能力が考えられます。その点、企業を外側からパートナーとして見られる広告会社のクリエーターは、この「コンセプト」を中核とした領域でビジネスを拡張していけるのではないか、という提案をしたかったのです。アジアのクリエーターの皆さんはこんな話に長い時間、しっかりと耳を傾けてくださり、また活発な議論もできました。国境を越えて問題意識を共有できる仲間が見つかったことが何よりの収穫でした。

これが「ぐるぐる四兄弟」

もうひとつ。収穫といえば、拙著『〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考』のタイ語バージョンを発見できたこと。もちろん出版前に相談はあったのですが、実物を手にしたのは初めてでした。日本語、韓国語、英語につづく四カ国語目で、ホント光栄なことです。

ひとりショッピングモールへ
ソムタム
そしてもう一品

仕事が終わって深夜発の飛行機が出るまでの時間は、ひとりショッピングセンターのフードコートで「出版祝い」の乾杯です。ソムタム(青パパイヤのサラダ)でビールをぐびぐび。予想以上にニンニクが効いていて帰りの機内が心配でしたが、もう手遅れ。暑いのとしゃべりすぎで喉がカラカラだったので、とにかくビールが旨かった!!のでした。

次回はもう四月。春らしいネタを探そうと思います。

どうぞ、召し上がれ!