【続】ろーかる・ぐるぐるNo.56
続・広告志望の学生とマーケティング
2015/05/14
以前のコラムで「広告会社には本当の意味でのマーケティングなんてない。あるのは広告の仕事だけだ」と書きました。ぼくはそう強く信じていますし、外せない大前提です。でも今回は一見真逆の話をしたいと思います。「広告会社の技術で真のマーケティングにチャレンジしよう」ということです。
マーケティングとは商品、価格、流通、プロモーションなどあらゆる手段を総動員する「市場創造のための総合的活動」です。その定義からして当然のことながら目的を実現するためにはどんなアプローチをしても構いません。しかし大企業になればなるほど、いや、実際にはたとえ中小企業であっても、現代日本においては「失敗」がよほど怖いのでしょう。とにかく正しく判断しよう、正しく行動しよう。「どうやったら劇的な結果が得られるか」よりも「間違いのないプロセス」に大きな関心が向けられているように思います。
一方、広告会社には前回、前々回に書いたようにヒトとモノ・コトの「いい関係をつくる技術」があります。あの手、この手を考え抜く、とてもロジカルとは言えない、ターゲットの気持ちを動かす方法論があるわけです。この技術が広告領域で有効なのはもちろんですが、商品を考えるとき、価格を考えるとき、どこで売るか考えるときなど、マーケティングのあらゆる局面でも有効なのは当然です。
たしかに広告会社は今までも、いろいろな企業の商品開発を手伝ってきました。しかし、そこで用いられたのは主に「正しく考える技術」。きちんと調査をし、分析結果に基づいて議論をし、データの検証を踏まえて意思決定するお仕事でした。でもぼくがチャレンジしたいのは、もっと広告会社に固有な技術でマーケティングに挑戦すること。ヒトとモノ・コトの「いい関係をつくる技術」でもって魅力的な商品をつくって、皆さまにお届けすることです。具体的には、ローカルの、実力はあるけれどブランドとかマーケティングとかが苦手な生産者の方々と、その反対の領域が得意なぼくたちが手を組めば、新しいビジネスモデルが出来るのではないか、というチャレンジです。
群馬県の玉子焼き屋さんとつくった濃厚プリン「天国のぶた」も、東京の老舗和牛卸とつくった超粗挽きメンチカツ「チョップカツ」もその一環です。なかなか簡単に成果は上がりませんが、いまも福井や広島、静岡などでプロジェクトは進行しています。「その手があったか!」と言われるような楽しいマーケティングを実現することがぼくの夢です。
ゴールデンウィークは仕事でつぶれてしまったので、罪滅ぼし(?)に家族と週末小旅行をしようということになり、そうなると「からくり侍セッシャー1」でお世話になった静岡駅すぐそばの駅南銀座に足が向かいます。ここには素晴らしい居酒屋があって、何を食べても旨いのです。この日特に美味しかったのはウマヅラハギの肝和えと新鮮なシラスに荒挽き黒胡椒をかけただけのもの。これで地酒「国香」をあおれば、一気に極楽気分。
スペインにはウナギの稚魚をオリーブオイル煮にする料理があるからでしょう、シラスとオリーブオイルの組み合わせはよく見かけますが、カリカリの粒胡椒は「この手があったか!」、イノベーションだ!新しい美味を照らし出すサーチライトだ!と騒いでいるうち、静岡の夜は更けていったのでした。
あまりに旨かったので、翌日、魚屋で同じものを手に入れて、自宅で同じメニューを楽しんじゃいましたが、特に呑み助の皆さまにはシラス&粒胡椒がオススメ!
どうぞ、召し上がれ!