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Dentsu Design TalkNo.53

法人の生き方(後編)

2015/07/04

熱烈なファンを抱え、また「過剰品質」と言われるほどの品質の高さで知られるアウトドア用品ブランドの「スノーピーク」。新潟県三条市の本社は、広大なキャンプ場の中にあり、そこに寝泊まりして出社する社員もいるなど、その独自性で注目を集める。同社の山井太社長は、自身も年間60日近くをテント泊で過ごすキャンパーであり、同社の「顔」としてもよく知られている。
そして、電通の国見昭仁氏は、同社の中に「未来創造室」という新部署を設置し、新事業展開のパートナーとして、山井社長と同社のブランド強化に取り組んできた。
いま、スノーピークは新たに「人生に、野遊びを。」という言葉を掲げ、都会の人にも自然を楽しんでもらう事業展開を構想中だという。
前編に引き続き、両者の対話から、ブランドのつくり方、そして拡張のヒントをお届けする。

企画プロデュース:電通イベント&スペース・デザイン局 金原亜紀
 

市場は「ある」ものじゃなく「つくる」もの

国見:新しいものをつくろうとするとき、世の中の声を聞くことが、どういう意味を持っているのか。スノーピークのような会社はその本質を捉えていると思うんです。でも、企業は大きくなるほど、市場調査の結果通りに商品をつくりがち。同じように調査をして商品をつくれば、市場には似たような商品ばかりが並んでいくのは当然です。スノーピークではいわゆる市場調査は行いますか?

山井:1回もやったことはないですね。

国見:マーケットがあるかどうか調査してほしい、という依頼をクライアントからよく受けるんですが、マーケットが「あるかないか」ではなく、「つくるかどうか」だと僕は思っています。

山井:市場というのは、誰かが初めての製品を投下しないと生まれない。だから、最初は必ずプロダクトアウトから始まるはずなんです。

国見:最近「顧客志向」という言葉が盛んに使われますが、僕はその言葉をあまり使わないようにしています。プロダクト志向やシーズ志向が実はすごく大事で、それを顧客志向にどう掛け合わせるかというふうに考えていきたい。スノーピークは今、「アーバンアウトドア」に力を入れるという新しい方針を打ち出していますね。

山井:日本のキャンパーは人口のわずか6%です。残りの94%の人たちのために、スノーピークがおせっかいにも都会に出ていって自然とつなぐ。「人生に、野遊びを。」という言葉を掲げて、都会の人にも自然を楽しんでもらう新しい事業展開を進めています。

国見:電通は2010年にスノーピーク内に未来創造室という部署を置いてもらい、僕は室長としてそこに在籍しています。まず行ったのは、スノーピークを「人間回帰するための事業」と再定義することでした。キャンプも人間回帰の手段のひとつと捉えれば、事業の見え方が変わってくる。都会のベランダなど、都心で人間回帰してもいいわけです。まだサービスインしていない夢のような事業がいくつもありますね。

山井:これからすごいことになりますよ。

国見:最後に、山井さんから見て日本の経営者はどうですか?

山井:全体的に見て元気がないですよね。今の日本の資本主義は、乱暴な言い方をすれば、オリジナル商品が出た途端に追随商品が現れ、陳腐化していくという状況です。大企業には資金も人材も情報も集まっているのですから、10社あれば10社が違う価値をつくれるはず。そういう資本主義経済にしていかなければいけないと思います。広告会社は、クライアントが他の企業の追従をしようとしたら、そういうことはカッコ悪いのでやめてくださいと止めてほしい。消費者が情報発信する時代では、正しくオリジナルをつくり、正しく販売している会社が高く評価される。我々のような会社にはいい時代です。広告会社には、クライアントを正しいビジネスに導くパートナーの役割を期待します。

<了>

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