loading...

電通報ビジネスにもっとアイデアを。

ワカモンのすべてNo.43

原田謙介×小木真:後編
「若者は『バラ色の未来』なんて信じない」

2015/07/15

前回に引き続き、若者と政治をつなぐ活動を行うNPO法人「YouthCreate」代表の原田謙介さんと、電通若者研究部(ワカモン)の小木真さんの対談をお届け。
日本の将来が気になる若者のために、社会や大人たちができることって何?

 

下から目線で若者を巻き込む

小木:参議院の特別委員会で、18歳選挙権について原田さんが参考人として意見を述べられていたときの映像を見たのですが、「下から目線で若者を巻き込んでほしい」という発言がおもしろいなと思いました。

原田:18歳の選挙権は、与えてあげたと思う人もいるかもしれません。
でも、決して18歳の人が積極的に求めたわけではないし、それを上から目線で押し付けるのは違うと思うんです。むしろ「若者の力が必要です」「日本の未来のためにあなたたちの力を貸してください」と協力を求めるべきなんです。

小木:少し話が飛躍するかもしれませんが、若者の離職率が高い原因の一つとして、上司とのコミュニケーションの問題が挙げられています。上から目線でキツく言われるのが耐えられないと。善し悪しは別にして、そのようなコミュニケーションは今の若者にフィットしないのかもしれませんね。

原田:教育は必要だけど、一方的に価値観や習慣を押し付けるのは良くないですね。政治教育も、若者だけでなく親世代に対しても行うべきだし、政治そのものを教えるのではなく、まずは社会があってその中で政治がどう関わるのかを教えるべきです。

小木:自分の生活に紐づかないと、それこそ実感が湧かないですよね。

原田:たとえば区議選なら「区」という社会を変える政治だから、区の現状を知ることから始めるべきなのに、いきなり候補者のマニフェストを見たところで何もわかりませんからね。

あと、政治に参加している実感を持ってもらう一方で、民間とは違うということもきちんと伝えるべきです。ステークホルダーが多すぎるので企業のようにPDCAサイクルは早く回せないし、特定の層を切るということもできない。「ターゲットは20代OLです」みたいなセグメントは利かなくて、全世代のことを考慮してなきゃいけない。そこはきちんと理解してもらう必要があると思います。

 

政治を「浮いた点」ではなく、日常に「染み込んだ点」に変えたい

小木:ivote」を始めたころは、そこまでSNSが流行っていなかったと思うのですが、今SNSが若者の生活に浸透している中で、メッセージを伝えやすくなったとかはありますか?

原田:政治に関心を持つ学生と全国的にすぐつながれるのは便利ですね。立ち上げ当時はとりあえず学生がたくさんいそうな場所に集まって、「おれは政治をやっているんだ」と話しかけまくっていたので(笑)。その労力がないぶん効率は上がるけど、一方で政治に関心がある学生だけのコミュニティーになってしまう危うさも感じています。政治にあまり興味のない人にも広げていく活動なので、内輪的なつながりで終わらないよう気をつけています。

小木:政治のコミュニティー以外にも積極的に関わっているってことですか?

原田:むしろ政治関係の集まりにはあまり行かないですね。サッカーとかごみ拾いとか。

小木:今の若者には、仲間内で小さく活動できれば良しとする価値観も強いようで、社会活動をしている団体が政治につながりにくいのは、それも原因の一つなのかなと思います。

原田:そうですね。それは行政など政治側にも問題があると思います。非営利団体や企業の力が必要なのはわかっているのに、政治・行政側から積極的なアプローチをしていない部分もあって。もっと若者のコミュニティーや若者が集まる場所に足を運ぶべきだと思うので、「YouthCreate」では地域の議員と若者が飲みながら語り合う「Voters Bar」などのプロジェクトを実施しています。

小木:つながり過多の時代だからこそ、本当に大事なつながりって何だろうと考えています。最近は若者の間で野外フェスの人気が高まっていて、それはSNSなどのネット上のつながりが増えた反動でかえってリアルの価値が高まっている側面がある。原田さんの活動もリアルの場をつくっているじゃないですか。そこが今の時代の価値観にフィットするのかなと。

原田:SNSも重視しているけど、そこで完結するコミュニケーションはないと思っています。リアルとSNSの双方を往来する中でコミュニティーはより濃密に、より広がっていくので、そのための場所づくりをもっと進めていきたいですね。
現状、YouthCreateの活動はイベントが多いのですが、理想は日常の中に政治が浸透していくことです。

たとえば、地方議員と若者が交流する会が定期的に開かれるとか、政治家と意見交換をする機会が大学の授業に組み込まれているとか。非日常的な「浮いた点」ではなくて、「染み込んだ点」として政治を生活の一部に浸透させることが、団体として目指していることですね。

小木:そのために政治・行政と若者の双方への働きかけがさらに必要ですよね。僕らの仕事は今の若者の考え方や気持ちを読み解いて、どうやったら若者と企業、若者と社会との幸せな関係づくりができるかを考えていくことだと思っているんですけど、原田さんが国会で政治家に若者と政治の関わり方を提案する姿を見て、フィールドは違うけど根底にある思いは一緒なんだと思いました。

原田:今回の調査の中で「日本のことが好きな若者が多い」という結果がありましたが、これはすごく大事なことだと思うんです。つまり、少なくとも日本の若者にはプラスの力があるということ。僕は、絶対に投票に行かないと決めている若者は少ないと思っていて、投票に行くか行かないかのラインはギリギリのところにあると考えています。その気持ちをほんの少しでも後押しするのが、政治に触れる機会であったり、コミュニケーションの方法なんだと思います。

小木:そうですね。若者のポジティブな気持ちを引っ張るために、社会や大人たちは下から目線、あるいは横から目線のコミュニケーションをもっと増やしていけるといいですね。

 
<了>

「電通若者研究部ワカモン」ロゴ

【ワカモンプロフィール】
電通若者研究部(通称:ワカモン)は、高校生・大学生を中心にした若者のリアルな実態・マインドと 向き合い、彼らの“今”から、半歩先の未来を明るく活性化するヒントを探るプランニングチームです。彼らのインサイトからこれからの未来を予見し、若者と 社会がよりよい関係を築けるような新ビジネスを実現しています。現在プロジェクトメンバーは、東京本社・関西支社・中部支社に計14名所属しています。ワカモンFacebookページでも情報発信中。