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で、次なにしてあそぶ?(前編)

雑誌編集者に聞く、「編集力」とは何か? №3

  • 奥村 健一
  • 東畑 幸多

2015/07/15

で、次なにしてあそぶ?(前編)

コミュニケーション手法が多様化するに従って、情報を独自の視点で加工し発信する「編集力」の重要性が高まっています。その編集力の秘訣について、出版社の編集者と電通のクリエーターが対談。それぞれの考える編集力を明らかにしていきます。

今回は、雑誌『Casa BRUTUS』の編集者であり、絵本『ふうせんいぬティニー』シリーズのプロデュースなども手掛ける奥村健一さんと、電通CMプランナーの東畑幸多さんが、「編集力」をテーマに語り合いました。

 

自分の「好き」を、どう雑誌につなげていくか

東畑:奥村さんとは、仕事で何度かお世話になったり、ご飯を食べに行ったりさせていただいて(笑)。その中で奥村さんに感じるのは、自分が思う「好き」をすごく大事にされてますよね。それがあらゆるアイデアの源泉になっていると思うんですが、いかがでしょうか?

奥村:そうですね。編集者として心掛けているのは、自分自身が「好き」「面白い」と思えるかどうか。ただし、それをそのまま取り上げても雑誌のテーマに合わないことがあるので、どうやって「好きなもの」「面白いもの」を届けるかが編集者の仕事だと思っています。最初から雑誌の枠の中で企画を探さず、自分の「好き」をスタートに、雑誌の枠へと当てはめていくんです。

デザインがメーンのCasa BRUTUSで絵本特集をやったのも、まさにそういう成り行きでしたね。娘ができて、絵本に興味を持ったのが始まりで(笑)。ですので、自分の「好き」からどう雑誌につなげるか、その“橋の渡し方”が編集力なのかもしれません。

東畑:その感覚は僕も半分共通していて、広告は課題をもらってその解決の仕方を考えるんですけど、答えの出し方として、自分の興味あることや必要だと思うメッセージに照らし合わせることが多いです。そう考えると、やはりそこには自分の「好き」があると思います。

奥村:東畑さんの作品が大好きで、マガジンハウスが70周年を迎えたときの記念コピーをお願いしたんです。そこで考えていただいたのが、「で、次なにしてあそぶ?」というコピーで、この言葉がすごくうれしかったんですね。僕たちが楽しんで作って読者に届けて、それを「遊ぶ」と表現してくれたので。

東畑:雑誌にとっては、大変な時代ですが。マガジンハウスの編集者には、「日本で一番楽しそうな仕事」をしている人であってほしい。変化する時代と「どう遊ぶのか?」それを、世の中にもインナーにも問い掛ける意味で書きました。

 

編集の未来は、デジタルではなくリアル

奥村:僕は昔から制作物のクレジットを見るのが好きで、面白いことの裏には必ず人がいると思っているんです。絵本のふうせんいぬティニーを作る際も、海外の絵本作家を調べると、デザイナー出身の人が多かったんですね。『ミッフィー』で知られるディック・ブルーナや、『はらぺこあおむし』のエリック・カールらがその例です。

そこで、「じゃあ日本のディック・ブルーナは誰だろう」と考えたときに、佐野研二郎さん(※1)が思い浮かんで、一方できちんとしたストーリーを作れるのは誰だろうと思ったときに、川村元気さん(※2)が出てきて。2人とも僕の大好きな人で、あとはこの2人を掛け合わせれば何かできるはずだと。そこから3人で「何をしましょうか」と話して、ティニーが生まれたんです。場所は浅草の牛鍋屋でした(笑)。

※1佐野研二郎(広告デザインを多数手掛けるグラフィックデザイナー。『ふうせんいぬティニー』の絵を担当)
※2川村元気(映画プロデューサーであり、『世界から猫が消えたなら』『億男』などの小説も執筆。『ふうせんいぬティニー』のストーリー担当)

 

東畑:CMでも、「誰と形にするか」はとても大切で。同じ企画でも、どの監督とやるかによって、まったく違うCMができます。監督を選ぶとき大切なのが、一つでも「これ好きだな」と思えるものを作っているかが、とても重要です。

奥村:以前、「好きなことを仕事にしよう」というテーマの本(※3)をプロデュースしたんですけど、「好きな人と仕事をしよう」でもいいかと思うんですね。好きな人と面白がれることをしないとパワーが出ないし、実際、佐野さんや東畑さんの作品は誰よりも僕が詳しいと思います(笑)。そういう人を見つけて、プロデュースしていくのも編集力かもしれません。

※3『片山正通教授の「好きなこと」を「仕事」にしよう』片山正通著(マガジンハウス発行)

 

東畑:広告も、クライアントの課題の難易度が上がっていく中で、あらゆる人のナレッジを取り込まなきゃいけない。チームの時代になればなるほど、やっぱり人が大事なんですよね。

奥村:デジタルで拡散されやすい時代になっても、中心にあるのはモノであり、それを作る人。だからこそ人が大切だと思いますし、好きな人がいたら何かしたくなるんですよね。

東畑:その話を前に聞いて、「編集の未来は、デジタルじゃなくて、リアルだと思う」ということをプレゼンしました。

奥村:まさにそうですね。僕も東畑さんに頂いたその言葉を、まるで自分の言葉のようにずっと使わせてもらってます(笑)。

※後編は7/16(木)掲載予定。