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Experience Driven ShowcaseNo.14

ノーライン型のコミュニケーションこそ、話題性より戦略性。

2015/07/21

フランス発祥の歴史あるグローバルブランド、ラコステ。その2015年春夏のキャンペーンは、これまでのやり方を見つめ直し、新たな方策を模索するものとなりました。
その体験型施策の概要と、そこにみるノーライン型コミュニケーションのあり方を、キャンペーンディレクションを行った電通1CRP局の小野がお伝えします。

編集構成:金原亜紀 電通イベント&スペース・デザイン局

 

 

ラコステって、イケてる?イケてない?

ラコステは、1933年にフランスで生まれた歴史あるブランドです。ワニロゴの由来は、テニスプレーヤーでもある創業者のルネ・ラコステのプレースタイルが、ワニのように粘り強い、というところからきているのですが、みなさんご存じでしたか?

日本では、ゴルフ、テニスなどのスポーツシーンに着る、かつ、おじさんが着るイケてない服、というイメージがある方もいるかもしれません。ですが実は、若者の間では、少しだけ背伸びして買うプレミアムブランドとして、人気があります。
ラコステにポジティブなイメージがあるかどうかで、若い感性があるかどうかが、案外見分けられるかもしれませんね(笑)。

今回のキャンペーンのヒントもそこにありました。
おじさんたちは、ラコステ=ポロシャツで、シンプルでコンサバ、スポーツ限定なものだと思いがち。だけど、支持してくれている若者たちは、普段着づかいができて、ちょっと遊びがある着こなしができる=ラコステと思ってくれている。ラコステの「着こなし」で、「遊んで」くれる。ここにこそ、ラコステがもっと多くの人に愛されるポテンシャルがあるんじゃないか。

街ゆく若者の着こなしを見まくってたどり着いたこの仮説が、キャンペーンの起点となり、そこからは、着こなしを見せつつどう遊ぶか、どうやって話題化するか、をひたすら企画するだけでした。

 

ラコステらしく、ラコステらしからぬアイデアを

ラコステらしく、ラコステらしからぬ、もっというと、ファッションらしく、ファッションらしからぬ、そんなゾーンを狙ったアイデアにする、というのが最初に決めたことでした。

ラコステのようなメジャーブランドが狙うのは、ファッション高感度層のみならず、それ以外も含まれます。むしろそちらがマジョリティーです。彼らは積極的にファッションの情報を取ってはいません。だからこそ、ファッションの文脈から逸脱して、ファッション情報に普段は触れない層にでも、パブリシティーベースやバズベースで広がっていくアプローチこそが重要です。

ただし、単純に広がればいいっていうものでもありません。課題を解決していないと、投資する意味がない。やり口がラコステらしくない、誰がやってもいいアイデアだと元も子もない。そんなジレンマを解決するアイデアこそが必要でした。

ラコステらしからぬ新しい取り組みを、ラコステらしいやり口で実現する。
そんな試行錯誤から生まれたのが、I’m SHOPキャンペーンです。

I’m SHOPキャンペーンとは、ワニモデルたちが自らのコーディネイトを販売する、人型の動き回るショップとなって街へ出て、ワニモデルに出会えた人たちは、その着こなしを、その場でまるごと買える、という取り組みです。

「着こなしを遊ぶ」を体現するワニモデル。
着こなしがまるごと買えるI’m SHOPが、表参道・原宿を動き回る。
連動したEコマースサイトも立ち上げました。
コーディネートが360度見られる動くカタログも、一般の方に参加してもらいながらつくりました。

 

コアアイデアの周辺に、さまざまなサブの切り口を用意したことによって、関心の異なるメディアや生活者が取り上げたくなる、言いたくなる文脈が増え、結果としてウェブやテレビで150媒体以上のPR露出を確保。SNSでもとても話題になり、リーチは500万を超える広がりへとつながりました。

 

ノーラインコミュニケーションこそ、話題性より戦略性を重視する

昨今、単純に話題になればいい、という姿勢だけが感じられるキャンペーンを多く見かけます。また、ブランドらしさをないがしろにし、面白いけど、広告主が変わったとしても成立してしまうような企画もあふれています。

ですが、話題になることは手段であって、目的ではない。明快に目的を定め、それを手繰り寄せるための戦略があって初めて、ノーライン型のコミュニケーションは機能する。そう思っています。

これまでにない「らしからぬ」取り組みを、そのブランド「らしい」やり口で実現していく、という戦略的取り組みは、実際やるのは本当に大変なことだと思いますが、ラコステさんに今回ご理解いただけたことは自信になりました。今後も信念を持って続けていければと思います。

次回は、ラコステジャパンの竹内さんと、一緒に最後まで実現してくれたイベント&スペースデザイン局の藤田、私が鼎談します。