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Experience Driven ShowcaseNo.13

JRAがつくる、テクノロジーを使った競馬エンターテインメント

2015/07/14

日本中央競馬会(以下JRA)は5月、新しいテクノロジーを使った、競馬の面白さを発見してもらう体感キャンペーンイベントを行いました。
そのキャンペーンに競馬実況アナウンサーとして協力してくださったラジオNIKKEIの小塚歩氏に、電通の企画実施担当、森田章夫氏と山本顕作氏がインタビューしました。

取材・編集構成:金原亜紀 電通イベント&スペース・デザイン局

 

競馬ファンはスターホースがつくってきた

森田:競馬の現状を、どうお考えですか?

小塚:毎週、アナウンサーとして競馬場やBS11のスタジオなどにいて感じるのは、売り上げ的には90年代後半をピークに少しずつ減ってきていたのが、最近経済状況がよくなってくるに従って少しずつ上向きになってきてはいます。ただ、競馬場では年配の方が目につきます。特に土曜日の午前中なんかは。自分と同じかもっと下のファンも来たらいいのにな、と常々思っています。

森田:お客さんの男女比は、いかがですか。

小塚:男性が比率的には多いです。JRAさんもいろんな施策を練って女性も増えてきているように感じはしますけれど、比率で言ったら男性のほうが多いと思います。

山本:GIのときは、結構女性も目立ちますよね。この間、宝塚記念に行ったけど、出走したゴールドシップのファンの女の子が多くて。

小塚:あの馬は本当にファンが多い。特に女性のファンが多いと思います。

森田:馬自体にファンがつくんですか?

小塚:ええ、馬のキャラクターがあるでしょ。ゴールドシップはちょっとやんちゃなところがあるので女性が引かれるのかな。今までのスターホースのファンのつき方とはちょっと違う気がしますね。

山本:「ゴールドシップ」と書いたTシャツを着ている女の子とか、馬のキャラクターのトートバッグやぬいぐるみを持っている子がいて。昔、ディープインパクトが全盛のころ、ぬいぐるみを持って応援している女の子を見かけましたが、あれと同じような状態を見て、すごいなと思いました。

小塚:やっぱり強い馬、注目を集める馬がいると、競馬場へ行ってみようかな、馬券を買ってみようかなという方も増えますよね。

 

競馬未経験者、特に若者に競馬に興味をもってもらうにはどうすればいいのか

森田:スターホースがいるといいけど、それに頼らずもっと何とかしないと、というJRAさんの問題意識があって、若者を呼び込める状況をつくっていきたいというのがありますね。

小塚:今の若い人たちは、ネット、SNSで簡単につながるし。ツイッターなんかを見ていると、馬の写真をぽんぽんアップしている人がいっぱいいて。あ、この馬、かわいいなとか、そういうところからの興味の持ち方がきっとあるのかなと思います。

森田:僕たちは今回、競馬をまだやったことない人たちに競馬を1回体験してもらおうという施策、特に競馬に今は興味がない人たちにいかに興味を持ってもらうかというウェブ上の施策やイベントをやっています。実況は競馬の世界観をつくるのに必ず必要なファクターなので、小塚さんとは一昨年「進撃の巨人」とコラボレーションしたとんでもない競馬レースコンテンツを一緒につくりましたね。

2013年秋に実施した「進撃のジャパンカップ」は大きな話題を呼んだ。

小塚:そうです!「進撃のジャパンカップ」が最初でしたね。ジャパンカップと有馬記念と、立て続けに担当させていただき楽しかったですね。

森田:実際の競馬とはまた違う、実況体験ですよね。

小塚:私は実況のキャリアとしてはまだ10年弱ぐらいなので、リアルのジャパンカップ、有馬記念、もちろんダービーも実際のレースとしては担当したことがないんです。ウェブ上で先に担当してしまったというか、ああ、ビッグレースってこんな感じなのかという緊張感やわくわく感もありましたし、もちろん「進撃の巨人」という超有名コンテンツの世界観の一部に入れたのも楽しかったです。

森田:その後、去年の秋はウルトラマンと組んで、秋葉原でイベントをやるという「ウルトラ有馬記念」というのもやりましたね。

2014年冬に実施した街頭イベント「ウルトラ有馬記念」。

小塚:はい、ムービーの声を当てさせていただきました。

森田:映像にしたものを実況してもらうということで、小塚さんには本当にお世話になっています。

小塚:ふだんのレースの実況とは、やはりテンションとか声の張り方も違うけれど、ふだん出さない声を使うのが楽しいのです。アナウンサーとしても勉強になります。

 

2つのテクノロジー企画、「STREET DERBY 360°」と「AIR DERBY」

森田:ずっと僕たちと一緒に、若者に新しい競馬体験を提供しようとしてくださっている中で、今回はテクノロジーを使って競馬の疑似体験を深い形でやってもらおうと「STREET DERBY 360°」という企画を新宿で一緒にやりました。

森田:オキュラス体験、実際やるとめちゃくちゃ怖いですよ。新宿を舞台に、イベント会場を基点にしながら街中でレース体験をしてもらう。
最初にイベント会場の髙島屋の壁をわっと上って、髙島屋の屋上から飛び降りるとレースに入って最後は競馬場に行き着く。全く周りが見えていない中で屋上から落ちていくので、ジェットコースター以上に怖いんです。さらに乗馬マシンの「JOBA」に乗るので坂道や階段では傾斜するし、すごいスピードで走っているように感じるので、「JOBA」から転げ落ちそうな人もいて。視覚だけじゃなくてまさに体感になっています。

山本:一人一人見守ってついていないと、落馬しそうになってましたね。

森田:もう一つの企画は、「AIR DERBY」。壁の前に立ちながらでレースができる、Kinectを使っています。Kinectで顔の表情、手の動き、声を録りながら、エアギターならぬエア乗馬体験、競馬体験をしていくという企画です。このコンテンツの実況も小塚さんにやってもらっています。

AIR DERBY

山本:これは、ご年配から子どもまで参加層も広く、皆さん楽しんでやっていただきましたね。

森田:普通は競馬というのは見るだけになりますが、体感できると、勝った、負けたという勝負の興奮を体験できます。

山本:企画書上ではKinectもオキュラスもすごく面白そうに見えてしまうんですけれど、一般の方からはまだ、得体が知れないもの。なかなか積極的になってくれなかった。単にテクノロジーとかデジタルを使ってコンテンツをつくるのではなくて、それをどうやって人に使っていただき、ストーリーを伝えていくかというところまでちゃんと考えていかないといけない。

森田:体験の前と後のお客さんの表情の変わりようは印象的だったよね。

山本:リアルな体験なら、1回やってもらうだけで多分、競馬に興味は持ってくれる。コミュニケーションとしてすごく深いのが現場で見ていてわかりました。みんな、笑顔になる。僕らが普通に扱っている、広告とかキャンペーンとは全然違うコミュニケーションだなと思います。

森田:でも、初めの一歩を踏み出してもらうのが大変という。

山本:運営スタッフの人たちの立ち回りを考え抜く、ゲームしている風景をいかに楽しそうにするか、いかに奥ゆかしい日本人に街中で体を動かして参加してもらうか。楽しい雰囲気づくりが大切だなと、イベントを通して感じました。

 

体験型の企画は、PR効果も高い

森田:PRイベントもかなり盛り上がってましたよね。

山本:柔道家の篠原信一さんと、タレントの柳沢慎吾さんに来ていただいて、「AIR DERBY」をお二人に体験していただくというイベントでは、司会兼実況として小塚さんに来ていただきました。

小塚:柳沢さんと篠原さんが「AIR DERBY」を体験された横で、僕がマイクを持って実況をしていました(笑)。もともとの映像でも声を当てているのは私だったんですけれど、その声をわざわざ一回オフにして現場でやっていました!

森田:すごく豪華なコラボでしたよね!

小塚:いやあ、楽しかったですね。

山本:PRイベントの絵づくりって、結構マンネリみたいなところがあって。Kinectとかオキュラスとか、こういう新しいテクノロジーを使っての絵づくりは、今が使い時だと思います。ものすごく長尺で放送していただいた番組もありました。

小塚:一応ゲストお二人の対決だったので、それをあおるような実況をしたつもりで、やっていらっしゃるお二人も乗ってきてくださったところもあり、マスコミもお客さんも盛り上がってくれたなと思います。ラジオNIKKEIの実況は、JRAさんに使ってもらっているオフィシャルの実況でもあり、特定の馬を過度に応援はできないのです。今回はあおってあおって、声を張り上げましたね(笑)。

森田:競馬で一番楽しいのはレースなんです。テクノロジーによって、本物に近い体験ができたということなのかなと、小塚さんの実況を聞きながら思いました。これからも、いろいろな企画に一緒にチャレンジさせてください!

<了>