loading...

電通報ビジネスにもっとアイデアを。

電通がオムニチャネルについて考える。No.4

オムニチャネルはこれからどうなる? Q1.生活者はどう変わるのか。

2015/12/01

本連載ではここまで、オムニチャネル実現のための課題について、電通ビジネス・クリエーション・センター(BCC)のメンバーが探ってきました。その続編として、今回は新たにオムニチャネルにまつわる5つのお題を立て、さまざまなレイヤーでオムニチャネルに携わる電通社員に「今後どうなっていくのか?」を一問一答形式でインタビューしました。5回に分けてお届けします。


以前の役割を超えてチャネルがつながっていく

丸山:今回は、電通の中でそれぞれ専門領域に軸足を置く4人をゲストに迎えて、オムニチャネルは今後どうなっていくのかを考えていきたいと思います。具体的には「1.生活者」「2.リテール」「3.メーカー」「4.メディア」「5.マーケティング」がそれぞれどう変化するのか?あるいは変化しないのか?を問いとしました。

まだ発展中の領域なので、我々も模索しながらといったところですが、各人の見方からもオムニチャネルをさらに深掘りするヒントをもらえたらと思っています。ではまず、自己紹介からお願いします。

神野(かんの):プロモーション・デザイン局の神野です。この局は業種の垣根を設けずにクライアントのマーケティング支援をしていくセクションです。その中でも私が部長を務めるチャネル・ソリューション部では、メーカークライアントとリテールクライアントとのシナジーを創出し、さらに電通の強みであるメディアパートナーとの連携も探ることを目指しています。

これまでは、Eコマースサイトの運営にしばらく関わっていたんですが、ビジネス環境がどんどん変化する中で、Eコマースサイトも単なる売り場ではなくメディアとしての価値が高まっていると実感していました。既存の役割を超えたチャネルのつながりが、今後さらに進んでいくだろうという意識で、今の仕事に取り組んでいます。

堀北:同じくプロモーション・デザイン局の堀北です。現在はチャネル・ソリューション部、ということで、神野さんの下にいます。入社以来プロモーションを中心に携わってきており、その経験を生かしてめくるめくオムニチャネルの世界を模索しています。

以前はプロモーションの仕事として生活者とメーカーをつなげたり、生活者とリテールとの間で何かを起こしていったりといった、生活者を中心とした仕事をしていました。今の部署に加わってからは、メーカーとリテールをつなげるという、これまでなかったジャンルに着手しています。

松永:統合データ・ソリューションセンターの松永です。部署名の通り、データを活用したソリューションを開発し、提供しています。

これまでは、電通の強みであるマスメディアを通して得られるデータと、デジタルで得られるオーディエンスデータを掛け合わせて、広告のプランニングやマーケティングにいかしてきました。そこへ、最終的な購買へとつながる世界が開けてきた。これが、データの視点から考えるオムニチャネルだと思っています。テレビから購買までの間で、どういう切り口の分析ができて、それによって商品が生活者にどう買われていくかを提示するのが我々の仕事だと捉えています。

上原:BCCの上原です。僕は司会の丸山さん、渡邉さんと共に、前回の連載も担当させてもらいました。BCCは新しいビジネスモデルを模索する部署でして、その中で企業のオムニチャネル推進に関わっています。僕自身は、メーカーのプロモーション経験もありますが、リテール支援に10年ほど携わっていて、例えば昨年はリテール企業の生活者向けアプリの企画と運用などをしていました。

その視点からオムニチャネルの概念を考えると、いよいよ究極の世界になってきたなと感じています。メディア、テクノロジー、ストラテジーの全てをメーカーやリテールが吸収して、内部に持つようになると、では広告会社や外部のマーケターはこれまでとは違う機能を発揮しないといけないなと。

Q1.オムニチャネル時代、生活者はどう変化するか? しないか?

丸山:オムニチャネルが実現しつつある現状を俯瞰すると、それぞれの業界で生活者がいてメーカーとリテールがいて、それを媒介する広い意味でのメディアがある。リテール自身もメディアといえますよね。そこにさらに、テクノロジーが加わってデータを取得できるようになっているので、それらを全部つなげて考えるのは電通としても当然のことだと捉えています。

では、問いに入りたいと思います。今回は、皆さんの回答をフリップに書いてもらう形にしました。最初の問いは、「オムニチャネル時代、生活者はどう変化するか? あるいは、変化しないか?」です。早速、得意の絵で表してくれた上原さんからいきましょうか。

A.1:「BUYボタン」

丸山:その絵は一体なんでしょうか…?

上原:BUYボタン、です。スマホやIoTの機器を通して、購買につながるボタンが増えて、生活者はそこから商品をぽんぽん買っていけるようになる。

例えばアメリカだと、必要なときに必要なものが提供される「On-Demand Economy」が発展しています。スマホから今いる場所にタクシーを呼べる、Uberなどもそうですよね。ボタンひとつですぐ手に入る、そういう状況がいろいろな商品やサービスで成り立つようになっています。

そうなると、僕も含め、生活者はいちいち悩まずに購買するようになると思うんですよね。O2Oももっと進化すると思います。

丸山:この先、IoTがさらに発展すると、この傾向はもっと強まりそうですね。

上原:そうですね。自分のすぐ隣や手のひらが店になるというか、スマホやIoT機器が“どこでもドア”のような感覚が広がるんじゃないでしょうか。


A.2:「賢い生活者が増える?」

松永:私は、賢い生活者が増えるのではないか?と思っています。適切なレコメンドが増えると、たとえば自分がためているポイントがもらえるところでのみ買おうとか、買う側もその中で意思決定の精度が上がるのではないでしょうか。

でも、今の上原君の意見を聞いて、ぽんぽんと反射的に買い物するようになるというのもよく分かるなと。なので、二極化していくのかもしれないですね。


A.3:「これまで通り」

堀北:僕は、これまで通り、と書きました。確かに、リアルとネットの距離感がさらになくなり、新しいツールも出てくる一方で、全員が使いこなせるわけではないだろうから二極化…というのはよく分かります。

ただ、そういう環境変化で生活者“自身”が変わるかというと、そういうわけではないのかなと。たとえばAさんが新しいツールを使っても、Aさん自身が変わるわけではない。今まで通り、Aさんが自分にとっていちばんいいものを買いたいという希望は変わらないので、それにメーカーやリテール側も最大限に応えていく、そういう構造自体は今までと同じだろうと捉えています。


A.4:「"選ぶ"時代」

神野:選ぶ時代、としました。ちょっと抽象的過ぎましたかね(笑)。

渡邉:選択肢が増えて、選ぶ力がより求められている……といったことですか?

神野:そうですね、選択肢が増える。それって、いい面と困る面がありますよね。

オムニチャネル化によって、顧客志向のさまざまなテクノロジーが駆使されてチャネルがつながり、どこでもものを選んで買えるようになる分、今まではなかったような選択権まで生活者に委ねられる。ラクにもなるでしょうが、つらくもなりそうですね。そのつらさを楽しみに変えられるようなマーケティングができればと思います。

丸山:皆さん、視点は異なりますが、趣旨はそんなに変わらないという印象です。

神野:見据えている未来像は似ていて、少し安心感がありました。オムニチャネルとは単にネットとリアルの連携、メーカーとリテールの連携にとどまらず、メディアを含めたもっとさまざまな接点を束ねていくことだと思っています。メディアコミュニケーションの部分は電通に強みがあるので、そういった切り口からまだまだできることがあると感じます。


Q.2「オムニチャネル時代、リテールはどう変化する?」へつづく