「挨拶」を面白く
2015/11/11
「ArounD30」では、電通の若手アートディレクターによる「○○をもっと面白くするアイデア」と、その源泉となる日常のインプット、最近作者のアンテナに掛かったことなどを紹介します。
写真をひっくり返すことで別の意味や情景になるもの
──なぜ「挨拶」を面白くしたんですか?
松永:アートディレクターだからこそできる二次元的な表現をしたいと思いました。少し手を加えることで面白く見えるもの、例えば写真をひっくり返すことで、別の意味や情景になるものにしようと思いました。電通報の読者はビジネスマンが多いので、ビジネスマンが写っていて、それが面白く見えるもの、というふうに考えていって「挨拶」をテーマに撮影しました。
──水面に人物が映っているわけですが、どのように撮影したんですか?
松永:ロケ地選びが大変でした。水面が揺れていると、うまく映らないので、水面が止まっている場所を探したのですが、なかなかなくて。例えばカモが泳いでいたり、噴水があったり、撮影当日に池に泡が浮いているというトラブルがあったり…。撮影は、池の中に浮島があったので、そこから撮っています。浮島までは、1メートル間隔くらいで石があったのでジャンプして移動しました(笑)。
移動中のスマホは無意味な気がしてきた
──今気になっているモノ・コトを教えてください。
松永:写真が好きなんですけど、先日ヴォルフガング・ティルマンスの写真展を大阪まで見に行きました。日本では11年ぶりの展示で、すごく良かったです! こんな切り取り方どうやって思いつくんだろうと考えながら見ました。今回のArounD30を撮影してくれたフォトグラファーの中島ゆう子さんと一緒に行ったのですが、写真家目線とアートディレクター目線だと感じ方が違ってとても面白かったです。写真の他には、時間を見つけて映画を見たり、本を読んだりしています。
──それはどんな作品ですか?
松永:名作と呼ばれる過去の素晴らしい創作物を自分はあまり知らないのではないか、という危機感があり、映画は名作を見ようと思って、最近はヒッチコックを見ています。あとは「映画の天才」という面白い映画を紹介するプロジェクトに呼んでいただいたり。読書については、移動中にスマホを見ていることが多かったんですけど、インスタントで浅い知識がすごく無意味な気がしてきて、本を読むようになりました。
──(かばんから出てきた本を見て)すごい!付箋だらけですね。
松永:これ、電通・古川裕也さんの『すべての仕事はクリエイティブディレクションである。』なんです。読んでいて、「あっ、そうなんだ」と思うことが多くて。新しい知識を得るのは面白いです。最近は『ルシファー•エフェクト』という有名な社会実験の本を読んでいます。本を読むとまだまだ知らないことがいっぱいあると思い知らされます。自分の中にない感覚や知識をどんどん取り入れていきたいと思っています。