戦略的な企業キャラクター活用のすすめ
2013/11/13
このほど発足した「電通キャラクター・コンサルティング」では、企業キャラクターに関して長年蓄積してきたコミュニケーションのメソッドを活用し、ソリューション提供を行っていくことを標榜しています。
いま企業キャラクターへの需要が高まっているという背景と、それに応える同組織の強み、そしていくつかの企業キャラクターコミュニケーションの事例から、かわいらしい造形の裏側に存在するストラテジーについてマーケティング・デザイン・センターの山本達也に聞きました。
──これまで企業キャラクターの開発やリブランディングに携わってきて、今回この組織を立ち上げるに至った背景を教えてください。
何よりも、クライアントのニーズが最近本当に高まっています。「企業キャラクターをもっと効果的に使いたいけれども、その効果をかわいい、楽しいなどの感覚的な評価ではなく、費用対効果も含めてロジカルに捉えるにはどういう基礎データをもってすればいいのか?」というような相談を受けることが増えました。
あとはメソッドですね。どのように体系化し、コミュニケーションを行えばよいのか。キャラクターが増え続けている時代背景の中でキャラクター同士の差別化を行う上でも、企業キャラクターを一つのコミュニケーション戦略として捉えることがますます重要視されてきていると感じます。もちろん、企業キャラクターは従来から企業コミュニケーションの手段として盛んに使われてはきましたが、個々人の暗黙知によって運用されることが多く、組織として体系化がなされてこなかったという実情もあります。
──キャラクターコミュニケーションを行うに当たって重要なことは何だと考えますか?
独自に開発した企業キャラクターの強みは、マスから売りの現場まで、クライアントが望む自由なコミュニケーションを行うことができる点です。企業や商品・サービスの一貫したシンボルとすることができることから、メディアが複雑多様化する今の時代に非常に合っているのではないかと思います。
ただ一方で、タレントやアニメキャラなどの既存コンテンツキャラクターには元から生活者の愛着や信頼があるのに対して、独自に作り出した企業キャラクターはデビュー段階では白紙です。その力を一から作るためには、課題設定からデザイン開発、育成やメディアプランニングという部分まで含めて、中長期的に、戦略的に企業コミュニケーションの手法を考えていく必要がある。実際、大ヒットしている「ゆるキャラ」の裏を見てみると、すべてが本当にゆるいわけではない。ずるいくらいに戦略的に考えられていたりするんですよ。
単にかわいいとか、広告やパッケージの賑やかしに、というのもキャラクターの存在価値だとは思いますが、企業がキャラクターによってコミュニケーションをしようとする場合には戦略性がすべてです。
そういう観点から、今回立ち上げた「電通キャラクター・コンサルティング」では、キャラクターコミュニケーションに関する専門性を身に付けたストラテジープランナー、ブランドコンサルタント、クリエーター、さらにはライセンスの専門家までが関わり、ワンストップのソリューションを提供できるというのも大きな強みです。
──企業キャラクターを「育成する」プロセスでは、どんなことに気を付けて行うべきなのでしょうか?
まず、デザイン開発されたキャラクターはその時点ではマークに過ぎません。よくトイレのピクトグラムの話をするのですが、たとえばあのマークは誰もが認知はできますが、まあ普通は感情移入はできませんよね。一般的には、マークは結局目印でしかなく、露出がなくなったところでその機能は失われてしまう。
生活者との中長期的なリレーションシップ、絆みたいなものを形成するためには、そのキャラクターに対して共感できる、愛着を持てるように、人格化する必要があります。
そこで、キャラクターに「世界観」という付加価値を付けることが求められてくるわけです。デザインに人としての温もりを付け、人格を持った“彼”“彼女”の周りにコミュニティを形成していく。世界観やストーリー性は膨らんでいくものなので、そうなればより生活者がのめり込んでいく、すなわち、生活者をファン化していくことにつながる。これは非常に重要な要素になります。
また、企業キャラクターは、そのキャラクターが宣伝する商品や企業の見え方にどうしてもリンクしてくるので、そのクオリティコントロールにも気を付けたい。ルールを構築し管理・運用していく。それが徹底できないと、結局キャラクターのアイデンティティが確立できないんですね。とくに日本人はキャラクターに対する受容性が高い一方、目も肥えているので、ちょっと手を抜いたキャラクターに対する感度も鋭い。よほどしっかりとコントロールをしないと、生活者の共感も醸成できません。
──近頃はSNS上でのキャラクターが注目されていますが、露出戦略はどのように練っていくのでしょうか?
先ほどメディアプランにも戦略が必要ということを話しましたが、「露出」という点ではやはりテレビ出稿が即効性もあり、一番効果的ではあります。CMによって認知度や企業とキャラクターのリンク感は格段に高まります。でも、だからテレビだけをどんどん活用すればいいというのではなく、どのくらい露出をすると、どのくらいの認知度になるかということをクライアントと共有する。その上でマスを中心としたペイドメディアだけでなく、SNSなどクライアントが持つオウンドメディアの特性と活用法も一緒に検証して、露出戦略を練っていくようにします。
──実際、山本さんが手掛けた共通ポイントサービス「Ponta」のキャラクターは、オウンドメディアの活用によって着実に認知度や好意度を伸ばし、企業のソリューションにつながった例だと思いますが、この具体的な話は次回にお聞きしたいと思います。