企業キャラクター=ソリューションである
2013/11/27
──キャラクターの開発からクリエーティブディレクションまで手掛けた、共通ポイントサービスPontaのキャラクター「ポンタ」はどのように生まれたのですか?
「Point terminal」というサービスコンセプトとポイントがポンポンたまるイメージから、まずは「Ponta」というポイントサービスの名称を提案させて頂きました。また、いろんな提携社さんのお店で使われるということは、必然的に生活者とのコンタクトポイントが多くなってくる。そこで、そのコンタクトポイントを統合的に見せていくためには、企業キャラクターの活用がふさわしいのではないかと考え、「ポンタ」というキャラクターも提案させて頂いたんです。
キャラクターは、「Ponta」というサービス名称を聞いて誰もが直感的にイメージしやすく、覚えてもらいやすいタヌキを、あえてストレートにモチーフにしたいと考えました。企業キャラクターは商品サービスとリンクしなければその機能は発揮できませんので。開発当時、タヌキをモチーフにしたキャラクターの決定版がまだ無かったという調査分析の結果もありました。その後、採用に至り、クライアントさんと共にキャラクターのブラッシュアップやコミュニケーション上の展開に関する議論を重ねていきました。
企業キャラクターは思いつきで、なんとなく作ってみるものではなく、確固とした理由があって作るものだと考えています。よく、企業キャラクターに関する相談を頂いたときにお話しするのが、「キャラクターを人気者にすることが一番の目的ではないですよね?」ということです。企業キャラクター=企業のソリューションであるという認識がないと、きっとその先どこかの瞬間に「あれ?何のためにキャラクターを作ったんだっけ?」ということがキャラクターの扱いにも、クオリティーにも表れてしまう。存在理由が明確でないキャラクターは必然的に短命化してしまいます。
──「ポンタ」のクリエーティブを見ると、提携社ごとに「ポンタ」が変身するという工夫がされているのですね。
そうなんです。変身という工夫にもタヌキはぴったりじゃありませんか? 提携社が多業種にわたるということから開発段階で出たアイデアが、「ポンタ」が各社のユニフォームを着たり、各社の象徴的なアイテムを持ったりする変身のコミュニケーションスキームです。これによって、「ポンタ」は全提携社の象徴であり共有財産でありながら、各社独自の財産にもなり得、提携社の現場の人たちにも自社のキャラクターのようにかわいがられ、愛してもらえるのではないかと考えました。
このケースはある意味、インナーコミュニケーションともいえるのですが、「電通キャラクター・コンサルティング」における企業キャラクターの育成メソッドでも、インナーのモチベーションアップには重点を置いています。企業全体でまずインナーの方々にキャラクターを好きになって頂くことで、結果、生活者のキャラクターへの愛情の醸成にもうまくつながってゆく。キャラクターの運用にあたって、自分たちのものだと思って頂いていれば、ブランド価値を損なうようなことにはならないと思うんです。内側の人たちにファンになってもらい、どんどん使う気になってもらうことは、クオリティーコントロール面や露出活用の促進にも一定の力を発揮すると考えます。
──「ポンタ」のデビューから3年半が経ちますが、どのようなコミュニケーション展開が行われているのでしょうか?
実は「ポンタ」は、テレビCMなどペイドメディアでの露出はほとんどないのですが、券面デザインをはじめ、クライアントさんが持つウェブメディアや情報冊子、ポイント交換用のキャラクターグッズ、提携社さんの店頭や店内メディアなど、関わる皆さんの愛着と努力があって、オウンドメディアやソーシャルメディアを通じて積極的に活用されてきました。その結果、客観的なデータとして、電通キャラクター・コンサルティングによる「企業キャラクター生活者インサイト調査」では、それこそ普段テレビCMでよく見る企業キャラクターと認知度は肩を並べる数値が出ていますし、キャラクター・データバンクさんの調査(以下出典『CharaBiz Power Book –コーポレートキャラクター編–』2013年4月刊)でも、業種・業態別キャラクター分析では「流通・小売業」で認知度、好意度共にトップに育っています。
Pontaカードの会員数も5800万人を超えて、サービスも着実に伸びているとクライアントさんからもお伺いしています。今後もクライアントさん、提携社さんと一体となった展開で、キャラクターがソリューションの一助となりつづければ嬉しいですね。