セカイメガネNo.39
心地よさを捨て、宇宙人になろう
2015/11/18
心地よいことがとても心地悪く、心地悪さの中に奇妙な心地よさがあることにごく最近気付いた。あれ、混乱させちゃいましたか? 説明しましょう。
少し前に僕はとても満足していた仕事を辞め、「新しい国」で広告会社を始めた。そんな経験は過去に一度もなかったから、「君らしくないね」と人は言うに違いなかった。でも、結局、実行しちゃったんですね。
香港から上海へ―新天地にやってはきたものの、僕は北京語はまるで話せない。そこは奇妙な世界で、僕はまるで宇宙人だ。その感覚は好きになれなかった。たちまち居心地悪くなった。この地で何も知らないことに気付くのに一秒とかからなかった。これまで学んできたことはまるで役に立たない。自分が頼りにしてきたクリエーティビティーの魔法袋は、今じゃガラクタ袋だ。
土壇場に追い詰められて僕はにっこりほほえんだ。
心地よい領域を飛び出すことは、今まで以上にクリエーティブになることだ。見ること聞くこと全てが新しい。何もかも違う。答えが分かっていたはずの問題にも新しい解答を求められる。この土地も、ここで暮らす人たちも僕は何も知らない。未知のモノ、ヒトが脳細胞を刺激し、僕にエネルギーを供給してくれている。創造するエネルギーを。
仕事を始めた当初、アイデアや物事の進め方についてスタッフに延々ダメ出ししていた。みんながどうして理解してくれないのか、僕にはちっとも分らなかった。やがて自問自答するようになった。理解し合えない原因は僕にあるのか、スタッフのせいか。その原因が僕にあったと今では分かる。彼らのクリエーティビティーの在り方を僕は理解しなかった。慣れ親しんできたものと違うから納得できなかった。でも、探求する方法が違うだけじゃないのか? 今では彼らのクリエーティビティーを無理に矯正しない。自分のクリエーティビティーを軌道修正してみる。
毎日居心地のいいわが家でくつろぎ、気分良くオフィスで仕事し、理解し合える仲間とだけ過ごしていると、自分に本当に必要な大切なものを失う。そう思うようになった。居心地が悪くなるのがこんなにいいことだと思えるなんていったい誰が想像しただろう。それは自分の精神を障害物競走で試すことだ。傷だらけになろうとアザができようと、障害を突破して出口を見つけることで鍛えられ進歩できる。
居心地よさを捨てた宇宙人の仲間たちよ、永遠なれ!
(監修:電通 グローバル・ビジネス・センター)